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『ジョブ型雇用』vs『メンバーシップ型雇用』(1)

「職務」に人をつける主に欧米の「ジョブ型雇用」。「人」に職務をつける日本の「メンバーシップ型雇用」。

この雇用形態によって、「インターンシップ」の目的や内容も異なります。

インターンシップに参加する目的は、欧米では「職に就くためのビジネススキルの獲得」、日本では主に「企業等の仕事理解」。

企業にとっては、共通の目的として「人材発掘」が眼前にあります。

いま、日本企業のイノベーションや成長が滞っている原因を「メンバーシップ型雇用」や、それに伴う「新卒一括採用」に帰する議論があります。

たしかに、終身雇用(慣行)年功序列(賃金)が、企業にとって不可欠な「イノベーション」や社員の「自律的なキャリア形成」を阻害している側面もあります。

一方で、日本では大学への進学率が60%近くになり、卒業して就職する学生が毎年約50万人。

「職務」に「人」をつける「ジョブ型雇用」をどうやって実現するのか?という悩ましい問題があります。

「ジョブ型雇用」では必然として、入社した後にそのジョブが無くなったり、求められる成果が出せなかったら解雇されるという、雇用に関して「常に競争にさらされる日々」になります。

同じジョブ型雇用でも、欧州では「雇用が守られるしくみ」があります。

一方、米国のジョブ型雇用では、「即日解雇が可能、解雇への異議や怒りに対応する専任者もいる」という厳しい現実があります。

出勤して入室する際、セキュリティカードがエラー、インターフォンでそのことを告げると、上司または人事担当者が出てきて解雇を告げられる。金曜日に机の上にピンクスリップ(スラングで解雇通知書)が置かれる。これはつらいです。

これからの時代、会社に依存して働くというのでは無く「キャリア自律」は極めて重要です。

しかし、欧米の「ジョブ型雇用」をそのまま導入すればキャリア自律が進み、結果として日本企業の競争力が高まるかというと、たぶん、そうはなりません。

経営の監督と執行を分ける欧米型の「委員会等設置会社」。いま、日本に80社ほどあります。しかし、実際に機能して会社の成長につながっている会社は限られます。

欧米型のマネジメントをすべてよいものとして取り込むのではなく、イノベーションの連打につながる新しい「日本型雇用」をぜひ創出して欲しいと思います。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!


写真:東北大学附属図書館(正面)

(続く)

📕『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~欧米のモノマネをしようとして全く違うものになり続けた日本の人事制度』海老原 嗣生先生 日経BP社

📘『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち: 「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』海老原 嗣生先生 /萩野進介先生 白桃書房

🗞週刊『世界と日本』2019年新年号「キャリア支援の立場から企業に望むこと」内外ニュース社(拙稿)

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