インド物語−バラナシ⑧-

ガンジス川の向こうに落ちていく夕陽を眺めていた。昼間は白い無数の線だった陽光が少しずつ赤い帯になって空を焼いていった。消火のために黒い帳が降りてきて夜を闇に染めた。宿のオーナーは夜間の出入りを禁止していた。扉に鉄格子を下ろしたうえに見張りを一人つけたのでまるで監獄のようだったけど文句は言わなかった。することもないので食堂の横のラウンジに座り旅行者が残していった本の並んだ棚を眺めた。美人のaがやってきて「外に出られないってしってた?」と私に聞いた。「地球の歩き方にはそんなこと載ってなかったわ」と言った。

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