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二人の功績

 「美○」の状況が心配だ。
 女性向け美容記事の見出しを見ていると、「美肌」や「美脚」といった「美○」をよく見かける。中には、昔はこんなの無かったよなぁというものもあって軽く驚く。たとえば「美デコルテ」。初めて見たとき「デコルテって何ですか?」としばらく考えこんだ。「美腰《びこし》」のときは、こんなことをつぶやいた。「神輿《みこし》」とおんなじじゃないかー、イントネーションが! 
 
 こういう「美○」の中でちょっと要領が良すぎるなぁと思うのは、「美腰」と「美ウエスト」のように同じ部分を日本語と英語で言い換えただけのものだ。どちらが先に世に出たかは知らないが、言語の種類を変えただけではちょっとねぇ。つくる人も大変だとは思うが、どうせならフランス語にして「美ラン」とか、スペイン語にして「美シントゥーラ」などとすれば新鮮だったのに。
 それはそうと、「美尻」には「美ケツ」という手もあったはずだが? おかしいなぁ、見たことがない(おかしいなぁ~)。

 他にも美容業界の「美○」には色々なものがあるが、そろそろ飽和状態ではないだろうか。「美へそ」や「美骨」まで現れているのだ。これから新しい「美○」を創るとしたら、あとはもう、分け方を細かくするなどしないと難しいのではないだろうか。たとえば「美脚」を「美もも」と「美ふくらはぎ」にするとか。あるいは、まったく別の新しい部位を採りあげて、たとえば「弁慶の泣き所」を「美弁慶の泣き所」にするとか(長っ!)。

 そもそも、みんな漢字の「美」に頼りすぎなのだ。だから、すぐに飽和状態になってしまう。そろそろ他の漢字にバトンタッチすればいいのだ。たとえば「雅」や「佳」を使えば、「美尻」が「雅尻《がじり・みやびじり》」になってたおやかなイメージになるし、「佳」なら「佳尻《かじり・よしじり》」になって、いくらか知的なムードが足されるではないか。
 そうだっ、「夢」を使えば「夢尻」になって、夢グループっぽさだって出せるゾ(「夢ヒップ」のほうが、らしいか?)。

 しかし、こういうやり方には問題もある。と言うのは、体の細かな部位ばかりを採りあげることは、その部分の見た目を整えることばかりに気を取られ、内面を磨く機会を奪ってしまうからだ。それに、ターゲットとなる部位を細分化していけば手入れする部分も増え、他の活動にあてられたはずの時間が減ってしまう。
 となると、これから創るべき「美○」は、部分的な美しさではなく全体的な美しさを表現しているものになるのではないだろうか。

 でも、そんな「美○」が創れるのだろうか? 
 そんな考えが何度か頭をよぎったが、意外にもみんながよく知っている「美○」の中にピッタリなものがあった。読み方は変わるが世間はすぐに受け入れるだろう。なぜなら、1990年代にデビューした2人の外国人歌手の名前に似ていたからだ。

 その2人の名はビヨンセとオユンナ。そして「美○」の答えは「美女」。読み方は《ビオンナ》だ。2030年までに「美女」はこの読み方で紙面に登場し、そして、すぐに同じ呼び名の歌手もデビューするだろう。
 下地はもうできている。



〈参考〉
 1990年 オユンナ 『天の子守歌』にてデビュー
 1997年 ビヨンセ 『Work It Out』にてソロデビュー
 2028年 ビオンナ 『Beautiful Onna』にてデビュー(予想)
 2036年 ビオーラ 『Be Aura』にてデビュー(予想)

 ビオーラ[美光]に関しては、2006年に花王から発売された口腔ケア商品「ピュオーラ」の貢献もあったということは言うまでもない。

〈付録〉「美女」の男性版およびジェンダーレス版
 男性版・・・・・・・・・・・・・・・・美男《ビヲノコ》
 ジェンダーレス版・・・・・・美人《ビビト》




Ⓒ2023  Namio Kotori


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