KILLING ME SOFTLY【小説】166_『 』に穴が空いた
夏輝が好きな音楽、行きつけの店、燻らせる煙草、甘ったるい香り。
あちこちに宿る魂に怯え、苦しめられては平気なふり、8年分の重みはそう簡単に消えない。それらを抱えた上で少しずつ前に進むことが生きていく、という選択だが、またも私は咄嗟に逃げたのではなかろうか。
頭を悩ませると、翌日の晩に夏輝は『凛々香へ』とのタイトルで私に宛てたメッセージを動画に託して、彼女は啓裕との〈本当の〉馴れ初めから赤裸々に語る。
「ぶっちゃけ彼氏盗ったのは、ナツの方。別れても繋がってるんだってくだらない