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経営戦略と人材戦略を連動した人事戦略を実現するための施策とは~人材アセスメントとビジネス・ドライバ®ーで経営層と現場を繋ぐ!

1.経営戦略とは

経営戦略は、企業の将来を見据えた計画であり、その重要性は計り知れません。戦略を立てる際には、市場の動向、競合他社の状況、自社の強みと弱みを総合的に分析することが求められます。このプロセスは、企業が目指す方向性を明確にし、人的資本経営を実現するための基盤を築きます。


例えば、市場分析では、消費者のニーズやトレンドを把握し、それに応じた製品やサービスを開発することが重要です。競合分析では、他社の製品や戦略を理解し、差別化を図ります。自社分析では、内部資源や能力を最大限に活用し、効率的な運営を目指します。

経営戦略の策定には、これらの分析に基づく論理的な思考が求められます。しかし、それだけではなく、創造性や革新性も重要です。市場の変化に迅速に対応し、新たな価値を創出することで、企業は競争優位を確立することができます。

このように、経営戦略は単なる計画ではなく、企業の未来を形作る重要なプロセスです。人事担当者にとっても、この戦略を理解し、それに基づいた人材育成や組織運営を行うことが、企業の成功に直結します。経営戦略は、企業の成長と発展のための羅針盤であり、その深い理解が求められます。

2.人材戦略とは

人材戦略は、企業の将来を見据え、持続的な成長を実現するための重要な要素です。この戦略の目的は、適切な人材を確保し、育成し、効果的に活用することにあります。企業の目標達成には、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の力を高めることが重要です。

人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素
出典:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~

経営陣が主導して策定・実行する、経営戦略と連動した人材戦略に
ついて、3 つの視点(Perspectives)と5 つの共通要素(Common Factors)
を、以下のとおり示した。

・人材戦略は、産業や企業より異なるものの、俯瞰してみると、3つの視点
が存在する。①「経営戦略と連動しているか」、②「目指すべきビジネスモ
デルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握で
きているか」、③「人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行
動変容を促し、企業文化として定着しているか」、という点である。

・また、人材戦略の具体的な内容について、5つの共通要素が抽出される。

・まず、①目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、多様な個
人が活躍する人材ポートフォリオを構築できているかという要素(「動的
な人材ポートフォリオ」)である。

・他方、人材ポートフォリオが構築できても、多様な個人ひとりひとりや、
チーム・組織が活性化されていなければ、生産性の向上やイノベーション
の創出にはつながらない。こうした観点から、
②個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのか(「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」)、
③目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく(「リスキル・学び直し」)、
④多様な個人が主体的、意欲的に取り組めているか(「社員エンゲージメン
ト」)といった要素も必要となる。

・そして、新型コロナウイルス感染症への対応の中で、更に明確になった要
素として、⑤「時間や場所にとらわれない働き方」が、追加される。

・企業においては、こうした共通の要素に加え、自社の経営戦略上重要な人
材アジェンダについて、経営戦略とのつながりを意識しながら、具体的な
戦略・アクション・KPIを考えることが有効である。

人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素
出典:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~

人材戦略を策定する際には、企業のビジョンと現状を深く理解することが出発点となります。その上で、必要な人材の資質やスキルを明確にし、それに基づいた採用活動を展開します。また、従業員のキャリアパスを考慮した教育・研修プログラムの充実も大切です。これにより、従業員が自己実現を図りながら、企業の成長に貢献する環境を整えることができます。

人材戦略は単に人材を管理するだけではなく、企業文化の醸成、従業員のエンゲージメントの向上、そして組織全体のパフォーマンスの最適化を目指すものです。人事担当者は、これらの要素を総合的に考慮し、戦略的に人材を育成し、配置することで、企業の持続的な成長を支える役割を担います。人材戦略は、変化するビジネス環境の中で企業が競争力を維持し、発展するための重要な要素であり、その深い理解と実践が求められます。

3.人的資本可視化指針における経営戦略と人材戦略を連動させるための施策とは

出典: 経済産業省事務局説明資料 (経営戦略と人材戦略)

従来の人材戦略は、自社人材の長期的な管理を前提としています。このアプローチは、従業員が企業に長く留まり、その間に企業固有の強みや特殊スキルを習得することを目指しています。新卒一括入社と連動した年次管理は、この戦略の特徴的な部分であり、従業員のキャリアパスを企業が長期にわたって計画し、管理することを可能にしていました。

また、従業員が公正な評価と機会を受けることにより、モチベーションの維持と組織への忠誠心が促進されます。さらに、企業固有の強みや特殊スキルの育成することで企業の独自価値を市場に提供し、他社との差別化を図ることもできました。

しかし、市場環境の変化とともに、より柔軟で革新的な人材戦略の必要性が高まっている現代においては、これらの伝統的なアプローチを見直し、新たな戦略への移行が求められています。

これからの人材戦略においては、経営戦略と人材戦略の連動で、企業の成長にとって極めて重要なことです。この連動を実現するためには、CHRO(最高人事責任者)とHRBP(人事ビジネスパートナー)の役割が鍵となります。CHROは経営層と密接に連携し、経営戦略に基づいた人材戦略を策定します。一方、HRBPはその戦略を具体的な人事施策に落とし込み、各部門と連携して実行に移す役割を担います。

CHROはCEOや他の経営陣との連携を通じて、経営戦略の方向性を深く理解し、それに沿った人材戦略を策定する必要があります。この過程で、企業の長期的なビジョンと現在の人材状況を照らし合わせ、必要な人材の資質やスキルを明確に定義します。また、HRBPは部門ごとのニーズを把握し、それに応じた人材の採用、育成、配置を行います。このように、CHROとHRBPが連携することで、経営戦略と人材戦略の一貫性と効果的な実行が可能となります。

🔶即応性と中長期の視点の両立

経営環境は常に変化しており、企業はその変化に迅速に対応する必要があります。そのためには、人材戦略においても即応性と中長期の視点を両立させることが求められます。即応性とは、市場や技術の変化に素早く対応し、必要な人材をタイムリーに確保する能力を指します。一方で、中長期の視点では、将来のビジネス展開や技術革新を見据えた人材の育成やリスキル(再スキル化)が重要となります。

この両立を実現するためには、経営層と人事部門が緊密に連携し、市場の動向や技術の進展を常に監視し、それに基づいた柔軟な人材計画を策定することが必要です。短期的なニーズに対応しつつも、将来にわたって企業の競争力を支える人材を育成するための戦略的な視点が求められます。

🔶事業環境・経営戦略との連動

経営戦略と人材戦略の連動は、事業環境の変化を敏感に捉え、それに応じた戦略の修正と実行が重要です。事業環境の変化には、市場の動向、競合の戦略、技術革新などが含まれます。これらの変化を踏まえ、経営戦略を定期的に見直し、それに合わせて人材戦略も調整する必要があります。

例えば、新しい技術が登場した場合、その技術を活用するための専門スキルを持つ人材の確保や既存従業員のスキルアップが必要になります。また、市場のニーズが変化した場合は、それに対応するための新しいビジネスモデルを開発し、それを支える人材を育成することが求められます。このように、事業環境の変化に即応しつつ、経営戦略と人材戦略を連動させることが、企業の持続的な成長に寄与します。

🔶戦略に合わせた柔軟な人材・リソースの獲得

経営戦略に基づいた人材戦略を実行するためには、柔軟な人材・リソースの獲得が重要です。これは、変化するビジネス環境に対応するための多様なスキルと経験を持つ人材を確保することを意味します。このためには、従来の採用方法にとらわれず、多様な採用チャネルや手法を活用することが求められます。

例えば、フリーランスや契約社員、リモートワーカーなどの活用により、特定のプロジェクトや短期的なニーズに対応する柔軟な人材獲得が可能になります。また、グローバルな人材の採用や異業種からの人材獲得も視野に入れることで、新たな視点やスキルを企業にもたらすことができます。このように、戦略に合わせた柔軟な人材・リソースの獲得は、企業が変化に対応し、新たな価値を創造するために重要です。

🔶人材活用の個別最適化(採用・配置・リスキル等)

人材戦略の最終的な目標は、個々の従業員の能力を最大限に活用し、組織全体の成果を最適化することです。これを実現するためには、採用、配置、リスキル(スキル再構築)などの各プロセスを戦略的に管理する必要があります。採用では、企業の将来のビジョンに合致する人材を見極めることが重要です。配置では、従業員のスキルや適性を考慮し、最適なポジションに配することが求められます。また、リスキルにおいては、市場の変化や技術の進展に合わせて、従業員のスキルセットを更新し続けることが重要です。これには、定期的な研修プログラムの提供やキャリアパスの計画などが含まれます。個々の従業員の能力を最大限に引き出し、それを組織全体の成果に結びつけることで、企業は持続的な成長を達成することができます。

経営戦略と人材戦略の連動は、企業が競争力を維持し、成長を続けるために重要です。CHROとHRBPの役割の明確化、即応性と中長期の視点の両立、事業環境・経営戦略との連動、戦略に合わせた柔軟な人材・リソースの獲得、そして人材活用の個別最適化は、この連動を実現するための重要な要素です。これらの要素を組み合わせることで、企業は変化するビジネス環境に対応し、持続的な成長を達成することができます。

企業の成長は、適切な人材戦略によって大きく左右されます。経営戦略と人材戦略が連動することで、企業は市場の変化に迅速に対応し、新たな価値を創造することが可能になります。CHROとHRBPが協力し、経営層との連携を強化することで、企業の将来に向けた強固な基盤を築くことができるのです。

4.人事戦略とは

人事戦略は、企業の持続的な成長と競争力の源泉です。この戦略の核心は、適切な人材を確保し、育成し、適切な位置に配置することにあります。企業の目標達成には、従業員一人ひとりの能力とポテンシャルを最大限に引き出し、組織全体のシナジーを生み出すことが重要です。

人事戦略の策定においては、まず、企業のビジョンと現状を深く理解することがスタートポイントとなります。その上で、必要な人材の資質やスキルを明確に定義し、それに基づいた採用活動を展開します。また、従業員のキャリアパスを考慮した教育・研修プログラムの充実も重要です。これにより、従業員が自己実現を図りながら、企業の成長に貢献できる環境を整えることができます。

人事戦略は単に人材を管理するだけではなく、企業文化の醸成、従業員のエンゲージメントの向上、そして組織全体のパフォーマンスの最適化を目指すものです。人事担当者は、これらの要素を総合的に考慮し、戦略的に人材を育成し、配置することで、企業の持続的な成長を支える役割を担います。人事戦略は、変化するビジネス環境の中で企業が競争力を維持し、発展するための重要な要素であり、その深い理解と実践が求められます。

5.人的資本経営における経営戦略と人事戦略の連動の現状と人事戦略の策定ポイントについて

人的資本経営の人材戦略において、人材マネジメントの課題で「人事戦略が経営戦略に紐づいていない」という回答をした人が一番多く、3割を超える状況となっています。

出典:経済産業省 産業人材政策室 事務局説明資料 (経営戦略と人材戦略)

上記の調査データに踏まえて、まず人事部門の役割として、組織の現状を深く理解し、その上で経営戦略に沿った人材の育成と配置を行う必要があります。次に、現場の状況(As-is)を見て策定した人事戦略と、人的資本経営を目指す姿や理想(To-be)で策定した人事戦略の違いについて理解しましょう!

🔶ビジョンと経営方針策定

人事部門は現場の疲弊という現状(As-is)に注目し、労働時間の削減を次期の重点テーマに据えています。これに対し、経営ビジョンでは成果や職務の透明性の担保、グローバル化・DX化による競争力の確立といった、より挑戦的な理想(To-be)が掲げられています。このギャップを埋めるためには、人事部門がグローバル共通の評価コンピテンシー作成やジョブ型人事制度の構築や人事評価システムの導入といった、経営戦略と連動したテーマを掲げることが求められます。

🔶人事部門の目標設定

人事部門の目標設定でも経営戦略と人事戦略の間にギャップが顕著に生じることがあります。例えば、上場企業が経営層の後継者育成の目標に掲げる一方で、人事部門は若手の育成に焦点を当てることがあります。このような場合、人事部門は実務に集中するあまり、経営層への介入を避けがちです。

しかし、企業全体の強化を目指す上で、人事部門は上位層に対しても積極的に人材開発や組織変革の施策を講じる必要があります。このアプローチは、組織の持続的な成長と進化を促進するために、非常に重要な役割を果たします。

🔶人事施策において採用方針・人材要件の策定

経営戦略と人事施策がアラインメントされていないケースがよく散見されます。

例えば、中途採用の場面では、単に退職者の穴埋めとして総合職の人材を採用するのではなく、事業・ビジネスを展開にあたって、経営戦略と連動し、新規事業開発やイノベーションを生み出せる人材を採用することが重要です。これは、事業の成功を目指すべき将来像(To-be)に基づいた戦略的な人材採用と言えます。

6.事業戦略と人材戦略の連動を実現するためのフレームワークとは

マネジメントサービスセンターが提唱するビジネス・ドライバー®とは、経営幹部が戦略的・文化的優先事項を達成するために乗り越えなければならない主要な課題のことです。

ビジネス・ドライバー®は、今後2~4年の間に組織が重点を置く戦略的・文化的優先事項によって決まります。例えば、「プロセスイノベーションの推進」「ブランドの強化」「利益の拡大」「新規市場への参入」「ビジネスパラダイムの転換」などが挙げられます。組織にとって、ビジネス・ドライバー®を特定することは、短期および長期におけるリーダー人材を見極め、パフォーマンスと成長を促進させる人材戦略を実行するうえで、極めて重要です。

マネジメントサービスセンターは、ビジネス状況と必要とする人材および人事システムが確実に結びついた統合システムを作ることにより、組織が戦略を実行するのに有用な戦略的アプローチをとります。

7.経営戦略と人材戦略を連動した人事戦略を実現するために人材アセスメントの必要性とは

経営戦略と人材戦略を連動させる上で、人材アセスメントは重要な役割を担います。人材アセスメントとは、従業員の能力、スキル、潜在力を評価し、適切な位置づけを行うプロセスです。このプロセスを通じて、企業は各従業員の強みや改善点を把握し、それに基づいて人材戦略を策定することができます。

経営戦略が明確なビジョンと目標を設定する一方で、人材戦略はそのビジョンと目標を実現するための具体的な手段を提供します。人材アセスメントは、この二つの戦略を結びつける重要な橋渡し役となります。たとえば、企業が新しい市場に進出することを目指している場合、人材アセスメントを通じて、その市場に精通する人材や必要なスキルを持つ人材を特定し、適切な研修や配置を行うことが可能になります。

また、人材アセスメントは、従業員のモチベーションやキャリア開発にも寄与します。自身の能力やキャリアパスが明確になることで、従業員は自己実現の機会を見出し、より積極的に業務に取り組むようになります。これは、組織全体の生産性向上にもつながります。

このように、人材アセスメントは経営戦略と人材戦略の連動を実現するための重要なプロセスです。企業が目指すビジョンの実現に向けて、適切な人材を育成し、配置するためには、従業員一人ひとりの能力と潜在力を正確に評価し、活用することが必要です。この評価と活用のプロセスを通じて、企業は経営戦略に沿った効果的な人材戦略を展開することが非常に重要です。

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10.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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