ぶのし@ショートショート

文章を自在に操るキツネ。ファンタジーが大好物! 2022年12月からショートショートを…

ぶのし@ショートショート

文章を自在に操るキツネ。ファンタジーが大好物! 2022年12月からショートショートを書き始めました。目標は本の出版。そして、本を元にしたアニメや映画の制作! 夢はでっかくないとね! まずは本の出荷目指して頑張るぞー!

最近の記事

呑んで呑まれて

深夜の街は、かつてないほどに静寂に包まれていた。 私はひとり、街灯の明かりに照らされた路地を歩いていた。 心臓の鼓動が響くほど混沌とした感情が胸を満たす。 (何かが違う) そんな気持ちが私を包み込む。 そして、その違和感は徐々に私の全身を支配し始めた。 足元が不安定になり、周囲の景色はまるで水彩画のようにぼやけて見えた。 酔いは深まり、意識は曖昧な境地に沈んでいく。 喧騒から解き放たれた夜は、孤独と空虚さの暗い霧に包まれているようだ。 過去の出来事が頭をよぎ

    • 地雷を踏む

      ユウキは友達と一緒に、公園で遊んでいました。 ふと見ると、エリカがうずくまって肩を震わせています。 エリカの表情は悲しみに包まれており、彼女の泣き声がそよ風に乗って聞こえてきました。 ユウキは心配してエリカに近づき、「どうしたの?」と尋ねました。 エリカはチラッとこっちを見ると、深々とため息をついて答えました。 「コリーが、昨日亡くなっちゃったの」 コリーはエリカが飼っている犬の名前です。 エリカは毎日、コリーと一緒に公園を散歩していました。 産まれたときから一

      • 私の笑顔

        ある夜、古びたビルの一室にある小さな事務所で、若い弁護士のエミリーが残業をしていました。 窓の外は暗闇に包まれ、廊下からは時折不気味な音が聞こえてきます。 エミリーはふと、事務所の一角に置かれた古びた鏡に目をやりました。 その鏡は何か、不気味な雰囲気を漂わせていました。 (なんか怖い……) エミリーはそう思いました。 夜が更けるにつれ、エミリーは鏡に映ることが怖くなってきました。 けど……なぜか気になります。 怖いけど、何か違和感を感じるけど、彼女は何度も鏡を見つめ

        • コタツ

          寒い冬の夜、ぬくぬくとこたつに入り込んでいた。 外は吹雪、 吹きさらしの寒風が家を揺らしている。 けど、こたつの中は暖かい。 私はリラックスして本を読んでいた。 突然、こたつの下から微かな音が聞こえた。 最初は空耳かと思った。 けど耳を澄ませると、確かにこたつの下から聞こえてきた。 それは、まるで誰かが苦しんでいるかのような呻き声だった。 正直、怖かった。 足を突っ込んで温まっているコタツの下から呻き声が聞こえたのだ、怖くないわけがない。 私は恐怖を感じながらも

          日向ぼっこ

          太陽が眩しい光を庭に注ぎ、その明るさは彼の肌を温かく包み込む。 彼は日向ぼっこを楽しんでいた。 青々とした芝生が足元に広がり、花々が色とりどりに咲き誇る中、彼は心地よい風に身を委ねていた。 その穏やかな光景の中に、徐々に不気味な静寂が漂い始める。 最初は微かなものであり、彼はそれを無視しようとした。 風が急に止み、鳥の鳴き声が途絶える。 彼は顔を上げ、周囲を見渡すが、何も見当たらない。 ただ、静かな庭が彼を取り囲んでいるだけだ。 けれどゆっくりと、彼の周りの影

          散歩

          街の灯りが弱まり、暗闇が広がる中、ひとりの男が歩いていた。 彼は普段の生活に疲れ、気晴らしのために散歩をしていた。 それは、些細なことだった。 彼は、通り過ぎる建物の影から、何かの視線を感じたのだ。 その不気味な存在は、影の中でじっと彼を見つめているかのように感じられた。 ただ見つめられているだけなら、そこまで気にしなかった。 けど、気がつくとその存在は、彼の後をつけるように動いていた。 ヒタヒタヒタ……と、嫌な足音が聞こえる。 足音が近づくにつれ、彼の心臓は急速に

          マクドナルドが食べたい!

          休日、仕事のストレスから逃れるため、彼は街の片隅に位置するマクドナルドを訪れた。 彼が足を運んだのは、通り過ぎられることの多い、あまり知られていない店舗だった。 そこには彼が求めていた静けさと落ち着きがあった。 久しぶりにマクドナルドの扉を開けると、彼の心はふわりと踊った。 彼は楽しそうにメニューを眺める。 チーズバーガー、テリタマ、フィレオフィッシュ……。 どれも美味しそうた。 散々悩んだ末、彼はビッグマックを注文した。 「480円です」 可愛らしい店員が、少

          マクドナルドが食べたい!

          家路

          夜の闇に包まれた道を一人歩く。 街灯の明かりが頼りであり、唯一の光源だ。 その明かりが路地裏に差し込むと、影が長く伸び、不気味な姿を作り出す。 足音が反響し、静寂を切り裂く。 風が冷たく頬を撫で、寒さを感じさせる。 そして……。 背後には何かが近づく気配を感じる。 不安と緊張が胸を締め付ける。 その気配は確かに人のものだが、その者の意図は分からない。 時折、振り返るが、その姿は見えない。 不可解な恐怖に震えながら、早足で歩いていく。 街灯の明かりが迫りくる影を投げかけ、

          夜、目が覚めて

          夜の静けさが深みを増し、暗闇が部屋を覆い尽くす中、私は目を覚ました。 時計の針がゆっくりと進む音が耳をつんざく。 部屋の空気が重く、不安が私を包み込む。 何か悪い夢でも見ていたのか、ただ眠気が覚めないだけか。 心臓の鼓動が耳に響き、私は静かに身を乗り出した。 部屋を出ようとする私の耳に、階段を降りる音が微かに聞こえた。 その音は不意に私の心臓をドキッとさせ、息を飲むようにして立ち止まった。 暗闇の中で、その音がどこから来ているのかを探る。 (……夜中だと言うのに……)

          ちょっと怖い話

          朝目が覚めて、んーって伸びをしたら「イタっ」って声が聞こえて……。 慌てて「ごめん!」って、隣で寝ている妻の方を見たら。 誰もいなくて……。 あー、そうか。 妻は新聞の折込やってるから、朝はいないんだな。 なんて思ったけど。 「イタっ」って言ったの誰なんだろうか。 〈了〉

          姉からの手紙

          父親の転勤に伴い、ミアは小さな町にある新しい学校に転校してきました。 ミアの心は新たな環境への不安と寂しさに満ちていました。これまでの友人や慣れ親しんだ環境を離れることになり、未知の世界で生活することに戸惑っていました。 新しい学校に足を踏み入れた瞬間から、ミアは心の中で孤独感と不安が交錯しました。ミアは緊張して周囲を見渡し、どこかに自分の場所があるのかを探しましたが、見つけられませんでした。 初日は物珍しさからか、多くのクラスメイトがミアを取り囲みました。次から次へと

          日常

          いつもと変わらない朝。 お弁当を作り、卵かけご飯とお味噌汁だけの朝食をとる。 軽く頭を洗って寝癖を直し、作業着に着替えながらテレビの今日の運勢を見る。 「最も運勢が良いって! ラッキーアイテムは赤いベルトか。よし、今日は赤のベルトにしよ」 テレビの占いが当たるかどうかはわからない。 けど、悪い気はしない。 身支度を整えると車に乗り込み会社へと向かう。 橋の手前で渋滞にはまると、スマホを手に取ってラジオを流す。 FMとかAMとかじゃない、素人が適当なことをしゃべってい

          森の小さな奇跡

          むかしむかしのこと。 家の近所にある森の中に、それはそれは小さな村がありました。 その村に住む人々は、自然の恵みを糧とし、日々の暮らしに小さな喜びを見出し、心豊かに生活していました。 ある日のこと。 村の外れに住む老いた魔法使いが、村人たちに招かれてやってきました。 彼の名前はエリオット。 長い間森の生き物たちと共に過ごしてきた賢者です。 村人たちはエリオットに、心の癒やしとなる魔法の物語を求めました。 エリオットは微笑みながら、静かに物語を話し始めました。 「昔

          おばあさん秘密のレシピ

          田舎の小さな村におばあさんが住んでいました。 おばあさんは村一番の料理上手。 得意料理の「チキンと野菜のシチュー」は、誰もがおいしいと大絶賛し、その味にみんなが夢中になるほどでした。 ある日、村の人々はおばあさんに尋ねました。 「おばあさん、あなたの料理はいつも美味しいけれど、その秘密は何ですか?」と。 するとおばあさんはにっこり笑いながら、村の人々に教えました。 「それはね、私の秘密のレシピ本があるからなのよ」 村の人々はレシピ本に興味津々。 あんなにおいしいシ

          おばあさん秘密のレシピ

          小さな木

          あるところに、小さな木がありました。 その木は森の端に、一人ぼっちで立っていました。 木は、他の木たちと仲良くなりたいと思っていました。 けれど他の木たちは、いつも木をからかってばかり。 ある風の強い日のこと。 木は、森の奥深くへと吹き飛ばされてしまいました。 一人ぼっちになった木は、森の中で泣いていました。 すると一人の少年が、木のそばにやってきました。 少年は木の悲しそうな顔を見て、木を抱きしめました。 「泣かないで、木。僕は、君の友達だよ。」 少年の言

          とある真面目な青年の話

          「先輩! やりました!」 僕は大喜びで事務所に飛び込み、残業中の先輩に駆け寄った。 「んだよ、うるせーなー」 「契約、取れたんです!」 「あぁ?」 「だから、コムズカシ商事と契約できたんです!」 「は……? あの、面倒くさい部長から?」 「そうです。やったんですー!」 コムズカシ商事に通うこと半年。 まわりから「絶対に無理」と言われた部長から、新規で契約を取ることに成功した。 散々門前払いされ、やっと会えたと思えば無理難題を言われ……。 雨の日も風の日も、ひたすら通い

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