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[AI中山]をオンライン会議に参加させた話②[AI中山]ついにデビュー

 自分の分身である[AI中山]を作って会議に参加させてみてどうなったか? から、これからの「AIとの共存社会における働き方とは」に関して語る話の2回目です。

前回までの話
・2022年末から登場したChat-GPTをきっかけとした、大規模言語モデル、いわゆる、生成系AI出現で世間は大騒ぎに。
・僕は学生時代コンピュータ工学を専攻。再度勉強してみて、ある程度生成系AIの技術的な仕組みは理解できていた。
・しかし、仕組みはわかっただけでは、どうも腹落ちしなかった。
・仕事があまりにも忙しいある日、「もう一人の自分がいたら」という考えがふと浮かび、自分の分身=「AI中山」を作ろうと思い立った。
・Chat-GPTの機能をフル活用しつつ、夜や休日に設計に勤しんだ。


[AI中山 1号]=僕ふうの見た目&声で原稿読み上げ

 「AI中山」でまず実現したかったのは、僕の代わりに会議に出たり、何か話したりすることでした。

 例えばオンライン会議に参加させて聞くだけ、から始まり、次に、あらかじめ用意した原稿を僕のように聞こえる声である程度の時間話す、さらには、オンライン相手と僕の代わりに会話をする、までできれば最高です。

 しかし、いきなり会話するまで持っていくのは大変そうだったので、まずは僕のような見た目を持ち、僕のような声で話す「AI中山 1号」を完成させることを最初の目標としました。

声、3次元画像、口パクを実現

 まず、僕の声の声紋分析をして、声の特徴等ををつかんで文章を読み上げるAIツールを探してきました。そのツールで、僕の声を数時間学習させることによって、文章を入力すると僕ふうの声で読み上げることができるようになりました。

 次に、3次元画像生成系AIに、僕の写真を何枚も読み込ませて、「読み込んだ写真の人の3次元画像を作って」と依頼することで、「3次元の僕」っぽいものを作りました。

 さらには、入力した音声に合わせて顔写真の口が動くような仕組みを作り出すAIツールを利用して、僕がさも話しているような「口パク」を実現しました。

確認を重ねに重ねてブラッシュアップ

 これらを組み合わせ、①僕が話しそうな話の原稿を僕自身が書く→②その原稿を、事前に声紋分析して作り上げた、僕そっくりな声で読み上げる→③読み上げると同時に、「AI中山」の3次元顔画像の口を動かし、僕がしゃべってるように見せる、ができれば、「AI中山」は一応動くことになります。

 僕は、これら一連の流れで「AI中山」がスムーズに動くように、AIを動かすのに向いているPythonというコンピュータ言語で、生成系AIに助けてもらいながらプログラミングをしては画像に文章を読ませて画面で確認する、を何度も繰り返しました。

 ようやく本物に見える感じがするまでになり、ついに「AI中山 1号」が完成しました。

Chat-GPT、ただモノではなかった

 ちなみに、1号を作るのに、僕自身がプログラミングした時間は数時間です。あとはAIが半自動的にプログラムを作成してくれました。

 この過程で既に、生成系のAIが流暢に会話できる、といったレベルでないことに気が付きました。Chat-GPTはただモノではない…と。

デビュー戦にうってつけの依頼がきた

 さて、いよいよ「AI中山 1号」のデビューです。実戦で使わないと作った意味がありません。

 そう思っていたところ、とある会社の方から、僕の話を聞きたいというオンライン会議依頼がありました。

 冒頭に、僕がまず話す時間があります。一方的にしか話せない「AI中山 1号」のデビュー戦には、まさにうってつけです。

 そこで、プレゼンは「AI中山 1号」、質疑応答は画面をリアルな僕に切り替えて僕が答えるという役割分担で、この会議をデビュー戦にしました。

誰にも気づかれず会議終了→実験成功!

 具体的には「AI中山 1号」を起動して、オンライン会議ツールの画面共有機能を使ってそこにリアルに僕に似せた「AI中山 1号」の画像を表示させる。そして僕の書いた原稿を、僕の声で、口を動かしながら読み上げるプレゼンをさせました。

 ちなみに、ばれてはいけない、と、オンライン会議中での動画の解像度はあえて落としておきました。

 10分強のプレゼンでしたが、画面を見ていると先方は「うん、うん」「なるほど」と頷きながら聞いています。

 不審に思われることもなく、無事に終了。そのあとリアルな僕に画面を切り替えて、Q&Aに答えたのですが、「AI中山 1号」と僕が途中で入れ替わっても誰も気がつくことなく、会議も無事に終わりました。

「全然気が付つきませんでした」

 「これは成功だな」と思いつつ、会議が終わった後に、「ちなみに、途中で何か僕の変化に気づきませんでしたか?」と聞いてみました。相手は、「は?」と、怪訝そうな顔をしています。

 そこで、「AI中山 1号」の画像とリアルな僕の顔を、画面上で交互に何度か、切り替えてみました。すると「あれ? Tシャツの色が変わりますね?」と。実はジャケットの下に着ているTシャツの色だけ、あえて変えていたのです。

 「いやー、実は、僕は2人いたんですよー」と「AI中山 1号」の話をしたら、皆さんびっくりして、「全然気がつきませんでした」、「そんなことできるんですね」、「流行りのAIって、そんなにすごいのですかぁ」…と。


 「そもそも、中山さんはそんなことをすると思っていなかった。見せられることで、流行りの生成系AIのすごさを改めて実感しました。いい体験ができました。ありがとうございました」。

 だましたのに、逆にお礼まで言われる結末に。

1号を洗練させた[AI中山 2号]で完成度アップ

 実験が成功したことに気をよくした僕は、1号をさらに改良して、今度は2号の開発に着手しました。

 生成系AI関連のツール開発の早さは本当にすごくて、1号を作って完成させた頃には、1カ月前よりも進歩した便利なツールが出回っていたからです。これはぜひとも使ってみたい。

 そこで、「AI中山 1号」で作って使っていたツールの一部を入れ替えて、より画像精度を上げたり、読み上げ方を流ちょうにしたりで、「AI中山 2号」を作り、同じように会議に参加させました。

 2号になると、オンラインでの画像の解像度を落とさなくても、「AI中山」が本物と違うことがばれなくなりました。

会話型[AI中山 3号]、デビュー戦は大変なことに!

 さて、1号、2号でプレゼンには成功したものの、まだもの足りない。

 これは双方向、つまり、会話もできるのではないか、と、「AI中山 3号」ではAIだと気づかれずに会話ができるか、に挑戦することにしました。

 「AI中山 3号」デビュー戦…しかしこれが、なかなか大変なことになったのです。続きは次回。

[AI中山]をオンライン会議に参加させた話
① 
自分の分身=[AI中山]誕生
② [AI中山]ついにデビュー
③ 
対話型[AI中山 3号]の大失敗
④ 
失敗から学んだ,現時点での生成系AIの限界
⑤ 
[最終話]AIを使うか,使わないか



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