日常
いつもと変わらない朝。
お弁当を作り、卵かけご飯とお味噌汁だけの朝食をとる。
軽く頭を洗って寝癖を直し、作業着に着替えながらテレビの今日の運勢を見る。
「最も運勢が良いって! ラッキーアイテムは赤いベルトか。よし、今日は赤のベルトにしよ」
テレビの占いが当たるかどうかはわからない。
けど、悪い気はしない。
身支度を整えると車に乗り込み会社へと向かう。
橋の手前で渋滞にはまると、スマホを手に取ってラジオを流す。
FMとかAMとかじゃない、素人が適当なことをしゃべっているアプリのラジオだ。
何とかFM?
とかいう名前のやつだ。
商品を売るには……とか、人間関係について……とか。
素人が素人らしいことを、まるでプロのように自信満々に話す。
それを聞きながら「うっは、なんだそれ!」なんて突っ込みを入れる。
そうこうしているうちに渋滞を抜け、会社にたどり着く。
事務所に入るとタイムカードを切り、「おはようございます!」と大きな声であいさつをする。
「おはよう!」
「おはようございます!」
「……ぉ……ぅ……」
元気なあいさるに聞こえないような小さなあいさる。
いつも通り、みんながこっちを見ずにあいさるを返してくれる。
席に着くと、俺も同じように出勤してきた人にあいさつをする。
「おはよう」
この一言に、何の感情も入っていない。
ただ、言うだけ。
相手も見ずに、機械のように、同じボリューム同じトーンで……。
そして仕事が始まったら、いつものように雑務に追われる。
「ねえ! あれがないんだけど!」
「すみません。これ、どうにかなりませんか?」
「電話でーす」
「ちょっとこっちきてー!」
自分の仕事が何もできないくらい、みんなから呼ばれまくる。
「困ったときはあいつに聞け!」
みたいな感じで、頼られてるというか、いい様に使われている。
こんな感じだから、一日が終わるのが異様に早い。
要求に応え、対応してるだけで、あっという間に時間が過ぎる。
そして……。
自分の仕事はみんなが帰ってからやる羽目になる。
いつもと変わらない日常。
特に不満もなく、満足することもない、ありふれた日常。
ただ少しだけ。
このままでいいのかな。
とは思う。
<了>
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