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ラブタームーラの魔法昆虫

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#連載小説

19.銀色のオカリナ

 3月ともなると、ラブタームーラに暖かい南風が吹くようになってきた。木の枝からは芽が吹き、クロッカスやチューリップが花を咲かせ始める。
 すっかり緑色になった三つ子山の1つ、三の山を、タンポポ団はテクテクと登っている最中だった。
「本当にあんのか、銀のオカリナなんて」先頭を歩く浩は、フウフウと息を切らせながら文句をぶつける。
「言い伝えによれば、この三の山のどこかにあるそうですよ」元之は、手帳に書

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18.大きなブルドッグ

 このところ、とんと魔法昆虫の情報がなかった。それこそ、噂話すら聞かない。何か手がかりはないかと、タンポポ団は博物館へと行ってみることにした。
 中に入ると、来館客の中心で展示物の説明をしている館長を見つける。
「あれはステゴサウルス、そしてこっちがトリケラトプス。ステゴサウルスは1億5千万年前のジュラ紀に生息した恐竜で、互い違いに並んだ骨版が、まるで背びれのようにあるのが特徴なんですな。いっぽう

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17.雪の降った朝

 午後から降り始めた雪は夜になってもやむ気配がなく、ますます勢いを増していた。
 大人達は憂鬱そうに顔を曇らせ、子供達は大はしゃぎ。
「こりゃあ積もるぞっ」浩が歓声を上げる。
「明日は雪合戦ね」いつになく美奈子もそわそわ興奮していた。
「一応、手袋はしてくるように。しもやけはあとが大変ですからね」合理的な元之は注意を忘れない。
「この白い粉みたいなのが雪?」緑は空を見上げながら言った。長い睫毛に、

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16.冬のセミ

 ラブタームーラにも木枯らしが吹き始めるようになってきた。
 そんなある日、緑が耳に手を当てながら言う。
「お姉ちゃん、セミが鳴いているよ」
「まさか。だって、もう12月なのよ。とっくのとうに土の下で、今頃はぐっすり眠ってるわ」
 けれど、言われてみれば、かすかにミーンミーンと聞こえていた。
「あれってセミじゃないの?」緑は小首を傾げながら美奈子の顔を仰ぐ。
「そうねえ、セミの声よね。誰かがテレビ

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15.見えない赤ちゃん

 元之には妹がいた。生後8ヶ月で、江美利という名である。元之は江美利が可愛くてたまらず、よく抱っこしては「あぶぶぶぅ」とあやした。
 江美利のほうも元之が大好きで、抱かれるとうれしそうにキャッキャとうれしそうに笑う。
 元之は面倒もよく見た。母親の代わりにオムツを交換したり、ミルクを飲ませたりするのも億劫がらずにする。
 もし浩や美奈子がそんな様子を見たら、元之の意外な一面にびっくり仰天するに違い

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14.和久の憂うつ

 そもそも魔法昆虫を捕まえるために結成したタンポポ団だった。このところ、そのことも忘れかけ、半ば探検隊として活動することが多い。

「今日は『岩神様の洞窟に入ってみようか」浩が言い出した。
「えー、バチが当たるよう」そう弱音を吐くのは和久である。タンポポ団の中で一番の臆病者で、いつもしんがりを務めていた。
「ばかね、神様なんいるわけないじゃん」美奈子はばかにしたようにいい下す。
「そうですよ、和久

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13.空の散歩

 ある日曜の朝、浩はなぜか早くに目が覚めてしまった。時計を見ると、まだ5時ちょっと過ぎ。
「もうちょっと眠っておこう」そうつぶやいて、毛布にくるまる。けれど目が冴えてしまい、まったく眠くないのだった。
 毛布をがばっとはねのけると、そのままベッドを下りる。もう、このまま起きてしまおう。
「朝の散歩もいいかもな。ちょっと、ほっつき歩いてくるか」両親は2人ともぐっすり眠っているらしく、家の中はしんと静

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12.化石掘り

 三つ子山を前にして、ラブタームーラ小学校の2年生達がずらっと整列している。居合わせているのは各担任、そして博物館の館長だった。
 美奈子達の担任の小倉先生が言う。
「いいですか、皆さん。これから皆さんには化石掘りをしてもらいます。ここには、まだまだたくさんの化石が埋まっています。もし、化石が出たら館長さんに見てもらいましょう。あなた方の化石が、博物館に並ぶかもしれませんよ」
 続いて、館長が簡単

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11.タイフウ

 長かった夏休みも終わり、ようやく学校が始まった。
「9月に入ったからといって、まだまだ暑い日が続きます。できるだけ日陰を歩いて登下校するようにしましょう」担任の小倉静子先生がそう注意をする。
 外では風がビュンビュンとうなり、葉や枝、そして木そのものを揺らしていた。
「すごい風だな。そういえば、今日はタイフウがくるって言ってたぞ」後ろの席で、浩がそうささやく。
「タイフウってどんなの?」和久が聞

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10.ダイヤモンドカマキリ

 背の高い2本のニレの木が、ざわざわと葉を揺らしながらおしゃべりをしていた。
「今日も暑いのう。雨でも降ればいいんじゃが」
「雨なら、先月までたんと降ったろう。わしはもう十分じゃよ」
「まあ、公園番が毎日水を撒きに来てくれるんで、だいぶ楽だがなあ」
「それに、暑い暑いと言っておっても、じきに秋が来て、すぐ冬だ。わしらの葉がきれいさっぱり抜け落ちるのも、そう遠くはないて」
 ここは2丁目にある中央公

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7.デパートの秘密

 今日も、タンポポ団はラブタームーラの町中を歩き回り、魔法昆虫の手がかりを探していた。
「被害が出る前に、なんとしても捕まえなくてはなりませんね」元之が言った。
「もう、どっかで何か起こってるかもしれねえぞ。おれ達が知らないだけで」浩はそう答える。
「いやだ、そんな恐ろしいこと言わないでよ」美奈子は虫取り網をギュッと握りしめた。魔法昆虫には、たいそう危険な魔法が備わっているのだ。
「館長からまだ連

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6.町外れの魔女

 久しぶりに倉又館長に呼ばれ、美奈子、浩、元之、和久、そして緑の5人は、博物館を訪れた。
 一同は応接間に通され、ケーキと紅茶を出される。
「館長、魔法昆虫のことで何かわかったんですか?」開口一番、美奈子が尋ねた。
「いやあ、そのことだがね」館長は紅茶をすすった。「相変わらず、マユに書かれた文字のことはわかっておらん」
「じゃあ、なぜわたし達を呼んだんです?」元之は首を傾げる。
「うむ、実はな、有

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