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板橋武研おすすめ本

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板橋武研の記事のうち、おすすめの本を紹介しているものです。
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記事一覧

華拳だ。華拳だよキミィ。(誰)

華拳だ。華拳だよキミィ。(誰)

中国北派武術をグルグルと周回し続け、現在華拳がマイブーム。
食わず嫌いだったなこれ…。

長拳系の中では一番いい。
いわば「基本地獄」。😅
これがちゃんとできるなら、弱いわけがない。

華拳の源流は、また中国武術の例に漏れずよくわからない。

いくらなんでも、唐代にまでルーツを遡れるとは思えないのだが…。
類似する型・技術を持つ査拳と、どこかで分かれたと考えるのが自然であろうと思われる。
(査拳

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無自覚の病「双重の病」

無自覚の病「双重の病」

王宗岳『太極拳論』で語られる「双重の病」は非常に重要である。

「偏が沈なれば即ち随し、双が重なれば即ち滞る。数年も純功あれど運化不能たる者を毎々に見るのは、概ね皆自ら人に制され、未だに双重の病を悟らぬためである」

これは太極拳に限った話ではなく、凡そ「双重の病」にかかると、動くことができない。

自分が「双重の病」にかかってないかどうか、常に眼を光らせておく。
これも非常に重要な稽古だ。

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君よ知るや 井上尚弥の強さの秘密

君よ知るや 井上尚弥の強さの秘密

12/13、井上尚弥がポール・バトラーを制し、バンタム級でアジア人初の4団体制覇を成し遂げた。

脱帽という他ない。

単に4団体制覇したのみならず、それぞれの王者全員をKOしているのである。
今回のバトラー戦においては、ノーガードで顔面を晒したり、さらには両手を後ろに組んだりと、余裕綽々とも見える試合運びだった。
まさに「怪物」である。

ただ、井上尚弥の強さを「怪物だ、すごい」で終わらせてしま

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至虚への道

至虚への道

おすすめ本紹介。

楊進『太極拳経解釈 至虚への道』

太極拳をやる上での最重要伝書と言うべき王宗岳の「太極拳経(論)」の注釈本。

正直言うと、注釈自体は表現がちょっと現代的すぎて、誤解を生じるおそれが無きにしも非ず。

私の知る限り、「太極拳経」を学ぶための日本語最良の著作は、銭育才の『太極拳理論の要諦』だ。

「太極拳経」を学ぶのならば、まずこの書が必携である。

ただ、この書は「太極拳経」

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「虚数」と「気」「意」

「虚数」と「気」「意」

パンサー尾形がメインキャストの、NHK「笑わない数学」。

どう見ても数学が得意なわけがない尾形が「ポアンカレ予想」とか「フェルマーの最終定理」とかを解説するものだから、つい「大丈夫か尾形!?」とハラハラ感で見ているうちに、いつの間にか数学に親しめる…
という、前代未聞の戦略の教育番組。

小2の次男がこの「笑わない数学」にハマり、なんと「虚数」に関心を持った。

虚数の本がほしいというから、ジ

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『感情の向こうがわ』を読んで

『感情の向こうがわ』を読んで

光岡英稔・名越康文共著 #感情の向こうがわ 読了。

せっかくこの“稀書”を読んだのだから何か書いておきたい…と思ったが、初手から困った。
「政治家アカウント」で書こうか「武術家アカウント」で書こうか困った、のだ。

武術家などと名乗っても、私では到底光岡英稔先生を論評などできはしない。

逆に言うと、光岡英稔先生からある程度学び続けた者からすれば、ここに書かれていることは「いつもの光岡先生

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人間ーー道具を持った動物

人間ーー道具を持った動物

たまたま「カルノタウルスに羽毛はなかった」という記事を見かけた。

カルノタウルスの前足は特徴的で、ティラノサウルスよりもさらに退化(あるいは「洗練」)し、肘もなくなりほとんど残滓だけになっていて、何の役割も果たしてないと思われる。
二足歩行のひとつの方向性と考えられる。

上野の国立科学博物館には「しゃがんだティラノサウルス」という、世界的にも珍しいポーズの復元骨格があるのでぜひ見ていただきたい

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「回り道」が最短距離かもしれない

「普段から何を意識して練習しているかが重要なのだ。どんな小さなことでもいい。その意識しているものが、やがて自分の長所になる。逆に漠然と毎日のジムワークをこなすだけでは、意識している人との差はどんどん広がっていく。そこに上達はない。そのうち自分のできることしかできなくなる」(井上尚弥「勝ちスイッチ」)

やはり、さすがの人物はさすがの見識を持っている。
井上尚弥も、相当に試行錯誤を積み重ねて現在に至

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逆に考えてみる。ダスマリナスはどうすれば井上尚弥に勝てたのか

逆に考えてみる。ダスマリナスはどうすれば井上尚弥に勝てたのか

注目の井上尚弥・ダスマリナス戦は、井上が3RでTKO勝利。
大方の見込み通り、圧倒的な強さを見せつけた。

深遠なる左ボディブロー特に、かすっただけで悶絶する恐るべき左ボディブローに注目が集まった。
私としても、ボクシングで最も妙味が深いパンチは左ボディブローだと思っている。

実際にサンドバッグなどに打ち込んでみればわかる。
身体の集注観がズレていると、こっちの身体のほうが「ズキッ」と来てしまう

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伝統武術の指導法を再構築しなくてはならない

伝統武術の指導法を再構築しなくてはならない

アンダース・エリクソン著『超一流になるのは才能か努力か?』を読了した。

いわゆる超一流と言われる人々…モーツァルト、ピカソ、タイガー・ウッズ、パガニーニといった人々も、「生まれつきの才能」で超一流になったというエビデンスはない。
超一流になる方法は「適切な方法で練習を重ねる」以外にない、ということを30年間の研究をもとに論ずる本で、大変参考になった。

興味を持たれた方はぜひ本書をお読みいただけ

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すべてを疑い、その中から確信を見出す

すべてを疑い、その中から確信を見出す

年末年始、銭育才「太極拳理論の要諦」を読み進めている。
何度も行きつ戻りつ、実際に身体を動かしながら読んでいる。
疑問点があれば、他の書籍を見たり、ネットで検索したり、YouTubeを見たりしている。
まるで套路を学ぶように書を読むという読書体験。

私の目下最大の関心事は、「『事が起こる』とはどういうことか」だ。

太極拳で言えば、なぜ直立の姿勢から左脚が上がるのか。
王宗岳の言葉で言えば、「無

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心意六合拳の「十失」ー「社会」から「原初」を省みる

心意六合拳の「十失」ー「社会」から「原初」を省みる

以前、神田神保町の叢文閣書店で「武術(うーしゅう)」のバックナンバーがたくさんあるのを見つけ、これはと思うものを購入しておいた。
「武術」は2005年に休刊になってしまった中国武術専門誌。当然ながら現地取材しないと成り立たないコンセプトなので、貴重な記事がたくさんあり、現在でもその価値は高い。

その「武術」の心意六合拳の記事をまとめたムック「心意六合拳SPECIAL」に、「心意六合拳の十失」とい

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入門初日「馬歩」は「オンライン武術」で教えられるか

入門初日「馬歩」は「オンライン武術」で教えられるか

入門初日の稽古「馬歩」について、改めて考える。

(原作・松田隆智 作画・藤原芳秀『拳児』)

『拳児』では、姿勢や套路が非常に正確に描かれていると思う。
しかし、それでも「見ただけ」ではわからない。
師の形を見て、師がやった通りにしようと思っても、その通りにならない。
「見た目だけのチェック」では「核」にたどり着かない。

自らの「内的経験」というものが存在することをまず知らねならない。
正しい

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