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【詩】ベールの中の序章
広葉樹の木洩れ日は
風のそよぎにきらめいて
茂みの中の雛鳥は
秘やかに羽ばたく
写真にうつる
幼い僕の笑顔には
青空の向こうの暗黒が
チラリと見える
記憶の隙間の
傷痕は剥き出しのまま
時は 色とりどりのベールを
幾重にも重ねてきたけれども
雛鳥の秘やかな羽ばたきは
木霊して
今も青空の向こうに
響いている
【詩】記憶の柩(ひつぎ)
ひび割れた 十月の空に
曼珠沙華が 突き刺さる
窪んだ眼窩の 翳りの海に
記憶の波は 揺らめいて
可憐な花が 最後に見せたのは
微笑みという名の 毒だった
十月の ひび割れた空は
真紅の花弁に埋ずもれた 記憶の柩
【詩】天国の在処(ありか)
(一)
空の上にあるはずの天国は
どこにもなかった
見下ろす青い星こそが
天国に見えた
(二)
此処にいるのに
此処にはいない
天国にいるのに
天国にはいない
あなたの全てが
此処にいるとき
あなたは初めて
天国を知るのだ
【詩】世界のあちらとこちら
世界のあちらで
若者は銃で撃たれ戦死し
世界のこちらで
若者はゲームの銃を撃つ
世界のあちらで
子供らは飢えて死に
世界のこちらで
子供らは肥えて病む
世界のあちらでは
自由のために命をかける
世界のこちらでは
自由のためにお金を払う
これではいけないと
唇を噛み締めながら
世界のこちらで 私は
ニュースを見ながら憤る