家路
夜の闇に包まれた道を一人歩く。
街灯の明かりが頼りであり、唯一の光源だ。
その明かりが路地裏に差し込むと、影が長く伸び、不気味な姿を作り出す。
足音が反響し、静寂を切り裂く。
風が冷たく頬を撫で、寒さを感じさせる。
そして……。
背後には何かが近づく気配を感じる。
不安と緊張が胸を締め付ける。
その気配は確かに人のものだが、その者の意図は分からない。
時折、振り返るが、その姿は見えない。
不可解な恐怖に震えながら、早足で歩いていく。
街灯の明かりが迫りくる影を投げかけ、まるで悪夢の中を歩いているような錯覚を覚える。
しかし、その不安はどこから来るのか分からない。
暗闇の中での背後からの気配が、耐え難いほどに近づいてくる。
息を切らせながら、一歩、また一歩と進むが、気配はどこまでも消える様子はない。
耐えかねて、道端にあるお店に入った。
ドアが閉まり、外の世界とは切り離された安堵感が心を満たした。
店内の明かりが眩しく感じられ、周囲の騒がしい雑音が、不安定な心を穏やかに包み込む。
店主が驚いた表情で迎え入れ、私の慌てた様子を気遣う。
彼らには、私の背後に迫る恐怖の気配は見えない。
そのことが少しでも安心感を与えてくれる。
心の奥底では、まだあの不気味な気配がどこかに潜んでいることを知っている。
その恐怖は私の心を束縛し、その影が私の背後をずっと追いかけているように感じさせる。
ずっと感じていた気配。
不気味な背後からの存在が、私の心を不安定な状態に保ち続けていた。
その姿を確認することはできず、街灯の明かりが投げかける影が私の唯一の手掛かりだった。
お店に入る際にも、その存在がついてくるのではないかと恐れたが、幸いなことにその様子はなかった。
安心のため息をつき、お店の中で時間を潰すことにした。
店内は暖かく、居心地が良かった。
店主の笑顔と親切な接客が、私の心を和ませてくれた。
周囲の人々が穏やかな雰囲気を醸し出し、私もその一部になれたことを嬉しく感じた。
時折、外からの冷たい風が店内に吹き込んできたが、それもまた心地よいものと感じられた。
時間が経つのを忘れ、私はただただその温かな雰囲気に身を委ねた。
しかし、心の隅にはまだあの不気味な存在の影が残っていた。
お店の中でも、時折振り返ってはその姿を探してしまう自分に気づく。
その気配がいつまでも私の心を追いかけているように感じられ、不安が私を支配し続ける。
しばらく店で時間を潰しても、その不安はなかなか消えない。
いつまでも店に留まるわけにはいかない。
お礼を言い店を後にすると、早足で歩き出す。
冷たい夜風が肌を刺す中、その気配はもう感じられない。
ほっと胸を撫で下ろすが、心の奥底にはまだ不安が残っている。
どこかでその存在が待ち受けているのではないかという恐怖が、私を追い続ける。
街灯の明かりが道を照らし、街の喧騒が耳に届く中、私はただ前を見据えて歩き続ける。
その不気味な存在から逃れることができるかどうか、ただひたすらに祈りながら。
〈了〉
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