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掌編小説「鴉」(阿波しらさぎ文学賞落選)
鴉
ぼくが徳島の高校に通っていた十六の冬のことは、今でもはっきりと覚えている。
寒さも深まってきた十二月のある日、ぼくはいつものように遅刻ぎりぎりに校門をくぐりぬけ、何事もないような顔で教室に滑り込んだ。まだチャイムは鳴っていない。セーフ。ぼくの席は窓側の後ろから二番目にあった。ぼくはいつもそこから校庭の様子を眺めていた。よく白鷺しらさぎがコンクリートの支柱に止まってはまたどこかへ飛ん
鴉
ぼくが徳島の高校に通っていた十六の冬のことは、今でもはっきりと覚えている。
寒さも深まってきた十二月のある日、ぼくはいつものように遅刻ぎりぎりに校門をくぐりぬけ、何事もないような顔で教室に滑り込んだ。まだチャイムは鳴っていない。セーフ。ぼくの席は窓側の後ろから二番目にあった。ぼくはいつもそこから校庭の様子を眺めていた。よく白鷺しらさぎがコンクリートの支柱に止まってはまたどこかへ飛ん