内藤重人

内藤です。歌を歌っています。包み隠さず書きたい事があって。ここに記します。

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140文字ではなく1000文字で #2【FP4と僕 週末から関西へ】

先日郡山のLIVEで本番直前に鍵盤ケースを開けたら一番低い音を鳴らす為の白鍵が消えていた。箱の中を探して落ちているだろうと思ったけれど見当たらなかった。本番数分前だったし、不思議な事もあるものだと思って平静を装ってPAさんに見てくださいよと苦笑を向けてみたが誰もどうする事も出来ないので、そのまま演奏をした。 終演後に本格的に探してみたがやはり見当たらなかった。仕方がないので楽器をしまってケースを閉じて何事もなかったように家まで持ち帰った。あれからそのケースのファスナーを開い

    • 140文字ではなくて1000文字で

      隣の学生が虚無に包まれたような話をしている。 僕はマクドナルドのポテトを一心不乱に口に運びながら小説を読もうとしている。 しかし、集中しきれない。彼らの話が耳に入ってくるからだ。全然聞きたくはないのに無個性である程に音声は霧のように浸透してこようとする。 大学生であろうふたりの男達。恐らく同じ大学の女子の話をしている。あいつからLINEが返ってこないと片方の男が言った。 相槌を打つ相方にも別に興味のある話題ではないのだろう。会話は宙を舞って机の上に落下する。 その余波が

      • ふたつめの小説 第一話

        「春が光る 弥生の丘に 白木蓮の花が匂うよ」 小学生の頃、全校集会などで校歌を歌う機会があったのは僕だけではないだろう。中学になった頃には歌わなくなったけれど、あの頃はみんなも歌っていたし僕も歌っていた。まさか自分が音痴だなんて気づかなかったし比較的大きな声で歌った。何度も何度も歌ったから大人になった今も覚えている。 「春が光る〜♪」と口ずさみながらライブハウスの階段にある小窓から差し込む光を眺める。恥ずかしいなんて気持ち、前はなかったような気がするなあ。少年だった頃をぼ

        • 11話

          もしかしたら違った未来があったのかもしれない。考えても仕方ない事なのだけれど。例えば、少し後ろを歩く彼と一緒に暮らしていく未来も存在したのかもしれない。それはまるで妄想レベルの事だけれど。仮にそこに恋愛感情があったとしても、伝えるべきだった言葉は他にもあったのかもしれないし、聞く必要がない事だって触れるべきだった事もあったかもしれない。人の懐に入るのを避けて生きてきたような気がする。それらが今の寡黙な空間として形而上的に表現されているのだ。だから、私達は無目的に歩いている。

        140文字ではなく1000文字で #2【FP4と僕 週末から関西へ】

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        • 140文字ではなくて1000文字で
          2本
        • ふたつめの小説
          1本
        • 小説みたいなもの
          11本
        • 音源制作
          0本
        • 青春の焦燥
          8本

        記事

          10話

          ふたりは早足で歩く私にだらだらついてきた。子供みたいだ。決して可愛くはないが。もう終電の時間も過ぎた。彼はどうやって帰るつもりなのだろうか。私達と同乗して?それを拒否する権利は三上の車なわけだから私にはないけど出来ればそれは避けたい。 10代の頃、3人で防波堤に行った時の事は忘れていた。咄嗟に蘇った記憶を折角だから胸に留めながら明かりの乏しい埋立地を再開発した微妙な景観の港を進んだ。あの頃は成長したらもっと自由になれるんだろうなって漠然と思ってた。自由というか、好き勝手に生

          9話

          次の瞬間いきなり彼が僕の右肩を掴んだ。 突き飛ばしてやろうかと思った。 そのくらいに僕はいつの間にか苛立っていた。 「なんだよ、いきなり。」 三上はにやにや笑っている。こいつはいつもそうだった。ずっと前から変わらない。近所だしなんとなく友達っぽく過ごしていたけれど、決して友達だなんて認めたくなかった。心中を語るなら、僕の中には壁が用意されていて大人になった今も崩れる事なく悠然と聳えている。簡単に心の中の大事な部分を他人に見せる事なんて出来ない。瞬間的に思ったわけでもないけど、

          8話

          車を降りたら見たことのある人がいた。そしてそれは知っている人だった。びっくりしたし戸惑ったけど、その瞬間に人生の線が一本繋がったような気がした。とか偶然の再会によって唐突な人生の転機が訪れた。そういう事では勿論なかった。これは三上の策略かとも思ったけれど、どうもそういう事でもないらしい。彼の表情にも驚きが浮かんだ事を感じられたし、そんなに巧妙な何かを出来る程の人物でもない。 「久しぶりだね」とか会話の口火を誰が切るわけでもなく偶然に再会した私と彼は三上を真ん中に挟んでぽつぽ

          7話

          海には波ひとつない。当たり前だ、防波堤なのだから。こんなものは海とは呼べない。とは思うが本当の海が何を指しているのかは分からない。頭が悪い癖に物事を恣意的に捉える所がある。余り好きではない悪い傾向だ。 大体にして夜なのだ。視点の先にはヨットだか漁船だか分からないような頼りない明かりがちらちら浮かんで見えるだけで海の全容は見えない。 とにかく暗い。 どうしてこんな時間にこんなところでひとりで座っていなければいけないのかも分からない。さっさと家に帰って明日の支度でもして早寝

          6話

          昔話をにやにやしながら彼は訥々と投げかけてくる。沈黙は嫌だから相槌を打ち続けたけど、本当はもっと楽しい話がしたい。しかし、それがどんな話題なのかは分からない。でも、探せばあるはずだ。だって私達は海に向かっているのだから。 深夜の高速道路なんて久しぶりだ。このまま朝方まで起きていたら、水平線の向こうから朝焼けの直前の藍色が迫ってくる感じを眺められるかなって想像した。そうだ、そんなような話がしたいのだ。どこの海に向かっているのか聞いてはいないけど、それが似合う景観だったら良い。

          5話

          夕食の事を考えている。やよい軒の鯖の味噌煮定食、いや、もうやんカレーも良い。蒙古タンメン中本やラーメン武蔵が頭を過るけれど、ラーメンは自分で禁止しているので除外されざるを得ない。大体昼食を終えて15時頃から夕食の事を考えながら仕事をする。あまり具体的になり過ぎないで多少漠然としていた方が良い。うっそうとした霧の中から段々と姿を表すように今夜の夕食のメニューは姿を表す。大体その頃になると退社の時間も近づいてくるので、矢も盾も止まらず夕食へと向かう。だから、私の夕食の時間は早くて

          4話

          新宿駅の西口は再開発が進んでいて 街灯が少なくなっていて この感じってなにかに似ているなと思った。 風が冷たい。マフラーを持ってきていないから。寒さから気を逸したい。この感じって夏祭りの時に境内に向かって歩いていた時の感じに似ているんだ。提灯に灯された微妙な光だけを頼りに多くの人が歩いていて。右手に屋台で釣ったオレンジ色の金魚を揺らしている女の子がいたり。制服を着てふたりで歩いている男の子と女の子。私はひとりで歩いていて、どこか寂しいけど、別にいいんだって思う感じ。これが最

          3話

          僕は17歳でどこからも取り残されているのだ。 彼の部屋の灯りは消えていた。しばらくそこに立って様子が変わるのを待っていたけれど、いくら待っていても無駄だろうなと直感で分かった。時間は待ってくれないし、もしかしたら親が出し抜けに起きて部屋の様子を見に来るなんて事もあるかもしれない。その時に誰もそこにいない事が発覚したなら、面倒な事が起こるだろう。既に関係としては決して良好とは言えなかったし、出来たら僕としてもこれ以上こじらせたくはなかった。 携帯電話が欲しいなと思った。あれ

          2話

          秘密基地を作ろうとして 夜中、家を飛び出した 公園には鯨の姿を模したアスレチックが置いてあって、その腹部を切り取るようにトンネルがあった。考えるべき事はいくらでもあるような気がして、その中に座り込んでみたけれど考えられる事なんて家族への不満と恋愛と友達の事くらいで。そんな事は大抵いつも考えている事だし今更改めなくてもいいような気がした。 例えば今が物語の冒頭部分で特別な時間に特別な場所で特別な自分が存在しているとしたなら、僕だけの方法で僕だけが知っている知識を振り絞る事で

          1話

          家族が寝静まるくらいに夜が更けたなら 部屋の壁に当たる光の輝きを眺めていた 理由は様々だけれど、どうにもやり切れなくて。どこか別の世界に行けたらいいのに。なんて思っていた。不満も不安もいっちょ前にあったけど解消するすべを持たなくて。希望的観測を積み重ねたような論理は殆ど占いのようでもあった。反抗期だからねと一括りにされては溜まらない。あなたは恵まれている。と言われても敵わない。永久に走り続ける事なんて出来ないと頭では分かっていても無限の考察の果てに深夜、頭上から地に落ちるの

          「大黒摩季 夏が来る について

          平成時代の歌謡曲についてXで呟いたのでもうちょっと掘り下げてみようと思う。決して暇な訳ではない。さっき一曲新曲の下録りを終えたし夜も遅いし朝も早い。けど、多分今を逃したら二度と書く事はないと思う。別にどうでもいいような内容になるだろうけど構わない。最近日記も書いていないし、適当に精査せずに文章を書くのも悪くないだろう。 先日、近所の定食屋で昼飯を食っていたら大黒摩季の曲が流れた。彼女は僕の母親と同じ大学の出身だと母から聞いた事がある。僕の少年時代には街中の色んなところで曲が

          「大黒摩季 夏が来る について

          僕とN君に対する考察

          2018年、僕とまめ君は僕とN君の5日間というツアーを行った。その旅を終えた後に僕は「僕とN君」という曲を作った。今年、僕は僕の音楽のアルバムを創りたくて制作に入っている。その中で書くべき事があるような気がして書いている。今夜も夜は深くて静かだ。 僕自身の事なのに今では記憶の中にしか存在しなくて、まるで夢の中だったかのように思える事がある。けれど、それは実在して、現実にあった事なんだろう。日を追っていく事に蜃気楼の中に消えていくように薄らいでいく気がして少し怖い。何かの出来

          僕とN君に対する考察