見出し画像

創作パロディ:令和のマッチ売りの少女

※この記事は童話『マッチ売りの少女』のパロディです。 更新日:2023年6月12日


今日はクリスマス。

聖なる夜に

少女はとあるミッションを抱えていた。

それは今手に持っているマッチを、全て売りさばくこと——。

性格の悪い父に

「テメェ、マッチが全部売れるまで家に帰ってくんなよ!」

と言われ、寒空に放り出されたのだ。


やれやれ….

とっととマッチを売りさばいてこんな家出てってやるっつーの。


少女は、かじかんだ手をこすりながら

街を彷徨っていた。






カゴの中には、大量のマッチが入っている。

ちなみにまだ1つも売れていない。

時刻は夜の7時。

木に巻きついたイルミネーションはピカピカと点滅していて、ダウンタウンを煌びやかに演出している。


しかしまあ、このご時世に、マッチねぇ。

あらゆるものがデジタル化している今
マッチて。

時代にマッチしてないわッ….マッチだけに。


ただでさえ極寒の中

少女は不意に思いついた親父ギャグでさらに寒くなった。

とはいえ、売れるまで家に帰れないため

風がビュービューと吹く中、さっそく少女はマッチを売ってみることにした。






少女は横断歩道付近に移動することにした。


信号が青に変わり、横断歩道を渡ってくる人に声を掛けてみることにしたのだ。

これなら歩いてくる人の数も多く、数人くらいはもらってくれるだろう…と予想をしたのだ。


少女はとりあえずやってみることにした

しかし、思惑通りにはいかず、見事にフル無視されてしまった。

自分の存在がまるで見えないものかのように、皆颯爽と自分の前を通り過ぎていく。


….やっぱり普通に配ろうとしてもだめってわけね。


少女の作戦はさっそく失敗に終わった。

しかし

とりあえずやってみることで

この方法では一生マッチを配り終えることができず、凍え死んでしまうと

早い段階で知ることができた


まあ、これもひとつの収穫よね〜


少女は作戦を立て直すことにした。

しかしここじゃ寒すぎていいアイデアが思い浮かばない。

少女は泣けなしの100円を握りしめて

マクドナルドに移動することにした。

マクドナルドではあったかいコーヒーが100円で飲めるし、なによりWi-Fiがある。

コスパ最高で作戦も立て放題ってわけだ。




さっそくマクドナルドに到着すると、席がガラガラで貸切状態だった。


そっか…世間はクリスマスを満喫しているわよね。

家族でチキンやケーキを食べたり

友達とパーティをしたり

恋人と雰囲気の良い夜を過ごしたり…。

クリスマスの日にマックでマッチの売り方を考えているヤツなんて世界でアタシくらいよね…


少女は急に切なくなった。

しかし、同時にハッとした。

今日はクリスマス….!!!!!


少女はあることをひらめいた。






イベントと結びつけて商品を売るというのは定番中の定番。

例えば母の日にはお花やエプロンが売り出されているし

父の日にはシャツやネクタイなどが売り出されている。

そんな感じで

クリスマスとマッチを結びつけることで

マッチを魅力的に売り出すことができるのではないか…


なんか、できそうかも———


少女はさっそくチャットGPTを開き

『クリスマスにマッチを使用する場面を考えてください。』

と入力した。

こういう時はAIに聞くのが一番早い。

最新のテクノロジーは味方につけてなんぼというのが少女の考えだった。

すると、3秒後にアイデアを出してくれた。

その中でも

キャンドルに火を灯して雰囲気のいい夜を楽しむ


というアイデアがもっとも気に入った。


少女は最もマッチが売れやすい場所に移動することにした。

それは【キャンドルを販売しているお店付近】だ。


売るための場所は決まったわね…
あとやるべきことは….


少女は、マッチをじっと眺めた。






シンプルで無地のマッチは少し味気なかった。

このままでもいいかもしれないけど
かわいいデザインだったらそれだけで欲しくなる人もいるはず…!!


いわゆるジャケ買いってやつだ。


少女はかばんからペンを取り出し

味気ないマッチのパッケージに、お洒落な模様を付けることにした。

少女はお小遣いをほとんど貰えなかったため

普段からお金のかからない遊びをしていた。

それは絵を描くことと、入場無料の美術館に入り浸ること。

これまで美術館で素敵な絵を眺め

趣味で絵をたくさん描いていたので

アートに詳しく、絵が上手だったのだ。

クラスメートにそれを披露し、絶賛された経験があったため

少女は自分の絵には自信があった。

人から褒められることって特技よねん。
ならアタシは特技を活かしたやり方をするわ。


少女は1つ1つのマッチに違う模様をつけた。

こうして【一点もの】のマッチが誕生した。




その後インスタグラムを開いた少女は

一点もののマッチの写真を投稿した。

写真と一緒に

『これから○○キャンドルストアの横で一点もののマッチを販売します。早い者勝ちです。キャンドルに火を灯し、ロマンチックなクリスマスを演出しませんか?』


という言葉を添えた。

「こんなときのために発信を頑張っていてよかったわ。」


少女は普段から自分の描いた絵をインスタグラムに投稿していた。

将来オリジナルグッズを作りたいという夢があったので、その夢に少しでも近づけばと思い、日頃から描いたものを投稿していたのだ。

長い間投稿を続けていたので、それなりのフォロワーがいた。

少女の投稿には少しずついいねがつきはじめた。






人気のキャンドルストアの近くでマッチを売るという作戦は大成功だった。

キャンドルを購入する人は意外にも『火をつけるための道具』を買い忘れることが多く、少女のマッチはかなりありがたがられた。

さらに、一点もののかわいいデザインが注目を集め、2つ以上買ってくれるお客さんなんかもいた。

さらに

少女はお客さんの反応をじっと見つめたり、
会話をすることによって改善を繰り返した。


「マッチはいかがですか〜」よりも

「キャンドルに火を灯すためのマッチはいかがですか〜」とか「一点もののオリジナルデザインのマッチはいかがですか〜」にする方がお客さんが振り向いてくれるなぁ…

しっかりと会話したお客さんは買ってくれやすくなるなぁ…なら会話を大切にしてみよう!


などなど

色んな気付きを取り入れながら

着々とマッチを売りさばいていった。




時刻は夜の10時。

少女の工夫と作戦が功を奏し

大量にあったマッチはようやく完売した。


さ、帰りましょ。


少女は、以前よりも自信が湧いていた。


———自分の手で何かを売ることができた。


これは少女にとって最も大きな出来事となった。

同時に

実際にやってみることによって

少女は、自分がものを売ることが好きかもしれないということに気付いた。


なんでもやってみて、初めて気付くのね。


少女はこれから、自分にできる商売を始めてみようかと考えた。

自分でお金を稼ぎ、自立し、さっさと家を出ようとも決意した。


私は、自分が幸せでいられる環境に身を置くわ。






街のイルミネーションが、さっきよりも輝いて見える。

それはまるで、これから踏み出す少女の一歩を祝福しているようだった。

ガッツポーズをした少女は「これくらいはいいわよね」と呟き

売り上げであつあつのフライドチキンを買った。

今まで一度も食べさせてもらえなかった、ジューシーでパリッとしたチキン。

自分で稼いだお金で買ったチキンの味は格別だった。


進むべき道が少し見えた少女は鼻歌を歌いながら

寒空の下をくるくると踊りながら帰っていった。


画像1


おしまい






こちらもおすすめです☺︎

自分の中にあるものをフル活用してオリジナルな仕事を作りたい方、自分でモノを売る術を身につけたい方におすすめのマガジンです!



この記事が参加している募集

#おうち時間を工夫で楽しく

95,466件

本当にありがたいし、嬉しいし、書き続ける糧になります♡いただいたサポートには1つずつお返事し、大事に使わせていただきます☺︎