未来2017年7月

ヨーグルトを掬いあげおり明け方のフォークの腹のうすい窪みは
私の目の表面に一匹の羽虫がとまるときの温度は
赤色の三角コーンの先端の一つ一つに触って歩く
あちこちに乳白色の傷があるクリアファイルを重ね持ちおり
川縁を飛ぶ羽虫らは順々に日向の方へ消えてゆきたり
唇の奥にすべての暗がりが濡れていること夕暮れにいて
ネクタイを引きちぎるように解く夜の肥大している玉ねぎの芯
レトルトのカレーのパックを入れてある電子ケトルが音たてている
iPhoneのホームボタンに薄く薄く溜まる私の指紋の層は
東京の海を見たことがないままに春の小雨に濡らされている

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