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許せる暮らし

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記事一覧

「整えるセンス」と「散らかすセンス」

「整えるセンス」と「散らかすセンス」

住宅は、建築というハードと住まい方というソフトにより成り立っているものだと思う。設計をする立場でありながら、言うのも何であるが、住宅は、建築のハードよりも住まい方のソフトに依存する部分が多いように感じている。建築という基盤と、それを住みこなすセンス(あまり好きな言葉ではないが)が掛け合わされて、住宅の本領が発揮されるように思う。

その、住みこなしのセンスには「整えるセンス」と「散らかすセンス」の

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日曜大工ではなく〝日常大工〟

日曜大工ではなく〝日常大工〟

私に設計を依頼するお施主さんたちはDIYをする人が多い。加えるならば、元々の趣味などであったわけではなく、住み始めてからDIYが始める人が多い。

恐らく、家の構成的に手を加える余地があり、手を加えたくなる衝動のようなものに駆られるのだと思う。DIYは日曜大工と呼ばれている通り、休日などに「よしっ!」と気合いを入れて挑むイメージがあるが、皆そうではないように感じる(もちろん気合いを入れて大物をDI

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遊びから得る学び|原っぱ的な住宅

遊びから得る学び|原っぱ的な住宅

教育論や育児についての話がメインになりますが、私は、その専門家でもないですし、育児は不得手だという自覚があります(不得手だからといって向き合わないわけではないですし、息子たちへの愛情はもちろんあります)。全ての教育者や親御さんへのリスペクトの意味を込めて、前置きをさせていただきます。

妻は幼児教育者なのですが、幼少期の〝遊びから得る学び〟が大切なのだとよく口にします。その論の一つとして「無駄な遊

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「カーテンが似合う家」と「ロールスクリーンが似合う家」

「カーテンが似合う家」と「ロールスクリーンが似合う家」

「カーテンが似合う家」と「ロールスクリーンが似合う家」があると感じている。基本的には「カーテンが似合う家」を設計したいと思っている。

話をもう少し掘り下げる。カーテンやロールスクリーンは日射や視線を調整するために住宅に必要なもの、つまりは住宅にとっての〝必然〟ともいえる。カーテンは隠すことが難しい。カーテンボックス等を設けても隠れるのはレールのみであり、カーテン自体は開けていても、閉めていても見

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モノのランニングコストが安い家

モノのランニングコストが安い家

自邸である加藤小屋のダイニングチェアがへたってきたので買い替えることに。

私、妻、長男、次男の4脚を大人買い。締めて約24000円。1脚6000円程度なので比較的安価な商品を選定しました。ちなみに私と妻の椅子はドラム椅子です(先代もドラム椅子で色々と気に入っていたので類似商品を再購入)

加藤小屋のような、ある種のゴチャゴチャ感がある〝ダサかっこいいの集合体〟のような構成だと、不思議と何を置いて

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〝許せる暮らし〟へ改称します

〝許せる暮らし〟へ改称します

まずは、結論から。

〝荒い暮らし〟から〝許せる暮らし〟に改称します。

提唱してきた〝荒い暮らし〟という考えが多少ですが、認知されるようになってきました。その結果、建築業界内外から「〝荒い暮らし〟という名称だと誤解が生まれるのでは?」「〝荒い暮らし〟という名称だと本質的ではないのでは?」という声を頂くことが多くなりました。

その違和感のようなものは、私自身も感じていて、それを第三者も感じるもの

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スーツ姿で子どもと公園で遊ぶ

スーツ姿で子どもと公園で遊ぶ

タイトルを見て「何の話?」と思うかもしれませんが住宅の話です。もっというと〝住宅の前提を間違えてませんか?〟という話です。

公園で子どもと遊ぶとき、どんな服装で遊びますか?滑り台を滑ったり、砂遊びをしたり、サッカーをしたり、ということが予測されますから、デニムだったりカジュアルな服装を選ぶと思います。それは公園で遊ぶということからすると必然的な選択です。もし、スーツを選んだとしたら、汚れや傷がつ

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下描きの絵画を渡す設計

下描きの絵画を渡す設計

住宅の竣工は終わりではなく、始まりだと考えています。住宅は生活することが目的ですから、竣工は通過点に過ぎないという考えです。ですので、竣工後の変化を前提とした設計を心がけています。竣工が100%で劣化の一途をたどる住宅は本質的ではない気がします。竣工が60~80%(場合によってはもっと低い)で生活していく中での必然や変化に対応させていきながら、永い年月を掛けて完成に向かうことが望ましいと考えていま

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マスコットを許容できない家

マスコットを許容できない家

先日、叔母が沖縄土産にマスコットのぬいぐるみを買ってきてくれました(沖縄で有名なハンバーガーショップ「A&W」のマスコット)。

我が家には何事もなかったかのように馴染んでいます。もともとの空間に木目や色味等が多いですし、生活感に満ち溢れ雑多な状態になっていることが要因かと思います。

(我が家の風景)

ただ、このマスコット1つが置かれただけで空間としても成り立たなくなってしまう住宅が世の中には

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〝フェイク〟じゃない〝リアル〟な空間

〝フェイク〟じゃない〝リアル〟な空間

HOUSE-NNの竣工写真撮影を行いました。

私は、独立当初から『住宅は人が生活を営むことを前提にした建築であり、必然的にできる生活感や傷や汚れ等の痕跡がポジティブに働く空間であるべき』という持論を展開してきました。HOUSE-NNは、その思想を体現して下さっていて、大変感激しました。

竣工写真は〝フェイク〟であってはいけないと思うのです。竣工写真のためにモノを動かし、隠し、生活感を消し去る。

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住宅に残る〝跡〟について考える

住宅に残る〝跡〟について考える

小屋に住み始めて1年超が過ぎました。先日、新築時に購入したラグマットの汚れが酷かったため、思い切って処分してみました。すると、ラグマットが敷いてあった場所となかった場所で傷や日焼けにより境界線ができていました。〝跡〟が残っていたのです。

その他にも、玄関框についた靴のゴムが擦れた跡、建具の歪み補正のためにストライクに埋木をした跡、壁に息子たちの身長を刻んだ跡等、色々な跡が小屋には残っています

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住宅における想定の矛盾 | 落書きも想定内

住宅における想定の矛盾 | 落書きも想定内

先日、HOUSE-NNのクライアントをHOUSE-Nにご案内しました。

竣工が100%で劣化の一途を辿るような住宅はあまり造りたくなく、竣工時は80%で長い年月を掛け、変化をしながら100%に到達するような住宅が理想的だと思っています。

約1年ぶりに訪れたHOUSE-Nは、色々と手を加えられながら、上手に住みこなされ、私のその考えを体現してくれていました。

多くの落書きもあったのですが、汚い

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〝正解をつくらない〟という正解

〝正解をつくらない〟という正解

ある日、気が付くと指輪が歪んでいました。元に戻したくなります。歪んでいる事実がストレスにもなります。それは「指輪は正円」という正解をつくってしまった為です。「指輪は歪んだ円」という正解にしておけば、どのように歪んでも正解です。これはこれか。と思えるかもしれません。

美容院に行った時の話です。担当の美容師さんが「セットはタオルドライしてワックスつけて適当にクシャクシャとやればいいから」と言ってくれ

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デニム感覚の家

デニム感覚の家

デニムは〝器の大きい〟素材だと思うのです。

汚れても気にならない。傷がついても味になる。色が落ちれも名前がつく。ペンキが付いてもアクセントになる。破れても商品になる。

そんな感覚を住宅にも持ち込むべきだと考えています。

「公園で子供と遊ぶ時にスーツを着る」ような住宅が世の中には多いと感じます。子供と公園で遊ぶということは、汚れること等が前提条件です。だからスーツでは遊ばない。最適な服装じゃな

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