古川蓮(OLD)

しがない詩人。つまりヒト。 短歌やってます。

古川蓮(OLD)

しがない詩人。つまりヒト。 短歌やってます。

最近の記事

Logical (短歌20首)

□ エモくなる、構造として愛されるようなイルミネーション このまま (音速で、いや光速で) 死者として生まれ変わったあのシャイボーイ 光という泡に包まれていたんだ わたしの恋だってネットミーム さいしょのステージに合うサイリウムを想像しているアルケミスト 114106 ほら、激情が形を帯びる 3470 この夏の性愛をいま抒情詩で歌う ざくろの甘さのようで 設定は高画質、高音質で美しさに耐え切れずシャットダウン 勇者として僕は眠ってるあいだにも戦う Tender

    • ReRecal

      ◇ 思い出の解像度が薄まるのを怖がりながら、なんとなく生きている感じがする。画像フォルダにはその時の断片だけあって振り返ることは許されているけど、時間は不可逆。完全なその時間は戻ってこない。 シークバーのように現実の時間は可視化できないし、栞を挟むように一旦停止はできないわけで、不完全である過去を愛すことを強制されている。 この間、遠距離になった彼女には小さい手紙を渡した。永遠に会えないわけでもないから一大イベントにしたくはなかったけれど、形を残さないと後悔する気がした

      • -273℃ (短歌20首)

        ∮ One chapter ざらざらとした夜だから皮の分厚い指の質感 複数の光/複数の思考を経て きみはチャイナドレスで来た ネトフリの契約が2月で切れる 恋人は1月に死んだ わたあめが雲に喩えられるくらい処女性で溢れていく東京 わたしの合図で鳥はいっせいに飛び立つ (西部劇みたいだと思いました) I still memorize your fairy tale ピアノが響く遺体安置所 理由はワインに溶けて、約束は毒として身体中に回った おむすびを食べたい お

        • 詩の温度

          □ 詩は殺すつもりで書かなきゃならない。対象ははっきりしないが、影のようなものを切るような感覚。 そして冷たくあるべきだ。わざとらしい温度を感じる詩はいらない。青い炎が燃えたぎるように、冷ややかな見た目から仄かな温度を生み出す。それが理想の詩だと思う。 □ 短歌には韻律がある。韻律はことばたちを冷ややかに目立たせる役割を担っている。「五七五七七」と韻律によって言葉が分けられるとき、意味をもった言葉たちが即座に数字として、リズムとして存在するようになる。その瞬間に抒情が

        Logical (短歌20首)

          Aoharu no uta

          青春はみんなが思っているより濁っているものだとおれは思う。 青春はいつも淡く描写される。二人きりのプール掃除での水のかけあい、屋上での時間、シーブリーズの蓋の交換 etc… 消えてしまいそうな儚さという意味での青春はおれたちの頭の中のイメージを出ない。いつしか物議を醸した「パターン化されたエモつまらない…」に通ずるなにかを感じる。実際に「パターン化された青春つまらない」という声はいまもどこかで高らかと上がっているだろう。 こうなったのは人々が恋愛にしか青春を見いだせなくな

          Hakuchumu

          ◾︎ ポエムを読むなんて営みをやっていると、文化というもののことを嫌ってほど考える。 ◾︎ セーラー服を着てプールサイドで女性同士がディープキスをしている映像が𝕏で流れてきた。これがアートならいつかリストカットなんかもアートになるのかなとか思った。そうなったなら、おれはポエムをやめると思う。 ◾︎ 「クロノスタシスって知ってる?」って聞かれたあとの返答を考えていたら一日が終わるくらい穏やかに過ごしたい。 ◾︎ クールってなんだろう? ◾︎ 数字が好き。熱がな

          Electoronic night (短歌20首)

          〇 電子の砂漠の中できみは、いつでも、ア・イ・シ・テ・ルで眠る ・ 急速に視聴回数が伸びてゆくアニメ そうしてこわれた青の 遠くに韻律を感じた イマジネーション・マイハートフル 夢で あなたのワンピースに血がついてカプセルに入っている愛よ、光よ 夜風 コカ・コーラの自販機の前であなたとぼくのやさしさのマター ゾオン系のきみのこと誤解してた ぼくのかたちに、ぐわってなってた Cookie Monstar 殺される直前の息の吸い方 (その殺し方) ぼくたちの未来

          Electoronic night (短歌20首)

          Metaphor/零° (短歌30首)

          ◇ <萌え萌えきゅん♡>と口ずさんだら強くなるぼくらの未来のロマンチスト エモーショナルなケミカル 真夜中の廃墟に佇むルイズ・フランソワーズ わたしたちのAirpodsの中だけで響く不快なシンセサイザー 殺すまでなんどもなんどもループするチワワの動画を見て自戒せよ きみはいま言葉に変えようとしている スロー再生で <冬の> <光の> 祈りは用量が守られていることを前提に Don't fly with coke マインドコントロールのあとは猫カフェできみと別れの

          Metaphor/零° (短歌30首)

          Antimatter rain

          ♡ ユーモラス、メカニカルだねって精神科は真っ直ぐ進んで左ですけどね。 Phisically 声はこだまして、美学というのは詩を書くことでしょうか?? #⃣ 木の葉が落ちたら燃やしてしまうことはおれの身勝手だし来世で罰してくれればいい。知恵熱が出ることもあるけど見逃してほしい。きみの手紙はいつまでも青い万年筆で書かれてることに意味があるしさ… <メーデーメーデー、血の味がした> 目の前がぼやけて、生まれ変わるまでに歩くであろう数千里がそこにある。おれがきみをト音記

          Antimatter rain

          破壊と再生(『Girl Queen』自評) 

          0.C.O.S.Aの往年の名曲『Girl Queen』にあるのは強い男の中で揺れる抒情の塊だった。畳みかけるようなマフィアネタのなかには、力強さが溢れ、ラッパーとしての、そして、男としての秩序すら感じる。ではなぜ、そんな強い男がひとりの少女に対して、弱々しくなくてはならないのかわたしにはわからなかった。弱さを見せる強さをわたしは知らなかった。 ただの少女が<あなた>だとして、わたしは<あなた>の抒情のかけらを集める。そのかけらが30個集まり、今回の連作、『Girl Quee

          破壊と再生(『Girl Queen』自評) 

          Girl Queen (短歌30首)

          ♰ ガールクイーン こうして壊されたきみの抒情のかけらを集め始める 不整脈から始まってく恋愛は ドラゴンムーヴ・ワンダーランド メイド服にライターで火をつけた 心は宝石に似ているといい なんとなく27で死ぬロックスターを夢見てた Blessed vibes <エアドロで送られてきたモナリザ> 抱きしめてほしい どこか遠くで すべてが灰となれと言った王様が金魚の美しさを知るまで I regard world as pain やっと生命線をなぞるのをやめた きみが

          Girl Queen (短歌30首)

          Tokyo (青松輝 『4』評)

          <あなた>と<わたし>がいて、そこに言葉がある。飽和した人混みの中で二人はもう一度出会う。歌集全体を通して多く登場する東京というモチーフはその必然性を引き立てるための一種のアンチテーゼとして機能しているように思える。 人の数だけ常識があり、思想があり、セカイがある。東京はそんな抱えきれないはずのセカイを孕んでいる。その中で<わたし>と<あなた>が言葉を交わすことの、顔を合わせることの必然性は二人だけの言葉によってだけ語られるのかもしれない。それは東京という舞台が孕んでいたその

          Tokyo (青松輝 『4』評)

          Rhythmic (短歌30首)

          〇 栞は読書の、シークバーはiphoneの、あなたのcigarは私だけの I can't give my account 触れられない傷が僕らにはつけられている 濡れたラムネ瓶の底に光る目 You are moved to tears 空に浮かぶオノマトペ すごく好きだった桜のような (リズムのような) 球体の憂鬱を見ても言葉にできない (存在しないから) シュプリーム・きみの舌の動きでさえも・グッチ・やさしくなぞれなかった マッチはこすれば火が付く メリーゴー

          Rhythmic (短歌30首)

          Civilization (短歌30首)

          ♢ 僕だけの きみのためだけの叙情詩が 全国ロードショーする 死んで ・ ピンサロ嬢にも春は来る やがて、コーラに溶けてく錠剤のように Zから始まる英単語みたいな ヒトが作っただけの神秘性 そよ風は生暖かさを運ぶだけ さみしいよ サイコキラーマシーン きっといまコインランドリーにいるよね 虹は僕からそっちに送るよ 夏祭りのあなたの動画 iphoneは海に沈めて 弱く なるから 紅のネイルが首筋を触る 一過性の/晩夏の/絶唱 絶対的なかみさまがいて靴紐を 左か

          Civilization (短歌30首)

          ロックスター (短歌26首)

          ♡ ポップコーン 君がコメディアンになる前から 好きだったんだけど知ってる? 「小学生がするルパン三世ごっこやん」 ってツッコミ 愛してしまう  きみと見た映画が金ローでやってる 夕立で濡れた軒先の犬 つま先の動きが見えて プリンアラモードみたいなポルノを感じた フォルテシモ きみの鼻筋をなぞりたい 日の夜はダリの絵画を匂わす 騎乗位のままでピアノに座ったら どんな音色になるか知りたい 冷えピタの代わりをしている車窓から 見えるホテル街の援助交際 「じゃあ僕

          ロックスター (短歌26首)

          短歌における具体→抽象

          最近の歌作において、偶像としての<きみ>は大きな役割を背負っている。顔も見えない<きみ>は歌全体の具体的な情景を想起させるように思えて、実は抽象性を示す。よく言えば普遍性だろうか? 一首目の歌は金ローでやっている映画は<きみ>と見たもので、軒先の犬は夕立で濡れているという二つの具体的な情景描写が並立しているという構造だ。韻律的に見ても、上の句と下の句に情報が一個づつあって整然とまとまっている。 しかし、一見関係のない二つの情報は孤独感という曖昧な雰囲気によって結びつく。金ロ

          短歌における具体→抽象