記事一覧
夢想の海(エッセイ)
最近、定期的に東京に行きます。バスタ新宿についた高速バスを降りれば、ビル。日が沈みかけた街に、目が痛くなるくらいの光が灯ります。そんな景色を見た時当たり前なのですが、ああ都会だなあ、とぼんやりと思います。辺りにはお店や娯楽が溢れていて、どこかで休もうと思ってもその選択肢の多さに目を回し、結果的に関西でも楽しめるドトールの珈琲で一息をつきます。そういえば逆に、ああ田舎だなあ、という思いがわきおこる
もっとみる未来2017年12月
ボールペンのインクに浅く窪みたる紙を見ており定時の後に
電車内に微睡む人の歯が見えて長く、長く疲弊している
一つ一つ明るい駅に停まりたる環状線に動く電車は
私の為にすり減るブレーキが擦り切れるまで山を降りぬ
水に触れて柔らかくなる指先の一つ一つが秋の静けさ
どこかしら気づついており指先にうすく匂っている草原よ
色を持つ言葉が欲しい内蔵の暗さをもって私は叫ぶ
草原の水の匂いに濡れているリュックサック
未来2017年11月
傾いたサンドイッチの内側にたわんでおりぬひとひらのハム
私だけに聞こえただろうプルトップに触れた前歯が音をたてたり
『やさしいJava』第6版に挟まれた補充注文カードの黄色
少しだけ右クリックの反応がかたきマウスをあてがわれたり
パソコンの電源ボタンを見ておりぬそれはかそけき光を灯す
メキシカンチップの薄き数枚を摘んでおりぬ残暑の夕に
傘用のビーニール袋を捨て忘れただ掌を濡らしてしまう
飴玉を舌で
未来2017年10月
小走りに牛丼を運ぶ店員に汗匂いたりすれ違うとき
ボールペンを入れっぱなしのジーンズの内側にある黒い模様は
珈琲のグラスを覆う水滴を指で何度も削ぎ落としたり
親指の爪がやたらと伸びている履歴書を書く時に見ており
三つ折りの履歴書が持つ厚さほどの紙おしぼりに指を拭いぬ
指先は燃えやすい色わたくしはライターの火を恐れ続ける
タルトの上に犇いているラズベリーの一つが溢れたあとの窪みは
雑居ビル二階の廊下の
同志社短歌四号の感想
僕も前号評に参加させていただきました。
人も増えて、短歌、散文ともに充実しており楽しく読みました。
夢ばかり見ている君をジャンプ台みたいに蹴って次へ飛び込む
石勇斎朱吉/ジーンズと桜
現実や私を見ない君を踏みつけて、気持ちは先に進む。飛び込むと目標を定めてある一点めがけて飛んだのでしょう。新しい恋でも、打ち込めることでもなんでもいい。あてもなく飛ぶのではないところに力強さがあって、気持ちよかっ