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200回目の昭和スケッチ「総天然色映画とは?」

「僕の昭和スケッチ」イラストエッセイ200枚目

<当時の東映のタイトルテロップ  画/もりおゆう 水彩/ガッシュ 禁無断転載>

昭和30年代は一大映画ブームでした。
テレビが普及するまで、映画は庶民の一番の娯楽だったのです。

僕もちっちゃい頃に母親に連れられて、よく映画館に足を運びました。
中でも東映の時代劇、例えば、「若様侍捕物帖」、「信吾二十番勝負」。
大川橋蔵、子供心にもカッコ良かったな〜!!!

さて、この頃は映画が始まると、冒頭に映画会社のテロップとして上のような映像が必ず流れました。

この映画はカラー作品ですという映像です。
少し前までは白黒映画の時代ですので、これは豪華なカラー作品なのです、と謳っている訳です。

それはいいのですが、僕はいつもちょっと首を傾げていました。
細かいようですが、こう思ったのです。

『なんで総天然色なんやろ???  別に天然色でいいのに・・・』

Q.
実はこれには明瞭な理由があったのです。皆さんお分かりになりますか?

何故「天然色」ではなく「総天然色」だったか?
この小さな疑問は、高校生になった或る日、天啓のように解けます(笑)

高校生になった僕は、ある日仲間と初めて当時18禁*と呼ばれていた成人向け映画を見に行きます。(ちなみに、結構ドキドキでした。いわゆるポルノ映画初体験という事に加えて、見つかれば勿論補導されますので)

そうして、ついに思いがけず疑問の解ける瞬間が訪れます。

当時の18禁映画は、基本白黒です。
けれど、いわゆる男女の濡れ場になると、突然カラーになるのです。

その衝撃!(笑)

<「成人映画の記憶」 © 2023 画/もりおゆう 水彩/ガッシュ 禁無断転載>

こう言った映画をパートカラーと言います。
カラー作品はコストがかかるので予算のない成人映画会社ではこう言った作り方をしていた訳です。

つまり、大手の映画会社ではこのパートカラーに対して差別化を図るために「総天然色」と謳っていた訳です。

安物の映画じゃないよ、という訳です(笑)

ちなみに、、、
ちょっと皆さんに笑われてしまいそうですが、僕はこの初めて見た18禁映画のパートカラーになった瞬間の印象が今でも脳裏にあります。もちろん映画の内容などはすっかり忘れてしまいましたが、パッと明るくなった館内の様子を覚えているのです。


*こう言った18禁の映画は、まず日活ロマンポルノの登場で打撃を受け、さらにアダルトビデオの台頭で姿を消していった。
*最近の映画ではパートカラーを意図的に使った「シンドラーのリスト」のような作品もある。又、官公庁の提供するフィルムには一部パートカラーのものがあったという。

<©2023もりおゆう この絵と文章は著作権によって守られています>
(©2023 Yu Morio This picture and text are protected by copyright.)


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