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ミュージカルとオペラを比較【観劇レポ】ロンドン オペラ 『Aida』

ロンドンに留学中の舞台好き女子大生です🎭
普段はミュージカル漬けな私ですが、せっかくロンドンにいるんだから、とオペラに初挑戦してみました!


劇場: Royal Opera House

ロンドン中心部、Covent Gardenの側に位置する、オペラやバレエを主に上演する劇場です。

エントランスから2階のレストランにかけてはモダンな印象。
正装の人はミュージカルより全然多いです。

地上階ロビー


場内、息を呑む美しさでした。
立ち見を含む6階建て、計2,256席、ステージを上辺としたU字型に客席が取られます。
絶妙な薄暗さ、舞台のセットかのようなお洒落な照明、高貴な赤い座席、ステージを縁取る金のプロセニアムアーチとその周りの装飾、水色のドーム型の天井、高級感に溢れていて厳かで素敵な空間でした。
私のお席は4階1列目上手側(£31)。ステージの上手部分は見切れます。
でも、舞台とオケと場内の全てを見渡せる点で大満足でした✨

お歳を召したご夫婦がお洒落をして仲良さげに来ていたり、スーツ姿の男性たちがワイングラスを片手に話し込んでいたり、ドレス姿の親子がバルコニーから下を眺めながら談笑していたり、、
「オペラの演目自体」を楽しみに来ている人よりも「オペラを観劇するという経験」に価値を感じている人が多いように感じました。本来劇場ってそうあるべきですよね、素敵!

演目: Aida

オペラの知識皆無な私でも聞いたことのあるタイトルなので割と有名な演目なのではないでしょうか、
1871年にカイロ・エジプトで初演を迎えた、ヴェルディによる演目です。
エチオピアとエジプトが対立関係にある中で、エチオピア王女のアイーダとエジプト軍のラダメスの禁断の恋を巡るお話。ロミジュリみたい。

4幕ものです。1,2幕間と3,4幕間は暗転したままで、離席不可の短い休憩です。2,3幕間がミュージカルにもあるような長い休憩。

言語はイタリア語です。
舞台上部に英語字幕が表示されます。
文脈から何言ってるかは予想できるし、歌の英語を聞き取るのって難しいので字幕で文字を追える方が意外と頭に入ってきたり。イタリア語上演に当たっての不便さは特になかったです。

展示されていた過去のエジプト王役の衣装


以下、ミュージカルとオペラを主観で比較します。
オペラはAidaしか観ていないし何の専門知識にも基づかない素人感覚なのでご了承ください。

ミュージカルとオペラ比較1. 歌中心vsオケ中心

ミュージカルはストーリーに歌が付いてくる、オペラは音楽にストーリーが付いてくる。
オペラのオケはミュージカルのものよりも屋根がない部分が広くて (上から見た時に舞台に覆われて見えない部分がほぼない)、大勢。指揮者さんが舞台上のキャストの歌唱のタイミングも指示するし、オケキャスト含めた総リーダーという感じ。
音楽も、ミュージカルは歌を引き立てる演奏であるのに対して、オペラは魅せる演奏。前奏や終奏が派手で長い。1曲がめちゃめちゃめちゃ長い。音楽にストーリーが沿うから、ストーリーの進みもゆっくり。だってある人物の一時の感情を歌うのに10分弱とか使うんですよ。長い曲を紡いで丁寧に、狭く深く情報を伝える印象でした。

ミュージカルとオペラ比較2. 求められる完全性

ミュージカルに求められる完全性は、状況・感情を全身全霊で伝えること。その手段としての歌。感情さえ伝われば、歌の中で怒鳴っていようが、泣いて歌えなくなろうが、問題ない気がします。
一方オペラに求められる完全性は、音楽としてのもの。オペラ的発声方法で音を外さないことが絶対で、その上で感情や身振りを足して行く。
それぞれ別の魅力があり、どちらも美しいと思います。

あとオペラ、キャストの人数がめっちゃ多い。
ソロで歌うのはほぼプリンシパルの6人だけなのですが、アンサンブルがすんっごい量います。彼らの存在や動き、ダンスによって各シーンの完成度がぐっと上がります。2幕ラストの凱旋行進曲は特にアンサンブルによって成り立つ音楽。
そういう大勢の集団としての完璧さもオペラには垣間見えました。

客席天井


ミュージカルとオペラ比較3. 表現方法、親しみやすさ

これは類似点です。
オペラって、敷居が高くて知識がないと理解できない難解な芸術だと思っていました。でもそんなことなかったです。

まず、昔に制作されたものなのに、ストーリーが馴染みやすい。
なぜなら、主軸が「恋愛・人間関係と彼らの感情」という、時代を超越して人々が共感できるものだから。
立場を超えてラダメスと一緒になりたいアイーダと、意志とは関係ないところで進む現実に困惑するラダメスと、唯一叶わない恋愛に狂気の沙汰のアムネリスと、後がなくてアイーダを利用してしまうエチオピア王と、自国を守ることに忠誠を示し続けるエジプト王と。全員に共感できる部分があります。
複雑な事情の下に禁断の恋をして、ライバルがいて、障害もあって、それでも好きな人と一緒になりたいという願う強い感情や、相手を思うあまり自己コントロールが効かなくなり意図せず誰かを傷付けて苦しませてしまう切なさ、同じ事実を巡って異なる背景を持つ人物それぞれが違う感情を抱く様子、それらが歌われる。ミュージカルと同じ。

チケットも、お席によっては意外とお手頃。
若者には割引があり、作品や公演回によっては無料で観れることも。
1人で観に来ている人もいましたし、結構手を出しやすいです。

ただ、ほぼ毎日毎晩上演され、大抵当日券が購入可能なミュージカルと、1,2ヶ月の公演期間中に週1,2回上演され、前売りで完売な公演も多いオペラ、予定の合わせやすさでは違いがあるのかも。
「今日/明日観に行かない?」という軽い感覚で行けるのがミュージカルで、「この日オペラ行こうよ」と前々から決めて行くのがオペラ。
その点、日本のミュージカルは後者ですよね。もっとこっちみたいに、軽い感覚で楽しめる、映画に近しい芸術になったら良いなあ。

総じて

渡英してから憧れていた劇場、Royal Opera House。
念願叶っての『Aida』観劇でした!
劇場も美術品さながらで美しく、演目も楽しめて、大満足のオペラ初体験でした。今後も少しずつ観劇本数を増やしたいです✨
時代背景や音楽等を勉強すればするほど楽しめる芸術だと思うので、もっと詳しくなれるようお勉強にも励みます。

バー・レストラン


※見出し画像は Royal Opera House『Aida』公式HPより


作品情報

Date: 08 May 2023 7:00 PM
Venue: Royal Opera House
Cast:
 Aida - Angel Blue
 Radames - Seokjong Baek Replaces Francesco Meli
 Amneris - Elīna Garanča
 Ramfis - Ludovic Tézier
 King of Egypt - Soloman Howard
 High Priestess - James Pratt
 Conducted by Mark Elder
Creatives:
 Music by Giuseppe Verdi
 Written by Antonio Ghislazoni
 Directed by Robert Carsen

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