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いにしへの短編集

10
ホモ・サピエンスが誕生する以前の、いにしへの物語。10話完結。
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2023年10月の記事一覧

いにしへの短編集5《東の果ての地》

いにしへの短編集5《東の果ての地》

《東の果ての地》

 「″私たちは天とともにあり、地とともにあった。2つの都市は、天と地の循環のようにバランスを保つ。″
 これはあの石碑に書かれていた一節だ。科学という合理性を追求してきた僕らにとって、この一節を理解することはとても難しい。しかし、僕は今、科学ではわかり得ない現象や感覚というものが、この世にはあるのではないかと思い始めている。
 洞窟の入口を塞いでいた大きな石は、見るからに重たそ

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いにしへの短編集6《地球の波動》

いにしへの短編集6《地球の波動》

《地球の波動》

 その村は、すべてが石でできているように見えた。しかも、大きな一枚岩から成る建造物が多く目につく。ハセとメノワ、イマケは見慣れぬ光景に目を奪われながら、北の民に導かれるまま村を歩いていた。
 しばらくすると2本の石柱の上に巨大な石が載った、穴倉のような建造物が見えてきた。奥行きがあるようだが、中は薄暗く外からはよく見えない。
 北の民が、その入口に手を向けながら何かを言った。いに

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いにしへの短編集7《祭祀アワの語り》

いにしへの短編集7《祭祀アワの語り》

《祭祀アワの語り》

 「何億年も前から私たち北の民は祭祀を、あなた方南の民は科学を担い、魂の波動を互いに高め合いながらともに生きてきました。」

 祭祀アワの歌うような清らかな声は語り続ける。ハセ、メノワ、イマケ、そしてリアルタイムの通信を通じてこの語りを聞く南の民らは、その心地よい声に身を任せていた。

 「魂を持つ生物は、それまでずっと北の民と南の民のほかはいませんでした。しかし、地の下時代

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いにしへの短編集8《魂》

いにしへの短編集8《魂》

《魂》

 体を失った魂は、一千年ほど霊界で過ごしたのち再び体の内に入る。体の内にある魂は、その前の記憶を持たず過去を振り返らない。
 北の民らは、大陸がいくつもの海によって分かたれても波動の強い地に点在し、互いに船で行き来していた。 
 アワの魂は幾度も体を変え、今新たな体ミユとして体の内に在る。その体は魂が過ごしてきた過去の記憶を持たない。霊界の記憶も、一千年前の体の内で起きたことも、一億年前

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いにしへの短編集9《共同プロジェクト》

いにしへの短編集9《共同プロジェクト》

《共同プロジェクト》

 「わけがわからないわ。でも、ヨーアの魂が急増していることは事実よ。ヨーア自体は増えていないのに、一体どういうことかしら?」

 祭祀ミテの困惑に、北の民を束ねるツークはただ事ではないと、すぐさま南の民の統治者に連絡を取った。彼らは共同の調査団を立ち上げ、直ちに調査を開始した。

 「村が発見されたぞ。」

 ドアをノックするのも忘れ、ツークが部屋に入ってくる。本を読んでい

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いにしへの短編集10《目覚めよ》

いにしへの短編集10《目覚めよ》

《目覚めよ》

 大きな括りで人類を眺めたとき、ホモ・サピエンスはその最後尾にいる。この地球には、ホモ・サピエンスが誕生する前から人類が存在していたのだ。
 絶滅したラウケもタウタも人類だった。そして、今なお存続するヨーアも北の民も、ホモ・サピエンスが誕生する前に出現した人類のひとつだ。

 ヨーアの体は常に穏やかで、その内にある魂は体に支配されることがない。

 北の民の魂は、見えない波動を感知

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