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人生の踊り場 | 人それぞれの輝き

昨年のいつ頃だったか、元彼が「北海道に行きたい」と言い出した。理由は旅行が終わってもよく分からないまま。とにかく今回の旅行が初めての北海道への訪問となったらしい。

僕個人としても、僕の人生を形成するかけがえのないミュージシャンたちが北海道から生まれてきているし、それはきっと鬱蒼とした気候や、ある意味で広大すぎる土地で時間を持て余した末の結果論なのだろう。

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僕は旅行に行くとき、誰かと遊びに行く時、誰かと約束をする時にすごく勇気を使う。今の自分が大丈夫であっても、数時間後、数日後の自分の体調の責任まではこの病と付き合い始めて約束し切れた試しがない。

もちろんその逆もある。今回の北海道旅行の帰りも、予定だった大阪ではなく、東京に急に予定変更して自分が過ごしたいように過ごした。

誰かに言わせれば我儘なのだろう。僕も半ば自身が我儘だと理解していて、それでも、普段は一週間ぐらい泥のように体を拘束され続けている僕の精神の辛さを理解しようとしてくれる人は少ない。これが我儘なら代わってくれ、マジで。

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北海道旅行 2日目、ふたりとも大阪から北海道へ向かう飛行機の中で既に体調不良の気配がしていて、たくさん計画していた予定もいくつも飛ばしてしまった。

2日目は、10年以上前からCDを買ってくれていたファン(?)と会った。僕からすれば僕の音楽を聞いてくれて、少しでも心が通じたなら、もうそれは友だちだから、僕は変に驕ることもなく、いつも通り、自分と向き合ってくれるひとりの友だちとして接した。彼は当時からカメラをやっていたらしいが、今ではそれが仕事にもなっている。スギョナイ!?

雰囲気似てるような似てないような似てきたような。

僕と元彼、そして、10年以上一方的に知られている関係。この歪な空間から一刻も早く抜け出したかった。非常に疲れた。でも、悪い疲れじゃない。この長そうで短い10年間の答え合わせを考えた時に、僕は本当に僕として一生懸命生きてきた。そして、それがちゃんと伝わる人には確実に届いていた。彼は写真をたくさん撮ってくれていたので、北海道の写真が届くのを心待ちに待っている。

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ガラスのピラミッド "HIDAMARI"
モエレ山

その後、疲れ切った僕らは泥のように眠っていた。気付けば日が落ちていて、もうどこかに行くとかいう気にもならなかった。でも、せっかくの予定だから、ということでモエレ沼公園へ行ってきた。

正直に言うと、ただ広いだけの変なオブジェがたくさんあるよく分からない空間だった(北海道はこのタイプの観光地が多い気がする)(個人の感想です)。

途中、モエレ山へ登る時に、僕はあまりの急勾配に「これは登れない…」と心の中で漏らした。気付けば元彼がすいすいと登っていて、こいつマジか、と思いながらもしぶしぶ付いていった。

登り方にもいろいろあって、階段があったり、石畳の階段があったり、登り方も降りた方もそれぞれだった。僕は寝たきりマン代表として脚の筋肉が衰えすぎているにも関わらず、謎のアドレナリンが放出されて気付いたらまあまあなスピードで足を進めていた。

息も絶えだえ、後ろから準備体操をバッチリこなした陸上選手?たちが階段の下の方から、すごい勢いで僕を追い抜いていった。その瞬間に思い出したのだ。

僕はいつだって、何をするのだって、全てが遅いのである。そして器用でもなければ、大した実力がある訳でもない。あるとしたら、他人からすればどうでもいいこだわりを守り続けることや、自分の好きなことを歩幅を崩さずに進み続けることだ。僕は今もずっとひとりきりで闘っている。

元彼のiPhoneのライト+ナイトモードスギョイ!!!

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隣の芝生は青い。見なくていいものまで見えてしまう。自分に無いものを必要もないのに欲しがる。ただ、自分にしかないものに気付くことは少ない。僕はきっとこの世界の緩衝材なんだ。誰かと誰かの間をつなぐボンドみたいな。

疲れるし、皆それを当たり前の僕の言動だと思っているし、お金も稼げないし、なんなんだこのゴミみたいな人生は。まあそんな人生でも僕が僕としてこの世界に存在していることを少しだけ肯定できた数日間だった。

虚無顔って良いよね…??



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