未来2017年8月

野の花の細長き茎の湾曲を通りすぎたり四月の風は
この皮膚は水を含んでいる皮膚と握手を交わすたびに思えり
五月半ばに我はマスクをつけていて好きな形に歪める唇
特急に運ばれてゆく私は乾きはじめる眼球を持つ
この人は何かに負けて幾枚も小さなマークシートをこぼす
はつなつの土の乾いた畑にいる鴉は何かを啄ばみ続け
マグカップの底にとどまる珈琲のシミを何度も拭う夜更けは
しんどいと口に出す時こめかみの奥の辺りに熱を持ちおり
親指の腹までうすく濡れている卵の殻をうまく割れずに
フライパンの端のあたりで痩せてゆくよつ葉バターの長方形は

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