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映画「愛国の告白」―沈黙を破るPart2 イスラエル軍へのインタビュー

みなさんこんにちは。

連日ガザから悲惨な映像が届いています。
病院が攻撃され、たくさんの子どもや新生児まで殺されて・・・。
一体このような残虐なことをするイスラエル兵はどんな人間なのかと思ってしまいます。良心が痛まないのだろうかと。
また、私たちは自国の加害を告発できないのだろうか。


そんな疑問に答えてくれるドキュメンタリー映画を紹介します。


題名だけを聞くと日本の右翼の映画かと思いますが(笑)
映画の舞台はイスラエルの攻撃が続くパレスティナ。
監督は日本人の土井敏邦氏です。
昨年公開された映画ですが、今もういちど一部の映画館で公開されております。


2004年、パレスティナ人住民とユダヤ人入植者が隣接して暮らすヨルダン川西岸ヘブロン市で兵役に就いた元イスラエル軍兵士、ユダ・シャウールたちはNGO「沈黙を破る」を立ち上げました。

イスラエル軍の兵役期間に道徳心や倫理観を麻痺させ、それがやがてイスラエル社会のモラルを崩壊させるという危機感からの行動でした。

イスラエル兵士たちはパレスティナ住民たちへの占領軍となっており、生き死にを含めてとてつもない権力を行使しているのです。

そんな徴兵された兵士たちのなかには、軍のやることに違和感を持ったり、命令に従い良心が傷ついたりトラウマを負う人たちもいます。
そんな元兵士たちがグループを作り、当時の感想を吐露したり、軍やイスラエルに対して思うことや意見を伝える活動をしているのです。



土井敏邦監督は2005年から3年間にわたって「沈黙を破る」のメンバーを取材し、映画「沈黙を破る」を制作しました。(2009年)
今回の映画「愛国と告白―沈黙を破るPart2」は、2009年の映画の続編です。
2009年以後監督が撮影・記録を続けてきたヨルダン川西岸、ガザ地区の映像を織り交ぜながら「沈黙を破る」のスタッフ6人にインタビューした内容が中心です。


元イスラエル兵士の団体「沈黙を破る」は、イスラエルのネタニヤフ首相率いる政府とユダヤ人入植地団体など右派、極右勢力からの激しい非難・攻撃にさらされています。
そのきっかけは2014年夏、2000人を超える死者、数十万人が家屋を失うイスラエル軍の激しい空爆と地上侵攻による「ガザ攻撃」に関して、「沈黙を破る」のメンバーは、その攻撃の実態を従軍した将兵たちの証言を元にインターネットや証言集でイスラエルの内外に公開しました。
政府、メディア、そして右派勢力からは「裏切り者」「敵のスパイ」と糾弾され、言論による非難、攻撃だけでなく暴行など物理的な攻撃にもさらされました。


そこで今回の続編では新しいテーマが設定されています。
それは、『愛国』とは何かです。

自国の加害と真摯に向き合い、それを告発し、是正しようとすること、自国と国民がモラルを崩壊させてしまうことへの危機感から声を上げ行動を起こす行為は「祖国への裏切り」なのか。
むしろそれこそ真の「愛国」ではないのか。という問いかけです。


そしてこの問いかけは今の日本にもつながっています。
日本がかつて植民地の朝鮮半島で、あるいは満州や中国各地で、そしてアジア太平洋地域でどんなことをしてきたか、軍の命令で多くの兵士たちは、罪のない住民に対して略奪、暴行、殺害など残虐行為をしました。
その加害の事実を明らかにしようとすると、「非国民」「自虐史観」と攻撃してくる勢力がいます。

国家と社会から「裏切り者」と攻撃されても、ひるまず活動を続ける「沈黙を破る」のスタッフがどのように自分自身を支え信念を貫いているか、何が彼らを突き動かしているのかを知ることは私たち日本人にも気づきと勇気を与えてくれると思います。



『沈黙を破る』スタッフの言葉

ユダ・シャウール(NGO「沈黙を破る」創設者)

「『私たちだけの安全保障』という考えは機能しません。
億万長者が城を持っていたとします。その1m先に餓死寸前の数百の家族が住んでいたとしましょう。
その大金持ちは安全だと思いますか?
今の私たちは、安全保障が相互関係の概念だと知っています。隣の人が安全でなければ私も安全ではありません。」

「イスラエルの安全と安定を考えるとき、何百万人ものパレスティナ人の喉を踏みながらイスラエルの安全と安定と平和を得られると考えるなら、正気ではありません。
歴史上ありえなかったし、現在、機能すると信じる根拠はありません。」

「入植地建設を進める限り、私たちやパレスティナ人や世界に向かって、これは『安全保障』とは関係ない、『植民地プロジェクト』だと証明しているのです。
入植地で入植地プロジェクトを推し進めることは、占領だけではなく、基本的にイスラエル国家の『道徳的な正当性』を傷つけているのです。」

アヒヤ・シャッツ(渉外責任者)

「部隊の雰囲気は破壊的なもので暴力を行使したいのです。
ハンマーを持って外の世界を歩き回るときすぐに打つ釘を探すのです。
血に飢えた兵士になるのです。
それが『優秀な兵士』なのです。
モラル(倫理)の退廃です。
倫理的に間違っていることを正当化すると何が起こるのか?
『良心のゆがみ』です。」



アブネル・グバルヤフ(NGO「沈黙を破る」代表)

「『倫理的な軍事占領』などありえないということです。
この時代に軍が民間人を支配しているということ、それこそが残虐なのです。
だから問題は兵士個人にあるのではない。
占領の維持を決断した政府に責任があり、軍事占領の維持を決断したその政府を選んだイスラエル国民にもあるのです。」



ナダブ・ヴァイマン(副代表)

「兵役で私が得たものは『力の感覚』です。その力の感覚は『人間は違う』という幻想から起こるものです。
ある人は他の人より優れているというふうに。階級や人種や宗教・・・何であろうと構わないけど。違います。
私たちは同じ人間なのです。」



イド・エヴァンパズ(ツアー担当)

「責められるべきは国民としての自分です。
兵士としてやったことには、一国民として責任があるのです。
これが重要な点です。」



フリマ・ブビス

「誰かに1時間話をすれば、世界観が全く変わるというものではありません。
何年もかかる『種をまく』仕事です。
話をする人が一人であっても、その人の心に種をまくのです。」

「何百万人ものパレスティナ人には私たちが持つ基本的な権利がないことです。
それが私たちを突き動かしています。
ここは私の祖国です。
私自身がその一部を負わされている闘争なのです。
だからこの現実を変えることを世界中の人に呼びかけているのです。」




イスラエル国民の中にも自軍の行為が非人道的で間違っていると思って政府に抗議の声をあげる人たちがいるのは救いです。
世界のユダヤ人の中にもイスラエルの行為に反対の声を上げている人がいます。
かつてベトナム戦争に世界中の人が反対したように、イスラエルの蛮行に反対する声が世界中に広がるよう努力したいです!!



執筆者、ゆこりん

参考文献 
映画公式パンフレット

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