タクミ

小説を書いてる奴

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最近の記事

逍遥

 街を歩いている私の目線の先には煙草を咥えたおじさんが居たので、私は絶対にその煙草の煙を吸うまいと硬く心に決めて、今来た道を引き返し、横断歩道を渡って反対側の歩道を歩いた。それを見ていた人が居れば、私のことを変なやつだと思うだろうが、煙草の煙を吸うくらいなら多少の回り道をしたり変なやつだと思われたほうがましだと、最近の私は思うようになっていた。  そんなふうに思うようになったのは一体いつからだろう。私の記憶が正しければ、昔はそんなことはなかったし、友人はよく私の隣で煙草を吹か

    • 短編小説:護謨の木(後編)

      3  次の日、つまり三月二十四日、日曜日の午後、僕はオッデセイに乗って地元に向かった。地元へ行くのは久しぶりだった。都内の1LDKに引っ越してきてからまだ一度も帰っていないのだ。運転している間、家にあった『スピカ』が収録されているスピッツのCDシングルをリピートでかけた。地元が近づくともうその辺りは走り慣れた道だった。前の会社に勤めている間は実家で暮らしていたので、休みの日にはよくこの辺りをドライブした。ドライブと言っても近所に買い物に行ったり、一人になりたくてただあても

      • 短編小説:護謨の木(前半)

        護謨の木  1   二〇一六年の十二月に過労で体調を崩し、四年半勤めていた会社を辞めた後、翌年の夏に漢字検定準一級、日本語検定二級、ⅯOS、そして趣味で書いている小説の文章力が買われ、都内の出版系の会社に就職することができた。失業中に、それまでやってこなかったことをたくさん勉強した。小説も暇さえあれば書いて手あたり次第に応募した(どれも賞は取れなかったけれど)。勉強するのは楽しかったし、文章を書いているとリラックスできた。それまでやっていた工場の肉体労働(精神

        • 掌編小説『今は撃たないで』

           今は撃たないで  三十も目前になって僕が未だ内省的で自分に自信の持てない人間であるというのには――あるいはそういう人間に仕上がった、と言うべきか――いくつか理由が考えられるわけだが、そのひとつはやはり「信用されているという感覚」の乏しさだと思う。「信用されているという感覚」を持ち出すとき、僕の場合それは他人に対してよりも家族に対するものの方が大きかった。例えば母親は僕のことをどこか根本の部分では信用していない、あるいは頼りにしていないのだろうということが、彼女の言動

          掌編小説「オデッセイ」(未発表)

          オデッセイ  春の日差しを受けた白い外壁は不自然なほど一層白く輝き、そこに桜の花びらがまるで映画のワンシーンのように風に吹かれて舞っている。古びた丸い窓はしばらく開けられた気配もなく、美術館に飾られた誰も立ち止まりはしない展示物のようにただそこにあった。かつて蛍光灯の灯りを放っていたはずの看板の文字は消え、今では薄汚れてひび割れた、ただのプラスチックの箱になり果てていた。そしてその辺り一帯は、なんだか薄いベールのようなもので隔てられているような印象があった。まるで画面

          掌編小説「オデッセイ」(未発表)

          掌編小説「鴉」(阿波しらさぎ文学賞落選)

          鴉  ぼくが徳島の高校に通っていた十六の冬のことは、今でもはっきりと覚えている。  寒さも深まってきた十二月のある日、ぼくはいつものように遅刻ぎりぎりに校門をくぐりぬけ、何事もないような顔で教室に滑り込んだ。まだチャイムは鳴っていない。セーフ。ぼくの席は窓側の後ろから二番目にあった。ぼくはいつもそこから校庭の様子を眺めていた。よく白鷺しらさぎがコンクリートの支柱に止まってはまたどこかへ飛んで行くのが見えた(西陽を受けて羽ばたくその姿は特に優雅で美しかった)。おそらく近

          掌編小説「鴉」(阿波しらさぎ文学賞落選)

          モッコウバラ

          これってモッコウバラですよね? 人ん家に咲いてるのをパシャ。 なるべく一瞬でパシャ。 モッコウバラの花言葉、素敵ですよね。 たしか、「幼い頃の幸せな記憶」。 きょう、外を歩いていたら、小学生たちの遊ぶ姿と声が街にあって、その頃のことを思い出しました。いい時代だったと思う。小学生って、僕は個人的には幸せな時代だと思いますね。 そういえば、この前、切手を貼らずに封筒をポストに入れました。そういうところが本当に抜けている。そのうち送り返されて来るだろう。 それにしても

          モッコウバラ

          MOS

          MOS試験(Word2019)、満点合格。嬉しい。ホントに。 柏レイソル、引き分け。割と嬉しい。

          ちよだ文学賞

          2部印刷して、右肩をクリップで留めて、レターパックに入れて、宛名のインクが滲んで、ポストに投函して、さあ、これでもう推敲する必要が無くなったのだと思うと、それは嬉しくもあり、少々悲しくもあるのです。でもまあ、締切に間に合わないよりはよっぽどいい。それに今日はよく晴れている。投函日和だ。

          ちよだ文学賞

          どうも。

          好きな人は、村上春樹、江沼郁弥、平手友梨奈、ミスチル、スピッツ、セカオワ、ジャルジャル、柏レイソル。 大学に入ってからはずっと、小説を書いたり音楽をやったりしてきたんですが、最近では体調を崩して仕事を辞めて、ずっと小説を書いています(他にも資格を取ったり)。こういうのって、自然発生的なことで、書こうと思って書くものじゃないんですよね。多分まとまった時間ができたから集中してかけるってことなんだろうと思うのです。  小説って、一つの作品を書き続けようと思えばいくらでも書き続け

          どうも。