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むるめ辞典

■手紙

[読]てがみ

手の紙

[例文]
父は私が6歳の時に一軒家を建てた。書き出す前の手紙みたいに真っ白な家で、近くには平屋建ての工場と桜並木の美しい公園があった。

同年代の子供が近所で遊んでいた。公園に集まって私を歓迎してくれた彼らは、パッパッパとチームに分かれてサッカーをはじめた。私もその輪の中に入った。

「たか!パス」「たか!こっち!」

最初から全員が私の名前を呼んでくれた。
名前を呼ばれると、これからもここにいてもいいぞ、と言ってもらえた気がした。それで私は嬉しくて終始笑いながら日が暮れるまでボールを追いかけた。

私たちの輪はここで繋がり、衛星のように近づいたり離れたりしながら、お互いの姿を認め合って成長した。

父の家が書き損じた手紙みたいに汚れた頃には、私達は人生の輝かしい時間をかなりたくさん記憶に書き残していた。

 

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。