インド物語-バラナシ12-

褐色のすりガラスのようにガンジス川の水面は光を通さなかった。

濁って見えない水中には牛や人の死体が漂っていると聞かされていた。川の中でその腐った肉の塊が運悪く手や体に触れないことを私としては願った。

でも水に入ってしまうと、どうということはないような気がした。本当に怖いのは想像している瞬間だけなのである。

近くにあった誰もいないボートによじ登ると体についた透明の水滴が私の身体の上でキラキラと光った。

溢れた水がボタボタとボートの底の板を濡らして黒く染めた。後ろの方から怒鳴り声が聞こえた。

私はそっちを振り返らずに頭から川に飛び込んで逃げた。ここは幼い頃に川遊びした故郷と同じであり手に触れた水の冷たさは昔から知っていた。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。