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地雷を踏む

ユウキは友達と一緒に、公園で遊んでいました。

ふと見ると、エリカがうずくまって肩を震わせています。

エリカの表情は悲しみに包まれており、彼女の泣き声がそよ風に乗って聞こえてきました。

ユウキは心配してエリカに近づき、「どうしたの?」と尋ねました。

エリカはチラッとこっちを見ると、深々とため息をついて答えました。

「コリーが、昨日亡くなっちゃったの」

コリーはエリカが飼っている犬の名前です。
エリカは毎日、コリーと一緒に公園を散歩していました。

産まれたときから一緒にいた、家族のような存在でした。

そんな大切なコリーが亡くなったことを聞き、ユウキは驚きました。

(慰めないと)

そう思ったユウキはつい、「大丈夫、新しい犬を飼おうよ」と言ってしまいました。

その言葉を聞いたエリカの顔に、怒りの表情が浮かんでいきます。

そして、彼女は物凄い形相でユウキを睨みつけました。

「新しい犬を飼えですって? コリーはもういないのに、なんでそんなことを言うの?」

エリカは怒って叫びました。

ユウキは自分が地雷を踏んでしまったことに気づき、慌てて謝りました。

「ごめん。そんなつもりじゃなくて……」
「じゃぁどういうつもり! 最低!」

そう言うと、エリカは走っていってしまいました。

それから、エリカはユウキを避ける様になりました。

ユウキが声をかけても答えてくれません。
話しかけても、いない人のように扱われます。

あまりのことに辛くなったユウキは、エリカに言いました。

「コリーのことは謝るよ。もぅ、許してくれないかな?」

するとエリカは真っ赤な顔をして怒り出しました。

「許してくれですって! 誰が許すものですか!」

ユウキは、また地雷を踏んだ事に気が付きます。
けれど、後の祭りでした。

それから、エリカとユウキが話をすることは、二度とありませんでした。

〈了〉

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