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エナジータンクマガジン☺️💓

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こちらでは、私のことや私のnote・写真をご自身のnoteでお使いになってくださった方々、紹介してくださった方々のnoteを集めさせていただいています😊ご紹介頂き、またお使いくだ… もっと読む
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#小説

何でもない日。みんなの12月某日②

 あの人は、「奥さんからお小遣いを3万円しかもらえないんだよ〜」と幸せそうに言う。よくよく聞けば、申告すればいくらでももらえるそうだ。  「ディズニーランドに家族で行って子供を長時間抱っこして歩いて筋肉痛になっちゃって」、とか笑顔で話す。そんな話は、需要がないから。  誰かが元気がなかったり、失敗して落ち込んでいたら、話を聞いてあげたり、励ましたり。人の気持ちに敏感なのだろう。皆に気づかいをする。心を配る。皆に優しい。     聖人?  過分な優しさや親切心は、家族に対

【04】アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス

「仕事、恋愛、友情、家族、IQ、人生で最も重要なものは何だろう」 『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス作(早川書房、2015) 人が生きていくうえで、 大事にしなければいけないもの・忘れちゃいけないことって本当にたくさんあります。 友達・恋人・家族・お金・仕事・趣味・会社・上司・先輩・後輩・取引先… 挙げ出したらキリがありません。 もちろん、自分にとって大事なものは人それぞれ。 人の数だけ大事なものがあって当たり前。 だけど、 「相手への想いやり」だけは絶対に

1ラウンドでノックアウト 第8話

 目の前に一瞬、真っ白な霧がかかった。チカチカする光に目が眩み、体重を後ろにある柱へ預ける。先週の土曜日、びしょ濡れになった俺は風邪を引いた。日曜日に熱は下がったが、それからずっと気だるい。  実際には風邪は治っていないんだろうか。いや、原因はわかっている。渉のことだ。自分から拒絶した癖に、時間があれば考えてしまうのは彼のことばかり。  とはいえ、渉と会う勇気も俺にはない。だから、いつもジムに練習へ行く金曜日の夜だというのに、こんなところにいる。  目の前を通り過ぎる人々はみ

【柳の下に夏はない】

 誰と仲良いのかわからない,実際誰とも仲良くない転校生「柳澤 沢夏(やなぎさわ さわな)」。8月1日,彼女からあるメッセージが送られてきた。クラス全員に。『親睦会』の招待が。  ちょっと奇特な男「神無月 水戸城(かんなづき みとじょう)」は招待先の柳澤宅へと訪問する。しかしその門前には,今は疎遠の幼馴染の女の子がいて……?  少し変わった,ちょっとは思春期な中学生たちが織りなす,青春群像劇のページが捲られる…… 1   その日,25人の未読数が同時に増えた。 『 親

雨と夢

いつ書いたのか思い出せません。 外が雨で、耳を澄ませながらうとうとしていた時かもなあ、と思います。 しかもその時仕事中で、こそっとノートに手書きで書き始めたような。(仕事は?) 詩なのか小説なのか。 短いですが、しとしと降る雨を想像しながら、ぜひ読んでみてください。  こんな夢を見た。    おぎゃあ。おぎゃあ。  赤んぼうだ。  どこで泣いているんだろう。どうして泣いているんだろう。  おぎゃあ。おぎゃあ。  あ。  あたしだ。  この泣き声は、あたし

【短編小説】 ラビオリ

18時過ぎに自宅の最寄り駅で待ちあわせた。何軒か店をめぐって、夕飯の材料を買い集めていく。今夜はラビオリを食べようって、昨日のうちから話しあっていた。けれど駅前の店をめぐっても材料を調達することができなかった。 はっきり言って、とても落胆していた。すでに自宅には、ラビオリにあわせたワインボトルが用意されている。海鮮系のラビオリにはさっぱりとした白ワイン。例えば、ミートやチーズ系のラビオリだったらフルボディの赤ワイン。キッチンテーブルで栓を抜かれるのを待っている。 ミートソ

【ショートショート】ふわふわ

 公園の一角にあるカフェのテラス席でサンドイッチを食べ、珈琲を飲んだ。息子はジュースだ。  広い芝生に組み立てられた舞台からはなにかの音楽が聞こえてくる。  平穏な日曜日の午後。  あたりには七色に輝くシャボン玉が舞っている。  私は鞄から公園に入るときに手渡されたキットを取り出した。息子はストローに息を吹き込んだ。シャボン玉があふれ出ていく。  直径三センチほどの球は空中に広がり、ほかの球とくっついた。弾けるかと思ったら、一回り大きくなる。割れないのだ。よく見ると、ほかの球

【詩】波紋

水面に映る 春の空は 君の投げた石で 八つ裂きにされた 広がる波紋に 揺れる花びら 涙のレンズに 歪む青空 静まった水面に 再び映る春の空は もう それまでの空ではなかった #詩 #詩人

小説『FLY ME TO THE MOON』第17話 約束

パイロンは考えていた、自分はどうするべきかを。 もう自分には家族も居ない、一人ぼっちだ。 ゴーゴンスタジアムを目指しても、誰も来なかったら? いやでも約束したし。。。。 ただ、いつとは言ってない・・・・ その間一人でスタジアムに? ゾンキーで溢れていたら? 『ううん・・・行く。』 『睦月とスティールちゃんには私が必要だ!って思いたくて申し訳ございません!』 バールを握り、リュックを背負い、ゴーゴンスタジアムを目指すために外へ出た。 振り返るとパイロンは自分

KILLING ME SOFTLY【小説】166_『 』に穴が空いた

夏輝が好きな音楽、行きつけの店、燻らせる煙草、甘ったるい香り。 あちこちに宿る魂に怯え、苦しめられては平気なふり、8年分の重みはそう簡単に消えない。それらを抱えた上で少しずつ前に進むことが生きていく、という選択だが、またも私は咄嗟に逃げたのではなかろうか。 頭を悩ませると、翌日の晩に夏輝は『凛々香へ』とのタイトルで私に宛てたメッセージを動画に託して、彼女は啓裕との〈本当の〉馴れ初めから赤裸々に語る。 「ぶっちゃけ彼氏盗ったのは、ナツの方。別れても繋がってるんだってくだらない

消えない足跡【140字小説】

雨上がりの公園で、ふと地面を見ると、消えたはずの足跡が目に入った。 彼女はそれを見て、過去のことを思い出した。 あの日の約束が、今も心に引っかかっている。 もし、もう一度、あの場所に戻れたなら……。 そう、どんなに願っただろう。 消えない足跡を見て、彼女はあの場所への思いを新たにしていた。

【一日一詩】 ぶらさがりおばさん

のびーるのびる 両手をいっぱいにのばそう のびーるのびたら あの木にぶら下がろう ぼくのびーる きみのびーる のびーるのびる 背中をいっぱいにのばそう のびーるのびたら あの雲にぶら下がろう パパのびーる ママのびーる のびーるのびる 足をいっぱいにのばそう のびーるのびたら あの星にぶら下がろう おばさんのびーる おじさんのびーる

香りから始まる恋

自分が惹かれる男性の共通点は何なのだろうと考える。 特別「こういう人がいい!」といった具体的な理想像があるというよりは、なんとなく、直感的に惹かれた人を好きになるということが多いように思う。 その直感的に感じる「何か」が一体何なのかは分からないが、一つの要素として挙げるのならば、それはその人の「香り」や「匂い」なのかもしれない。 いや、むしろその人の「匂い」に惹かれて始まる恋のほうが多い、といえば過言かもしれないが、それくらい私の中で相手の匂いというものは、その相手を直感的

【短編小説】ミルクを溶かして

苦しい、苦い、逃げ出したい。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 座っていた席を立って、目の前の机をなぎ倒して、叫んで教室を飛び出した…………っていうのは私の妄想。 けど、本当にそうしたいくらい限界が近づいていた。 あと5分。あと5分で終わる。 耐えろ。もう終わる。 時計とのにらめっこを続けた。 あと4分…………針が回る。 あと3分……………回る回る。 あと2分………………はやく回れ。 あと1分…………………針と針が重なっていく。 その時が来る。 3…………