『フクロウの知恵:月陽恋愛相談所 』----noterさんとのコラボ作品。絵から生まれた物語。
これは バナー挿絵から出来た物語
バナーの挿絵は白黒ええよんさんの作品。素敵な絵に物語を付けました。
(all the photo credit for the photos used below, belongs to
a great photographer and a friend, Mr. Eric Cao
用いられてる写真の著作権は 私の友達で写真家のエリック・カオさんにし所属します)
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『フクロウの知恵 :月陽恋愛相談所』
眠い目をこすり 薄暗くなりつつある空を見上げ
今宵も また 年老いた白フクロウが 目を覚ます。
沈みかけのお天道様と ぼやりと浮かび始めるお月様
草むらからは 小さな黄緑色の光が あちらこちらで点灯しては 消え、
そそくさと 帰路を急ぐ者たちが ちらりとフクロウを見ては
急ぎ足を 早足へとかえる。
大きなあくびをしながら 翼を伸ばすと
肩のあたりで こりっと音が鳴る。
年を取るのも 一苦労じゃ…
くちゃくちゃ むしゃむしゃと嘴を 開け閉めしてから
翼をばたばたと 大きく揺らす
果てしなく広がる空は 昼間と夜の二世界を 手繋ぎで融合させている。
オレンジ色の光を放つお天道様が その身を地平線へと打ち付ける…
ベールを少しづつ脱ぎすてるかの様に ゆっくりと姿を現す お月様。
薄暗さと暖かな光が フクロウに まだ寝てなさい と手招きをしているようだ。
再び ゆっくりと瞼を下ろすフクロウの耳に
ぽろりと漏れる ため息が入ってきた。
それはそれは 小さな小さなため息で
せわしなく動き回る虫たちの音に かき消されるほどのものであった。
じっと耳を澄ませるフクロウに おって聞こえたのは
小さな小さな すすり泣き。
大きく深呼吸をし 胸を膨らませ 吐く息と共に 首をきゅっと羽根に埋める。
まだ狩りが出来る程 頭も体も 起きとらんと…。
しかしながら、すすり泣きは徐々に大きくなってくる。
地面に落ちる涙の粒さえも ふくろうには聞こえていた。
黄色く輝く瞳には 開店前のシャッターが降りている。だが、 ピンと立った耳には 閉じる蓋もない。
また大きくため息を一つついて、音のある方向の 片目をそっと開けてみる。
年老いたと言えど、野鳥の王者 フクロウだ。
少しピントを合わせるのに時間はかかったが、音の出所は 生い茂る草むらの中にあった。
小さな小さな子ウサギが ぼんやりと浮かび上がるお月様を じーっと見つめ涙を落としている。
まぁるく丸まったその背中は 子ウサギをさらに小さく 毛玉のように見せていた。
ツマミにもならぬような 子ウサギじゃ。
しかし、閉じそうな片目で 草むらを見回すと
既に そそくさと 家へと飛び散っていった動物たち…
辺りはすっかり静みかえり、跳ねる者も 草を分け走る者も もうどこにも見当たらない。
小さな小さな 毛玉のタマだけが ぽつりとそこに立っていた。
はて…ツマミでも、胃袋にもたれん程度で 良い塩梅なのかもしれんのぉ。
音をたてぬように 翼を大きく広げ 羽の具合を確かめる。
ぽきっ…
付け根が 音をあげてしまい 黄色い瞳が ぎょっと大きく開く。
遠くの毛玉が 老体のささやかな悲鳴に 気づいていないことを確認すると
フクロウは にんまりと笑い、 羽一振りで金色の空に舞った。
小さな子ウサギはピクリとも動かず 草むらの中に立っている。
狙いを定めた フクロウの姿は 悠々とした狩人だ。
両足を前に出し、翼を後ろへはばたかせ 子ウサギに迫ったその時だった。
ぐきり!!
勢い余って 翼を側転範囲以上に持って行ったのか、子ウサギの隣にドスンと落ちてしまった。
なんという失敗じゃ。。。
バタバタと起き上がり、羽根についた土埃を振るい落とす。
尻もちをついたせいか 尻のあたりがジンと痛む。
嘴で そのあたりを ちょこんとつつくと つーん とした感触がビリビリと体中を駆け巡り 羽がブルブルと逆立ち始める。
とふと 横に目をやると…
空から降ってきたきた大鳥には 目もくれず ひたすらお月様を見つめる 子ウサギの横顔があった。
寂し気で、涙が次々と溢れだす小さな瞳が キラキラと光っていた。
その涙の美しさに
ほぉーーーー
と声が漏れる。
子ウサギは やっとフクロウに気が付いたのか
溢れる涙を 少しばかり拭いながら 作り笑いで フクロウに声をかけてきた。
‘’こんばんわ。”
フクロウは きょとんとしながら 首をくるくると回し 辺りを360度見回した。
わしに いっとるのか?
”はい。こんばんわ。”
フクロウは はっとして自分の姿を確認する…どう見てもフクロウだ。
目の前には 捕まえるはずだった 小さな小さな 子ウサギが真っすぐ自分を見つめて笑っている。
子ウサギは 細めた瞳を またお月様に戻しながら呟いた。
”お月様が可哀そうで可哀そうで 早くお姿が現れないかと じっと待っているんです。”
フクロウは首をかしげて また ほぉーー?と声を出した。
お天道様を ずっと見つめて 優しく笑ってくれているお月様。
夜明けと夕暮れ時…ほんの数分しか、愛しい方にはお会いできないのに
それでもこうして 笑っておられる。
近くに行くことも出来なければ、愛の言葉をささやくのには 到底遠く離れすぎた所にいらっしゃる。
なのにいつもいつも こうして笑って
お天道様が沈むのを 優しく見守っていらっしゃる。
はやくはやく お天道様が沈む前に
会える時間が 少しでも長く…
しくしくと泣き続ける子ウサギを フクロウはじっと見つめている。
お天道様が 地平線の底に身を埋めるごとに
お月様は より濃く 姿をあらわにする。
天体学における 光と影の自然法則。
子ウサギはまだ早い。
幼な心に 純粋な愛の法則を見出そうと 必死に涙を流して祈っている。
一線の光が地平線から放たれた瞬間
まるで 草原に光の道が記されたかのように 辺りが光り輝いた。
”会えた!!!”
まんまるい 小さな影に耳ふたつ
それより伸びた まんまる影に…ただ、まんまる。
二つの似合わない影が すうぅーっと草むらに現れる。
ほぉ~。
”やっと会えましたね お月様。
とても嬉しそうに笑っておられる。”
子ウサギは手を合わせ、首をかしげながら うっとりと月に見入る。
フクロウは じっと子ウサギと 同じようにお月様を見上げていたが、
ふと 思い立ったように 口を開いた。
さてと、子ウサギ殿よ。後ろを振り返ってみるのじゃ。
お前さんには何が見えるかな?
子ウサギは 目をぱちくりさせながら くるっと後ろを振り返る。
”お天道様のお光が眩しく光っております。”
フクロウは ゆっくりと目を閉じた。
よぉ~く目を凝らしてみるのじゃ。
光の先には 何が見える?
子ウサギは じーーーっと光のある方を これほどかと言う程に目を細め、
”まんまるいお天道様のお顔が半分だけ見えます。”
ほぉーーー。それだけか?
”お天道様の瞳も見えます。”
ほぉーーーー。その瞳はいかに?
眉間にしわを寄せていた子ウサギの表情が 瞬く間に晴れてゆく。
あんなに細く引き伸ばしていた瞳を お天道様のごとくまん丸にして…
”お天道様のお瞳が 幸せそうに笑っておられます!!!”
フクロウが にんまりと笑みを浮かべ そっとその視線を月に戻した。
そしてゆっくりと語る。
お天道様もまた お月様に会える事が この上なく嬉しいのじゃよ。
この時を待つのは お月様だけじゃないんじゃな。
お月様が お天道様を愛するように
お天道様も お月様が愛おしくて愛おしくてたまらないのじゃ。
お月様がなぁ ああして満面の笑みを浮かべていられるのは
お天道様のお気持ちが ちゃーんと分かっておられる証拠なのじゃ。
お天道様は 子ウサギ殿が走り回れるように 日を与え
お月様は お前さんが優しく寝付けるようにと お天道様の光を ほんの少し夜空に分ける。
いかに、お二人は 二人で一つの太陽なのじゃよ。
わしらの想像をはるかに超える愛で ああして結ばれておられるのじゃな。
だから 子ウサギ殿よ。
もうお月様に涙を流すのは やめるのじゃ。
ほんの少しの間だけでも、しっかりとお互いの愛を交わせることが出来る お二人じゃ。 心配は無用なのではないのかのぉ。
片目だけを開けながら 横目で子ウサギにそう呟いた。
唖然としてフクロウの言葉を聞いていた子ウサギの顔が
瞬く間に 幸せで溢れかえっていった。
さてと…お天道様も もうすぐお休みになられる。
静かな夜を お月様にお任せして ゆっくりと寝付ける事じゃろう。
子ウサギ殿も 早く家路について ゆっくり休むのじゃな。
また明日の朝も お天道様とお月様を どうせ見に来るつもりじゃろう?
子ウサギは 大きな耳を縦に揺らし うなづいた。
どうも有難うございました。
おうちに帰って とうさまとかあさまにも 教えてあげます!!
そう言って 子ウサギはくるっと向きを変え
ポンポンと影行く草むらを 飛んで行く。
ふとその足を止め、また振り返り大きく手を振りながら叫ぶ。
”ありがとうございました、「ふくろうさん」!!!”
ぎょっとしながら 慌ててフクロウが大声で返事を返す。
わしはカラスじゃーー!!
よいか、父上と母上には ちゃぁーんとカラスだと伝えるんじゃぞ!!!
わかったかぁー!! カラスじゃぞーーー!!!
遠くから はーい という返事が聞こえ
子ウサギが 月のある方向へと去っていく。
その道筋から 蛍がほんわりと光を放ちながら一斉に飛んで行く…
ほぉーーー。
ウサギが月へ飛んでゆくのは 案外本当の話かもしれないと
そんなことを想いながら
フクロウはまた にんまりと笑った。
ぐぅーーーーーーー。
腹が鳴り 夜の闇に 黄色い二つの瞳がぎょっと開く。
知恵のあるフクロウの食事も 容易ではないのぉ。
また にんまりと笑みを浮かべ
フクロウが 月の昼間に飛び立っていった。
おわり
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お読みいただきありがとうございます。
この物語は 白黒ええよんさんが作ってくれた こちらの作品…
この素敵な絵に 私が物語を付け加えた
絵画と文字のコラボレーション作品となっております。
月と太陽をモチーフに 素敵な作品を作っていただきました。
白黒ええよん 改めまして どうも有難うございます:)
私には この絵が可愛いフクロウさんに見えまして、今回 この物語を書かせていただきました。
ちょうど私の友達で写真好きの Eric Cao(エリック・カオ)さんが アメリカのメイン州で フクロウの写真をお撮りになられたので 挿絵に使わせていただきました。
Special thanks goes to Eric for letting me use these beautiful images of yours:)
挿絵に使ったものは可愛い表情のものばかりですが、他にも夜の王者らしきフクロウの姿を 皆様にもお届けします。
素晴らしい白黒さんの作品に見合う 物語が作れたか…
判断は皆さまに委ねるとして、楽しくコラボレーションさせていただきました:)皆さまも 読んでくださって 本当にどうもありがとうございます。
七田苗子。
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