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非常ベルが鳴っていないと居心地が悪い

他人から見ると、とても恵まれた状況なのに、どうしても、その場所に居心地の悪さを感じてしまう人がいます。

自分が望み、そうなる為に努力を重ねたのに、望みが叶うと、或いは叶いそうになると、とてつもなく居心地が悪くなってしまうのです。

例えば、昇進うつ病と呼ばれる状態があります。
出世レースに勝つことだけを目指して、脇目も振らずに仕事に励み、同期の誰よりも早く部長に昇進した途端、燃え尽きます。

プレッシャーに押し潰された、部長の器では無かった、真面目過ぎた、
色々な見方、言われ方をされますが、根本原因は、

周りも本人も気がつかない、心の奥で起きる『制限』なのだと思っています。


例えば、恋い焦がれた異性と晴れて恋人同士になった途端、相手のことが気持ち悪く思えてしまいます。

好きな気持ちはあっても、わざと他の異性と親密になったり、恋人の気持ちを逆撫でする様な言動をとります。

相手を試す行為でもあり、関係を破壊する行為です。

DVや浮気、スピード離婚などとも、深い関わりがあります。

様々な心理的要素が絡み合いますが、根本には『制限』があります。


昇進にしても、恋愛にしても、なぜ今更、幼少期そして、
どうして心の奥の『制限』なのでしょうか。


自分が願い、自分が求め、自分が目指した筈なのに、手に入ったら、叩き壊すのです。

その人は、幼い頃、親から感情に『制限』を掛けられた、と想像します。

親が子に『制限』を掛けてはならない、ということではありません。

そこに、子供の感情を尊重する親子関係が有り、
そこに、子供の存在を肯定的に受け容れる構えが有れば、

親が子に『制限』を掛けることも有ります。

但し、『制限』するのは感情では無く、行動です。

訪問先で子供がはしゃいで、コップを割ってしまったら、
「暴れちゃダメでしょ!」です。
暴れることは行動です。

「なんではしゃぐの!」は、感情を否定しています。
感情の発露を咎め、塞いでいます。

なんで、はしゃぐのか、と言われても、子供ははしゃぎたくなるものだから、です。

幼少期は伸びやかな心を育てる、人生で唯一の特別な季節だから、です。

感情の発露を塞いではならないのです。

愛情豊かな親であっても、間違いは沢山犯します。
間違いから、子供が柔らかな心を傷めても、根底に愛が有れば、
やがて生きづらさになる様な深い傷を負うことにはなりません。

愛の素地の上で負った小さな傷は、その子の個性になります。

間違った時、親が子に「ごめんね」と言える親子関係が、その子を尊重する構え、とも言えます。
親の「ごめんね」は温かい愛の絆創膏です。


昇進で燃え尽きる人も、恋人を傷つける人も、
絆創膏を貼ってもらったことが有りません。

愛の絆創膏を持っている親は、子供を尊重する親だけです。

子供をひとりの人間として尊重するから、口先では無く、心から「ごめんね」が言えます。


親が子供の感情の発露を塞ぐ、ということは、
親が子供の感情を殺す、ということです。

私達、人間は感情の動物、と言われます。

感情を殺されたら、生きて行けないのです。


子供から感情を取り上げる親は、心に重大な無価値感を抱えています。

この親も、かつて親から感情を取り上げられる過酷な幼少期を生き抜いた人です。

自分の子供時代は幸せだった、と、その親は言います。
そう思い込まなくては、自分を保てないから、
幸せだったと思い込み、
幸せだったと言うのです。

しかし、心の奥底には、過酷で不幸だった幼少期の、深い傷が眠っています。

我が子が笑うと、傷が疼きます。
我が子がはしゃぐと、傷が疼くのです。

だから子供が、
笑うと『制限』を掛けます。
はしゃぐと『制限』を掛けます。
楽しむこと、に『制限』を掛けるのです。

子供の感情を取り上げます。

笑うこと、はしゃぐこと、楽しむことに制限を掛けるのは、

束ねると、子供が幸せになること、に制限を掛けているのです。


親はそのことを知りません。
意識の下の、傷の疼きがそうさせるから、知りません。

子供もそのことを知りません。
生まれた時から、幸せになることに制限を掛けられているから、気づきません。

生まれた時から、不安と危険に晒されて、心の中では、非常ベルがなり続けています。

非常ベルが鳴らない穏やかで静かな幸せや、
非常ベルが鳴らない歓喜の時も、

とてつもなく居心地が悪いのです。

だから、燃え尽きます。
だから、恋人を傷つけます。

だから、幸せを叩き壊すのです。


壊すことは、一瞬で出来てしまいます。

どうか壊してしまう前、

ベルが鳴らない優しい静寂に、

身を任せても良い、ということに、

気がついて欲しく思うのです。


読んで頂いてありがとうございます。
感謝致します。


伴走者ノゾム



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