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古森 もの
2024年9月8日 15:31
愛よりも先に、生きるうえでのごく狭量な「正しさ」を学んでしまって、今まで多くの物事を傷つけてきた。それが自覚としてある。妹だったり、かつての親友だったり、相手は色々だけれど、生活における弛みのようなもの、横道にそれる不健康さを、かつてのわたしは許してはいけないものだと信じていた。 簡単に言えば、そういう「家庭」だった。必要な話し合いすらうやむやにされてしまうような沈黙による支配、その冷たさ。周
2024年9月7日 20:21
耐えられない、耐えられないと思う。指先が懸命に走る、その原動力がどこにあるのか自分でもわからない。熱い、とにかく熱い。心臓が燃える、頬と額が灯りだす。呼吸が上手くできなくなる。誰が分かってくれなくても、自分はここにいるのだと、ひしひしと伝わってくる。熱を出した時、自分の発する体温で、暖めなおされるようなあの感覚。ああ、わたしは最高に今ひとりだ、この世界はわたしのものだと、白紙を前にしてようやっと
2024年6月16日 23:42
たやすく、たやすくなるために生きてきて、わたしは目ばかりになってしまった。あります、います、ということが恐ろしく、本を読むのは好きだけれど、物語にはなりたくなかった。じゃあどうすればいいの? と考えたとき、もう書く側になるしかないと気が付いた。 そうして、わたしは眼差すことばかりに熱中して、どんどん春みたいに近視が進み、今のこの気持ちだけはせめて、たやすくならないようにしたい、と願っている。
2023年9月2日 08:00
わたしが怖がりなのには理由があって、それが幼少期の、積み重ねられた経験であることに違いがないのも知っている。むしろ、知らないことを恐れるのはいつも大人の方であって、肉体的には抱き留めても心まで、その腕を伸ばしてくれることはなかった。誰かを本当の意味で抱えることは、どんなに大きくなっても、偉くなっても、そうそう簡単に、できることではなくて。ただ、抱き留めはしなくても無口な壁
2023年8月29日 00:25
つぶさには見えないものに直面するたびに、自分の見ているものが、信じられなくなることがある。それは、不安と着地するにはあまりにもおぼつかず、吐いてしまいそうになる言葉をこらえてようやっと、携えられるような。体は、たゆまぬ行進だ。意に反することが出会いの過半数を占めるのに、狂わずにいられるのは安易な意味と、抱きとめるような諦念を覚えてしまったからなのか。潰えてしまいたい夜には
2021年5月15日 14:02
「これはだれのことば?」 わたしは時々疑問に思う。わたし、こんな口調だったっけ、こんなことばいつの間に知ったんだろう、って。そんなとき、わたしは自分が発することばを疑う。これは果たして「わたしのことば」だろうか、「わたしのことば」というやつは本当に存在するのだろうか、と。 生まれた時からわたしたちは、前提のあることばに馴染んでいく。それは完成され使い古されたことばたちで、日常におい
2021年5月11日 17:49
「わたしはわたしに、おやすみなさいと言う」 わたしたちは、絶え間ない日々を生きている。それは自身や周囲の環境に何事もない限り、明日も続き、明後日も続くものだろう。そんな休符のない日々の中で、ときに一休みしたくなることはないか。 わたしにはある。わたしはわたしから離れてまっさらになりたいと、そういう思いが時々、にわか雨のように浮かんでくる。ただ、勘違いされたくはないので言っておくが、こ
2021年5月8日 15:51
「ときに世界は、虚構に埋め尽くされる」 わたしは読書が好きだ。でもそれと同時に、わたしは読書が苦手だ。 読書をするとき、わたしはわたし以外の誰かになる。そうならざる負えなくなる。わたしは自分を手放して、誰かの語りと同化していく。夢中になればなるほど、それは深まる深度で、自分の意識が自分ではない何者かに譲渡されることを、ある瞬間発見する。 その感触が、とてつもなく気持ち悪
2021年5月8日 00:35
「こんばんは、蒸し暑い夜ですね」 いきなり上がった気温に体の方が追いつかない、今日はそんな一日でした。薄着をしてもアイスティーを飲んでも、血がふつふつと煮えるようで、わたしはわたしの体の中で、冷えた場所を探して迷子になります。こうやって独り言を呟いても、指先の粗熱が取れそうにないので、今夜は上手く眠れるか心配です。(ああ、上手く眠れるといいけど。) たった今、季節と言うのは残酷だ、