真昼月(詩人)

僕が僕であるために僕は詩を書く。

真昼月(詩人)

僕が僕であるために僕は詩を書く。

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【詩】ベールの中の序章

広葉樹の木洩れ日は 風のそよぎにきらめいて 茂みの中の雛鳥は 秘やかに羽ばたく 写真にうつる 幼い僕の笑顔には 青空の向こうの暗黒が チラリと見える 記憶の隙間の 傷痕は剥き出しのまま 時は 色とりどりのベールを 幾重にも重ねてきたけれども 雛鳥の秘やかな羽ばたきは 木霊して 今も青空の向こうに 響いている

    • 【詩】記憶の柩(ひつぎ)

      ひび割れた 十月の空に 曼珠沙華が 突き刺さる 窪んだ眼窩の 翳りの海に 記憶の波は 揺らめいて 可憐な花が 最後に見せたのは 微笑みという名の 毒だった 十月の ひび割れた空は 真紅の花弁に埋ずもれた 記憶の柩

      • 【詩】お母さんの手のひら

        おなかが痛いとき 添えてくれた 手のひらの温かさ 寝つけないとき 握ってくれた 手のひらの優しさ ボクが逝くとき 一番ほしいものは お母さんの手のひら

        • 【詩】天国の在処(ありか)

          (一) 空の上にあるはずの天国は どこにもなかった 見下ろす青い星こそが 天国に見えた (二) 此処にいるのに 此処にはいない 天国にいるのに 天国にはいない あなたの全てが 此処にいるとき あなたは初めて 天国を知るのだ

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        【詩】ベールの中の序章

          【詩】臨終のとき

          目覚めると 私はいなかった カーテンを開ければ 消え去ってしまう 窓際の影のように

          【詩】臨終のとき

          【詩】牛の青春

          殺されるためだけに 生かされている 牛 目には諦めの確信が 彼らは知っているのだ 定められた命であることを しかし 彼らは知らない それが人間の 合理的な残酷さであることを 育ててくれた人間の優しさが 価値高く殺すためのものだったとは 牛にとっては 青春の頃に

          【詩】牛の青春

          【詩】僕のまるい心

          僕のまるい心に 教科書や辞書が 一杯に詰込まれ 心は中から痛い 僕のまるい心が 規則や決め事の 枠にはめられて 心は外から痛い 僕のまるい心は 都合のいい形に 変えさせられて すごく痛いんだ

          【詩】僕のまるい心

          【詩】秋の日に見た白昼夢

          深く濃い青天の下に 白い少女が立っている 瞑想に紛れ込んだ幻想のように 秋を知ったその佇まいは 一輪のコスモスのように 季節の真ん中に咲いている 嗚呼 夏を残した僕は まだ 本当の秋を知らない

          【詩】秋の日に見た白昼夢

          【詩】大人になるということ

          人が春と呼ぶ季節に 再び生が始まる時に 彼は希望を絞め殺し 夢を生き埋めにした 春の光の幻のような 淡く汚れない憧憬を 諦めることで少年は 若さの純潔を捨てた

          【詩】大人になるということ

          【詩】世界のあちらとこちら

          世界のあちらで 若者は銃で撃たれ戦死し 世界のこちらで 若者はゲームの銃を撃つ 世界のあちらで 子供らは飢えて死に 世界のこちらで 子供らは肥えて病む 世界のあちらでは 自由のために命をかける 世界のこちらでは 自由のためにお金を払う これではいけないと 唇を噛み締めながら 世界のこちらで 私は ニュースを見ながら憤る

          【詩】世界のあちらとこちら

          【詩】夢の残滓

          老いた子供の夢の残滓は 手のひらに落ちた ひとひらの雪のように 掴もうとする指先を虚しくする 握ることも 開くことも できなくなった手のひらを いつか私も眺めながら 過ごす日がくるのかもしれない

          【詩】夢の残滓

          【詩】未来の背中

          未来はいつも 付かず離れず前を行く 届かなくても 嘆くことはない 君はただ 現在に懸命で在れ そうすればいつか 未来の背中を追い越すから

          【詩】未来の背中

          【詩】ちぎられた空

          夢はビルの隙間の 小さな空に消えた 現実のど真ん中を ただ駆けずり回り ときおり見上げる ちぎられた空には 夢の断片が沈んで 僕の中にもう甦る ことはないだろう

          【詩】ちぎられた空

          【詩】老いた海

          朽ちたボートが 水平線に放心している かつての曳航を回想しながら 波打ち際の砂山は ひと波ごとに削られて 跡形もなく消えてゆき あとには真っさらな砂浜が 水平線と平行に どこまでも続いている 彼の海は老いてしまったが それは誰かの海の 新しい始まりでもあるのだ

          【詩】老いた海

          【詩】適応障害

          僕はもうダメだろう 世界からはみ出した 僕はもうダメだろう 世界は僕無しの世界 を形作り始めたのだ 僕は世界の外側から その表皮を眺めつつ 闇の中に零れ落ちた

          【詩】適応障害

          【詩】海辺の詩

          裸足の頃から続く砂の 足跡を逆さに辿れば 何処に着くのだろう 波が過ぎた場面を繰り返す 僕の年月は 海で一瞬になる いつかの波が 足をつかんだ だから僕は叫ぶ ただ大声で 叫ばずにはいられない

          【詩】海辺の詩