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【Mumエッセイ】お節介のプロが助けたい生クリーム。チーズケーキへの変貌。

重い砂利をお腹に抱えたかの様に、どんよりとした空気をまとって冷蔵庫を開けた途端。
背の低いパックが目に入った。
ちょこんと佇む生クリーム。気づけば賞味期限3日切れ。

元気だった頃、ふとお菓子作りに使えるから買っておこうとばかりに心弾ませていた自分が蘇る。

その瞬間。
「助けなきゃ」と心が動いた。
さすがお節介精神。こんなマインドでも、助けたいなんて飛んだ我がまま。ほんとうにありのまま。こうやってお節介を取柄に生きていたプロである。
学生生活グループの活動で何がトラブルがあれば、大体真ん中に立ち解決するなり、みんながやりたくない仕事を引き受けてサポートしていた。
そんな自分にイライラしつつも、結局はこうなってしまう自分に諦めさえ持っていた。
もしかしたらお節介かもしれないし、お節介では無いかもしれない。
大体周りからは感謝されたもんだが、私からしたらお節介になるほど自分の心の何かを削りに削り生きていたのかもしれない。望んではいなかったのかもしれない。

しかし、こればかりはお節介ではない。
我が家にあるのは一度見放されてしまった40%オフの生クリームである。

いやこれはスーパーで、そして我が家で二度目の見放されを経験している。
大いに可愛がってあげる事で免罪になる事を切に願う。すまぬ。気分の波にさらわれてしまっていた。陳謝。


結果、何を作ろうかと萎んだ脳みそで考えた結果、ベイクドチーズケーキを作る事にした。
チーズケーキは私の得意なケーキである。もう何十台も作ってきた。
プレーンのベイクドチーズケーキのほかにも、アレンジでフレーバーをつけてみたり、材料の配分、焼き方を変えて作ったり。

いわば、私のお菓子作りのベース。基盤である。

だから安心感がある。何をしても基本失敗しないし、上手にオーブンと向き合えば焼き菓子ならではのこんがり綺麗な焼き色が付く。
焼き色にはみんなを笑顔にさせる幸福のスパイスが潜んでいると思う。

よし、取り掛かるかと思ったところで、私は気づいた。
「アメリカンチェリー冷凍しておいたな。いまこそ使ってみるか!」
なんだかこのあたりから、ギアが入ったというか目の色が変わった気がした。今からこの手で生み出す覚悟が出来た。覚悟なんて言うほどじゃないけれど。

ここで本日のお菓子はアメリカンチェリーのベイクドチーズケーキとなった。
しかし、アメリカンチェリーのチーズケーキとなると少し不安になった。

チーズケーキの酸味とアメリカンチェリーが合うかどうかだ。
正直、あまり想像がつかない。
アメリカンチェリーはマフィン等の焼き菓子、パルフェ等の生菓子、フォレノワールの様にケーキでありながらも生クリームのケーキに使われるイメージがある。
それがベイクドチーズケーキと合うのかどうか。私の舌で想像したところ、美味しいけれど相性は微妙だと思った。まだ、レアチーズケーキなら相性がよさそうではあるが。なんか味がぼやけそうな...。どっちが、センターなのか。曖昧になってはいけない。

チーズケーキへの安心感を抱いていたにも関わらず、ここにきてひやひやしている。どうする私。うーーーーん。
よし、クランブルをトッピングしてみよう。
クランブルとは英語でほろほろ崩れるという意味らしい。
マフィンや焼き菓子の上にトッピングされる。このクランブルは、小麦粉、砂糖、アーモンドプードルをバターで合わせそぼろ状にする為、食感はまさにほろっと崩れる感じ。アーモンドプードルのおかげで香ばしい仕上がりになる。

これがあれば、タルトで使われるようなダマンド生地の雰囲気が加わる。
チーズケーキとチェリーのちぐはぐも抑えられそうな気がする。

よし、あとは決行あるのみだ。
ここまでくると、昨日の私はいなくなったかのように、分量を測り材料の下準備をしていた。自ら動いたことが久しぶりだったように思う。

明日が楽しみになったようだ。

起床。よし、今日も元気だ。これでチーズケーキが作れるぞ。
やった!と思えた。楽しそうだった。楽しそうな自分が少しうれしかった。

パウンド型一台分。
半分に切ったアメリカンチェリーの側面が見えるよう慎重に配置。

贅沢に純生クリームとクリームチーズをいれ少しレモンの香りを引き立たせたケーキ生地を流して。あ、こして滑らかにね。

空気をしっかり抜いて、アーモンドプードルの香りを効かせたお手製クランブルを載せる。

170度のオーブンで40分焼成。いってらっしゃい。

おかえりなさい。おおお。クランブルがカリッとアーモンドに生まれ変わったかのような綺麗なブラウンに色づいている。
しかし、出来てすぐに浮かれてはいけない。ケーキクーラーに移して粗熱をしっかりとる。その後、冷蔵庫でおやすみなさい。チーズケーキの身がぎゅっとしまってくれる。

クランブルは初めて作ったし、配分も様子見ながら作ったから少し気にはなるけれど意外と様にはなってくれた模様。
タルトのブリゼ生地とか粉とバターを合わせる製法で作ったりしたことあったから、経験で乗り越えたと信じたい。

途中で私何やってるんだろうと泣き始める状態になってしまったから、あんたは今その考え良いからと母に言われた。こくん、こくんと頷いた。そう思うことにする。

せめて、明日ケーキを食べる為に生きたい。

おはよう、今日は授業の日だったけれど受けられなかった。
もうものすごくテンションが下がった。授業の時間が戻ってくるはずはないのだからテンションを下げていても仕方がない。
違う日に委ねよう。

さて、昨日のケーキを食べる事にしようと思う。
冷蔵庫から取り出し様子を見てみると。クランブルがしけてしまっているようだ。
そうか...冷蔵庫でどうしてもチーズケーキの水分を吸ってしまうのか。失敗こそ勉強である。
切ってみると、しっかりアメリカンチェリーが見えた。が。
これも配置する方法を考え直した方が良かった。型の側面に張り付けるよりも切り口に見えたほうが可愛い事に気づいた。
想像だけでは成立しない時もある。次に一歩前進だ。


それでは、いざ実食。

これは。チーズケーキのこってりさをアメリカンチェリーが上手に抑えている。一口噛むと甘い滑らかな口当たりが襲い、
「おおおザ・甘さ!!」と身体が答えそうになる。そこでアメチェがじゅわっと。さわやかなのである。

重たいケーキなのに、また手が進む。チーズケーキのサポートをアメチェが担っている。するっと食べれちゃう黄金比だ。
クランブルもアーモンドプードルが多めであったおかげで軽く、香り高い。すこしサクッとした部分も味わえた。

なめらかでさわやかで香ばしい。
もう目の前にはいなくなっていた。まるで風のように胃袋に去って行ってしまった。儚い。またおいで、大歓迎よと手招きしたくなるケーキだった。
チーズクリームとチーズサブレのアメチェのパルフェとか。変化球でも食べてみたいと思った。




こんばんは、Mumです。
6月上旬ごろからずっと苦しみを感じています。
急上昇に急降下、急旋回するジェットコースタータイプの感情に抵抗もできません。
ですが、ずーっと落ちている姿で落ち込んでいる状況について書いているのも辛いんです。
辛い時の感情に価値はあるけれど、偶然見つけた人へ不快にさせる事もあると思ったからです。

少し気持ちを整理して、まずは薬をしっかり服薬して、ごはん食べて、深呼吸をして。
そんな感じでnoteに戻ってきました。

今日も生きていることに👏
私の好きなお菓子作りをやろうと気の向いた。そんな数日をお送りしました😌
楽しんで頂けたのであればうれしい限りです。

それではまたね~~👋

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