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【間宮ひまりSS-6】 放課後のひととき

「じーーー」

平田は目の前の少女を穴があくくらいじっと見つめる。

「ん?どうしたのー?そんなにジロジロ見て」
「まさか変なコト考えてる!?きゃー!エッチ〜!」

見つめられた少女──間宮ひまりは胸の前で手を組んで、わざとらしくそっぽを向いた。

ここは解決部の待合室。
厳密には解決部でない平田とあまり解決部に熱心というわけでもないひまりの2人が揃うのは珍しいことだった。

「あはは!ゴメンゴメン、やっぱ似てんなー!って思ってさ」

平田は全く謝意の無さそうな顔で笑う。
それに特に気を悪くした様子もなく、ひまりはこてんと首を傾げた。

「んー?何がー?」

「前、ひまりちゃん似の子見たんだよね!」
「ひまりちゃん?って聞いて違うって言われてさー、でもなんか見た事あんなーって」

平田の脳裏に以前会った冷たい目をした赤毛の女性の姿が浮かぶ。
ひまりはんー?と悩む様子を見せた後、あ!と手をぽんと叩いた。

「え〜それってドッペルなんとかってヤツでしょ!?アタシ知ってる!」
「でもでもそれってなんか会ったら死んじゃうんじゃなかったっけ!?こわ!」

そう言ってひまりは大袈裟に身震いをする。
平田はウケる、と笑ってそれよりとぐいと向かいの机に座るひまりに近付く。

「でさ、オレどこで見たっけって考えてて、最近ピンと来たんだよね!」

「写真の子じゃね!?あのペンダントの!オレあの写真の子に会っちゃった!」

あのペンダント──以前、生徒指導の教師に盗られて平田が取り返したもの。
平田はずっと気になってたんだよね〜!と笑う。

「ねぇねぇ、あの子どういう関係??
色気やばかったけどもしかしてお姉さんとか!?紹介してよ!」

ずずいとひまりに近寄って、ね!ね!と迫る。

「えー、秘密!教えてあげなーい!」
「てかそういうの詮索しようとしちゃうなんて平田パイセンデリカシー無さすぎ〜!」

ひまりはコロコロと笑う。
なんてことの無いように。

「ちぇー、ならひまりちゃん今日放課後デートしよ!」

平田はあわよくば、くらいの下心だったのか、この場では大人しく引き下がり、ひまり狙いへシフトチェンジする。

「ざんねーん!アタシ今日はバイトです〜!」

ひまりは近くに寄った平田を軽く手で押しのけた。

「ひまりちゃんツレないな〜 ま、そういう所も可愛いぜ☆」
「アタシはバイトとバスケが恋人だからそういうのはノーサンキューでーす!」

わちゃわちゃとやり取りをしながらひまりはひらひらと手を振り教室から出た。

「…………松本遅せぇなぁ」

1人教室に残された平田は船漕ぎをしながらスマホを開く。
一件の通知が目に入り、平田は固まった。

『松本:晴菜さんを送って帰ることになったから先帰ってて』

時間は20分前。
茶々を入れるにも後の祭りだろう。

「松本のいけず!!!!」

平田の叫びは誰に届くこともなく虚空に消えてった。

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