未来2017年10月

小走りに牛丼を運ぶ店員に汗匂いたりすれ違うとき
ボールペンを入れっぱなしのジーンズの内側にある黒い模様は
珈琲のグラスを覆う水滴を指で何度も削ぎ落としたり
親指の爪がやたらと伸びている履歴書を書く時に見ており
三つ折りの履歴書が持つ厚さほどの紙おしぼりに指を拭いぬ
指先は燃えやすい色わたくしはライターの火を恐れ続ける
タルトの上に犇いているラズベリーの一つが溢れたあとの窪みは
雑居ビル二階の廊下の冷房がきかざるなかを歩いて帰る
地下街の一角に吊るされている風鈴が鳴る夕暮れ時に
キーホルダーの海の生き物並びたり黒いビーズの目を二つつけ

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