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歴史小説「Two of Us」第3章J-1

~細川忠興父子&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第3章 本能寺の変以後~関ヶ原合戦の果て
    (改訂版は日本語文のみ)
     The Fatal Share for "Las abandonadas" 

J-1

「少々、お待ちくださりませ、、、」
 あなた珠子
は、一色宗右衛門を含んだ、細川家の家臣達が説明する『お隠れ』の案を、途中で遮って、声をかけた。

「私は、丹後の〈味土野〉(みとの)には参りませぬ。
 そちらに幽閉されたとのお噂を、地元にお流しくださりませ。

 あのような奥深い山中は、もし奇襲をかけられましても、逃げ延びる場所もござりませぬ。ましてや人間以外の、けものの棲む山林でござります。
 侍従の者も連れて住まうには、危険に遭遇いたしますれば、さらに御不便をもおかけいたします」

「では、どのように『お隠れ』を?」
 窪田次郎左衛門
が、あなたに伺いを立てた。

「私に、一つ案がござります。
 丹波の地にも、「三戸野
(水戸野)」が在ると存じております。
 三戸野の峠にて、幼き頃に亀山城への道のりで、つかの間休みを取る事が、何度かございました」

 明智家が丹波平定後に、細川の家臣となった元来丹後の城主家系である、一色宗右衛門がハタと、ひざを打った。
「なるほど❕
 かの地は、水戸野は小さな集落ではございますが、むしろ町衆や旅の者の行き来がござります。田畑などの食料にも山あいの方から調達は容易い。
 まったく世間から洒脱するよりも、情報情勢を伺える住まい方の方が、宜しいかもしれませぬ。。。たしかに」


 池田六兵衛が、その「丹波の水戸野」への実行案について、具体的に進行を務める。
「まず、細川家よりの知らせや、忠興様の文の届けは、わたくし、池田六兵衛が主立って出来る限り承ります。
 お住まいは、ぜいは尽くせませぬが、町娘程度の暮らしは出来る場所を、、、では、一色殿に地の利でお任せしてもよろしゅうござるか?」

「御意。暮らし向きはご不便をおかけいたしまする。 
 お召し物は地元に溶け込んだ町衆と同じ物で過ごして頂きまするが、〈食〉と〈住〉に至りましては、山あいの民家などで豊富に調達が可能でござります。川魚や巻木なども困りませぬ」

「かしこまりました。御面倒をおかけいたします。
 私は、今でこそ普段より『辻が花』を着付けておりますが、岐阜に住まう童
(わらべ)の頃には、くるぶしの見える丈の童子の〈四つ身〉ではしゃいでおりました。

 暮らし向きに応じた生活に馴染みとうござります。忠興殿とのやりとりの件、かたじけのうござります」

「では。丹波の現地でのご準備は一色殿にお頼み申すが、宮津からお送りいたす面々はいかがなさいますか?」

 すかさず、窪田次郎左衛門が名乗りをあげる。
「わたくしに任せていただけまするか?当日はわたくし共窪田と、一色殿、池田殿の三名を付けろとの、忠興様からの仰せでござります。
 さすれば、ごく僅かな人数での移動で、目立たぬように決行いたしまする。奥方様のごく側近の者二名、お運びの者、我ら三名、の面々がよろしいかと。珠子様、お付きの侍女を御氏名くださりませ」

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