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よるのみずうみ。

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日々のくぼみとして、思考の記録、日記のようなもの。
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2023/09/02 うでのなか。

2023/09/02 うでのなか。

わたしが怖がりなのには理由があって、
それが幼少期の、積み重ねられた経験であることに
違いがないのも知っている。

むしろ、知らないことを恐れるのは
いつも大人の方であって、
肉体的には抱き留めても
心まで、その腕を伸ばしてくれることはなかった。

誰かを本当の意味で抱えることは、
どんなに大きくなっても、偉くなっても、
そうそう簡単に、できることではなくて。
ただ、抱き留めはしなくても
無口な壁

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2023/08/29 それは、たゆまぬ行進の。

2023/08/29 それは、たゆまぬ行進の。

つぶさには見えないものに直面するたびに、
自分の見ているものが、信じられなくなることがある。
それは、不安と着地するにはあまりにもおぼつかず、
吐いてしまいそうになる言葉をこらえて
ようやっと、携えられるような。

体は、たゆまぬ行進だ。
意に反することが出会いの過半数を占めるのに、
狂わずにいられるのは
安易な意味と、抱きとめるような諦念を
覚えてしまったからなのか。

潰えてしまいたい夜には

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2021/05/15 だれのことば?

 

 「これはだれのことば?」

 わたしは時々疑問に思う。わたし、こんな口調だったっけ、こんなことばいつの間に知ったんだろう、って。そんなとき、わたしは自分が発することばを疑う。これは果たして「わたしのことば」だろうか、「わたしのことば」というやつは本当に存在するのだろうか、と。

 生まれた時からわたしたちは、前提のあることばに馴染んでいく。それは完成され使い古されたことばたちで、日常におい

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2021/05/11 透明になりたい。



「わたしはわたしに、おやすみなさいと言う」

 わたしたちは、絶え間ない日々を生きている。それは自身や周囲の環境に何事もない限り、明日も続き、明後日も続くものだろう。そんな休符のない日々の中で、ときに一休みしたくなることはないか。

 わたしにはある。わたしはわたしから離れてまっさらになりたいと、そういう思いが時々、にわか雨のように浮かんでくる。ただ、勘違いされたくはないので言っておくが、こ

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2021/05/08 読書のこと

2021/05/08 読書のこと

 

 「ときに世界は、虚構に埋め尽くされる」

 

  わたしは読書が好きだ。でもそれと同時に、わたしは読書が苦手だ。

 読書をするとき、わたしはわたし以外の誰かになる。そうならざる負えなくなる。わたしは自分を手放して、誰かの語りと同化していく。夢中になればなるほど、それは深まる深度で、自分の意識が自分ではない何者かに譲渡されることを、ある瞬間発見する。

 その感触が、とてつもなく気持ち悪

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2021/05/08 熱帯夜

2021/05/08 熱帯夜

 

 「こんばんは、蒸し暑い夜ですね」

 いきなり上がった気温に体の方が追いつかない、今日はそんな一日でした。薄着をしてもアイスティーを飲んでも、血がふつふつと煮えるようで、わたしはわたしの体の中で、冷えた場所を探して迷子になります。こうやって独り言を呟いても、指先の粗熱が取れそうにないので、今夜は上手く眠れるか心配です。(ああ、上手く眠れるといいけど。)

 たった今、季節と言うのは残酷だ、

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