綾瀬なな

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【間宮ひまりSS-15】 泡沫に消ゆ月女神

数多の結末を観測した。 助けて欲しいと、この世界を何とかして欲しいと希った末路を。 後悔しているか、と問われたら私は否と答えるだろう。 全てが理想的な終わりだったとは言えないけれども、私は私の意思で助けを求めた。 その結果がこれだというのなら、思うところはあれども後悔なんてするはずが無い。 けれども、この選択が正しかったのかと問われたら今の私に答えを出すことは難しいだろう。 だって、何が正しかったのか私には分からない。 それでも、それが正しいと信じて走り抜いた結果なら

    • 【間宮ひまりSS-14】 朧月

      気付いた時には私はそこにいた。 まるで無からいきなり生まれ出たみたいに。 そんな私だったから、この世界が歪であることを私の生まれたその時から理解していた。 歪な世界と、歪な私。 全てあの子が生み出したものと分かったから。 私は、この歪を正さなければいけない。 他でもない、あの子の為に。 ​─────── スマホの画面を見て、小さく舌打ちをする。 「何余計なことしてくれてんの、“偽物”」 視線をスマホに落としたまま、振り返る事無く背後に立つ人物へ冷たい言葉を投げ

      • 【間宮ひまりSS-13】 翳る太陽、終わりの始まり

        肌に痛いくらいに太陽が照りつける。 日差しを遮るように、蓮は日傘を太陽の方へ向け目を細める。 時は8月中頃。夏休みも後半戦に入った。 1ヶ月前は真冬のように寒い日も多々あったが、魔人とやらの迷宮が解決されるにつれ、徐々に夏らしさを取り戻していった。 今は今で最高気温が40度を記録したりしているので、別の意味で異常気象とも言えなくもないが。 太陽に焼かれながら、灼熱のアスファルトの上を歩く。 あの燃え盛る迷宮よりマシと言えばマシだが、暑いものは暑い。 蓮は暑さから逃れるよう

        • 【有栖川櫻子SS-8.5】 #10'迷宮 side櫻子

          【迷宮突入】 From:有栖川 櫻子 本来はわたくしはあまり危険な迷宮に足を踏み入れる訳にはいかないのだけれども…… わたくし達の箱猫の危機ですもの。この迷宮をどうにかすることでこの危機が乗り越えられるのなら、多少のリスクは背負いましょう。 引き際は弁えているつもりですもの、無理はしませんわ。 ​─────── 【調査中】 From:有栖川 櫻子 街に一歩踏み入れば、そこらに瓦礫の山があってまさに惨状と言うべき有様でしたわ。 見た所、地震被害かしら。 二次災害も起きて

        【間宮ひまりSS-15】 泡沫に消ゆ月女神

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        • 黄昏学園/間宮ひまり
          16本
        • 黄昏学園/有栖川櫻子
          10本
        • 黄昏学園/瑞木瑠衣
          11本

        記事

          【間宮ひまりSS-12】 独白

          ひまりは世界一幸せな少女でした。 大好きなバスケができて、大好きな友達に囲まれて、大好きな姉が傍にいる。 ひまりはこれ以上ないくらい幸せでした。 ある日、ひまりの姉は遠く離れた地で一人暮らしをすると言いました。 行きたい大学へ行くため、と。 「永遠の別れって訳じゃないもの、またすぐに会いに来るわ」 姉は笑顔でひまりを抱き締めます。 ひまりはとても寂しかったけれど、姉がやりたいことなら、と笑顔で送り出しました。 姉が一人暮らしを始めて、初めての夏を迎えました。 夏にはま

          【間宮ひまりSS-12】 独白

          【間宮ひまりSS-11】 太陽の裏

          『───月海はね、アタシのお姉ちゃん』 ずっと気になっていた女性についてひまりに聞いて1週間が経った。 「こちらが、月海さんの調査結果です」 平田は四月一日探偵事務所に行っていた。 「(ダメって言われれば言われる程気になっちゃうってもんだもんね!)」 壮年の男性の探偵から差し出される資料を受け取る。 先輩から聞いた月海は死んでいるという事実。 それと相反するように存在するガルバ店員の月海。 陽キャ故か、平田故か、その場の並外れた行動力で平田はその話のすぐ後に探偵事

          【間宮ひまりSS-11】 太陽の裏

          【間宮ひまりSS-10】 新月

          放課後の訪れを告げるチャイムの音が鳴る。 ある者は教室で駄弁り、ある者はそそくさと帰宅の準備をし、ある者は既に部活へと向かっている。 蓮はそれらを横目に見ながら鞄を持ち立ち上がろうとする。 その時、たたたと急いで走ってくるような音が聞こえた。 「セーフ!!まだ蓮帰ってない!良かったー!!」 慌ただしく教室へ走って来たのは間宮ひまり。 勢い良く走ってきたにも関わらず、汗ひとつかいていない彼女はそのまま真っ直ぐ蓮の机の方へと向かった。 「間宮、授業終わってから急いで来たの

          【間宮ひまりSS-10】 新月

          【瑞木瑠衣SS-10】感情の名前

          「すきだよ、白石」 ───その言葉を残して、彼は屋上へと来なくった。 白石玲央は彼のいない屋上で彼の残した言葉を反芻する。 その言葉の意味を求めるように。 彼は何で好きと言ったのだろう。 何を好きと言ったのだろう。 どうして、屋上に来てくれないのだろう。 そもそも、好きとはなんだろう。 名前としてなら勿論知っている。 好き、それは何かを好ましく思うこと。 演技が好きだとか、好きな食べ物や音楽だとか、そういう好きは理解出来る。 でも、これはきっと、それとは違う。

          【瑞木瑠衣SS-10】感情の名前

          【有栖川櫻子SS-8】 桜を守るは黒の番犬

          『所詮犬ですね 有栖川さんに犬は似合いません でも私の目にはなれる あなたは盲導犬です』 鷹臣はスマホに届いたメッセージを見る。 最後まで読んだ所で間を置かず、そのメッセージを消去した。 「誰に何と言われようが、俺のやるべきことは曲げるつもりはない」 スマホをポケットに仕舞い込み、陰に身を潜め目前の彼女を見る。 鷹臣が守るべき相手、命を賭す価値のある存在。 生涯を捧げるに値する主。 世界で唯一のただひとり。 その主、有栖川櫻子は長い金の御髪を靡かせ優雅に歩いている。

          【有栖川櫻子SS-8】 桜を守るは黒の番犬

          【間宮ひまりSS-9】 揺蕩う思考

          「お疲れ様でしたー!」 アタシはカバンを肩に掛けて大きく手を振って店を後にする。 今の時刻は夕方4時を少し超えた頃。 今日は休日で、アタシは朝から喫茶店のバイトに入ってた。 個人経営で気のいいマスターがやってるお店。 休日ってだけあって割と忙しかったけど、賄いのサンドイッチがめちゃくちゃ美味しいから差し引きプラス。 シフトの融通もきくし客層もめちゃくちゃ良くて最高。 試作したから食べてみて、とお土産にクッキーまで持たせてくれた。 アタシはクッキーをつまみながらブラブラと商

          【間宮ひまりSS-9】 揺蕩う思考

          【間宮ひまりSS-8】 月の誘惑

          休日の黄昏時。 いつか見たあの影を追うように平田はあの日と同じ道を歩く。 あの時から、あの女性の姿が頭から離れない。 ひまりによく似た美人の女性。 ひまりに聞いても他人の空似じゃない?と言われ、あまりにしつこく聞きすぎたのか「余計な詮索はナンセンス!そんな男はモテないぞ!」とまで言われてしまった。 そんな平田だが、気になるものは気になる。 美人にまた会えるなら会いたいと思うのは、男としてそうおかしいことでもないだろう。 そんなこんなで平田は昼間からずっと同じ道を行ったり来た

          【間宮ひまりSS-8】 月の誘惑

          【瑞木瑠衣SS-9】 日常との決別

          修学旅行が終わった。 それは即ち、旅行という非日常から日常へと戻ることを意味する。 オレはいつものように屋上で筆をとる。 スカイツリーに浅草寺、ディズニーのパレードにシンデレラ城。 鮮明に、詳細に思い出される光景を1枚1枚紙に描いていく。 記憶を整理するように。 考えなくてはいけないことから目を逸らすように。 しかし、考えないようにとすればするほど考え込んでしまうのは仕方の無いことだろう。 筆を走らせる手をぴたりと止めて視線を落とす。 「それ、修学旅行の時のかい?」 白

          【瑞木瑠衣SS-9】 日常との決別

          【間宮ひまりSS-7.5】 #8'迷宮 sideひまり

          【探索開始】 From:間宮 ひまり なるほどな〜!これが迷宮ってワケね! 掲示板読みながらオカ研のとこ行ってみたんだけどこれって迷宮入ってんのかなー!? 体感なんも分かんないな〜! 迷宮がどうのとか?消すとか増やすとか?なんかよく分からん人とかなーんにも分からんけどま、いっか! とりまその辺歩いてみよ〜! ​─────── 【退避】 From:間宮 ひまり うわやば、鳥肌立ったんだけど あのクソ教師、ほら、生徒指導のアイツ!! バッタリ遭遇してげっ、って思ったらさ、

          【間宮ひまりSS-7.5】 #8'迷宮 sideひまり

          【間宮ひまりSS-7】 バナナフラペチーノ

          授業の終わりのチャイムが鳴る。 チャイムが鳴るや否や部活へ走って向かう人、バイトへ向かう人、しばらく席から立つ様子もなくただ無意味に駄弁っている人、思い思いに放課後を過ごしている。 今日は特に依頼も受けていない。 そのまま帰ろうと私は席を立つ。 「エーウち!あーそーぼー!」 「うわ」 目前にまるで通せんぼするかのように仁王立ちしているのは同じクラスの間宮ひまり。 私は彼女を見て顔を歪めた。 「わー!うわとか言った!アタシ傷付きました〜!」 そう言い彼女は大袈裟によよ

          【間宮ひまりSS-7】 バナナフラペチーノ

          【間宮ひまりSS-6】 放課後のひととき

          「じーーー」 平田は目の前の少女を穴があくくらいじっと見つめる。 「ん?どうしたのー?そんなにジロジロ見て」 「まさか変なコト考えてる!?きゃー!エッチ〜!」 見つめられた少女──間宮ひまりは胸の前で手を組んで、わざとらしくそっぽを向いた。 ここは解決部の待合室。 厳密には解決部でない平田とあまり解決部に熱心というわけでもないひまりの2人が揃うのは珍しいことだった。 「あはは!ゴメンゴメン、やっぱ似てんなー!って思ってさ」 平田は全く謝意の無さそうな顔で笑う。 そ

          【間宮ひまりSS-6】 放課後のひととき

          【瑞木瑠衣SS-8】 未来の選択

          「勿論、学歴も大事かもしれない。」 「けれども、私はそれが全てだとは思わない。 君の絵を一目見て思ったんだ。君は類稀な才を持っている人だと。」 「そういった人は得てして社会に馴染み辛さを感じるものだ。」 「現に、今の状況を聞いてより一層そう思った。 無理に学校に通う必要はないんだ。」 「良ければ、東京に来ないか?」 「君の才能を社会への適応の為に燻らせてしまうのは勿体ない。 一日でも早く、その才を磨いてみないか?」 ​─────── お花見大会で我龍院先生に声を掛けら

          【瑞木瑠衣SS-8】 未来の選択