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散歩

街の灯りが弱まり、暗闇が広がる中、ひとりの男が歩いていた。
彼は普段の生活に疲れ、気晴らしのために散歩をしていた。

それは、些細なことだった。
彼は、通り過ぎる建物の影から、何かの視線を感じたのだ。

その不気味な存在は、影の中でじっと彼を見つめているかのように感じられた。

ただ見つめられているだけなら、そこまで気にしなかった。
けど、気がつくとその存在は、彼の後をつけるように動いていた。

ヒタヒタヒタ……と、嫌な足音が聞こえる。

足音が近づくにつれ、彼の心臓は急速に鼓動し始める。
彼は胸騒ぎを抑えようとしたが、できなかった。

突然、背後から冷たい息が首筋を通り抜ける。
彼は振り返る勇気もなく、ただ怯えながら前に進むしかなかった。

背後にいる存在は、不意に近づいたり離れたりを繰り返しながら、静かについてくる。
その気配を感じるたびに寒気が走り、身体が震える。

彼は逃げようとしたが、逃げることが出来ない。
誰かに助けを求めようにも街路は暗く、周囲には誰もいなかった。

足取りは徐々に重くなり、不安と恐怖に満ちていく。
彼は彼が辿るべき方向すら見失った。

歩みは止まらず、心臓は激しく鼓動し続けた。
気がつくと、彼は見知らぬ場所にいた。

目の前に、見たことのない建物がある。

普段ならそんな不気味な建物に近づくことはしない、
ましてや、中に入ることなどない。

けど彼は、背後から迫る何かから逃げたかった。冷や汗が額を伝う。

彼は震える手で建物のドアを開けた。
その先に広がる光景は、彼が想像したものとは違っていた…。

建物の中は薄暗く、不気味な静寂が漂っていた。
彼は不安と興奮の入り混じった気持ちで建物を探索し始めた。

少しでも不気味な何かから離れるために、隠れず場所が欲しかった。

部屋の壁には古びた絵画がかかり、ホコリに覆われた家具が散らばっていた。
彼の足音が部屋に響き渡る中、ふと、壁の一部が崩れているのに気付いた。

興味をひかれた彼は、崩れた壁の裏側を探ることに決めた。

そこには隠された通路が広がっている。
彼は興奮と恐怖の入り混じった気持ちでその先を進んだ。

通路は暗闇に包まれ、彼の不安はさらに増していった。
しかし……。
なぜだか分からないが。
彼はその先に、何か重要なものが待ち受けていると確信していた。

やがて彼は、通路の先に小さな部屋を見つけた。

部屋の中央には古びた机と椅子があり、その上には古びた手紙や書類が積み重ねられていた。
彼は興味本位で書類を手に取り、ひとつずつ読み始めた。
すると、そこには何十年も前の出来事に関する記録や手紙が書かれていた。

彼はその内容に驚愕した。

彼が手にした書類には、この建物がかつて恐ろしい事件の舞台であったことが記されていた。
彼の背筋に寒気が走り、恐怖が彼の心を襲った。

そういえば、背後に感じた不気味な気配を、建物の中ては感じていない。
そのことが、彼をなおさら怖がらせた。

慌てて建物から出ようとする。
だが、彼が入ってきた入口は消えていた。

彼はその瞬間、自分がこの建物に閉じ込められたことを悟った。

彼は恐怖に震えながらも、必死に出口を探した。
暗い通路、厚い壁に阻まれながら、必死に建物を調べる。

ようやく、壁の奥に僅かな明かりを見つけると、それを目指して進んだ。

やっとの思いで壁の通路を抜けて外に出る。

すると、そこには警察が待機していた。

何がなんだかわからない。
散歩して、追いかけられて、建物に入って、出てきた。
ただそれだけなのに……。

そして彼は、殺人事件の重要参考人として警察に連れて行かれた。

〈了〉

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