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好きなものの話。 演劇、戯曲、役者、本など。 第三舞台を愛し、関西の小劇場を愛し、フラ…

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好きなものの話。 演劇、戯曲、役者、本など。 第三舞台を愛し、関西の小劇場を愛し、フランツ・カフカを愛する人。

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少年社中25周年記念公演ファイナル「テンペスト」

少年社中25周年記念公演ファイナル「テンペスト」観劇。 社中久しぶりの大阪公演。 25周年おめでとうございます&大阪へおかえりなさい。 いやーなんとも社中らしいというか。観てるこっちがこっ恥ずかしくなるくらいの「ザ・演劇」でした。 こんな劇団、現実には存在しないよねえ……。 「演劇で人を幸せにしたい!」だの「俺のライバルはお前だけだ!」だの、今どき高校演劇でも言わないようなド直球な台詞のオンパレード。 そんな台詞を、こんな大劇場で、演技力も貫禄もそれなりにある手練の役者が

    • 蟹工船稽古初日

      こんなコメディーな蟹工船あるか?! ……と思わず呟いた久しぶりの観劇(アーカイブ配信)は、先日上演(?)された「蟹工船稽古初日」。 第三舞台の小須田康人さん、新感線の粟根まことさん、キャラメルボックス西川浩幸さん、板尾創路さんという役者陣に、惑星ピスタチオの腹筋善之介さんが作演出。 この豪華なメンツで面白くないわけがない。 いやーめちゃくちゃ笑いました。 稽古初日をそのまま見せる、というコンセプトですが、まあ要は「稽古初日」というテーマのエチュードですね。 役者が稽古場に

      • G2プロデュース「止まれない12人」

        先日入手したこれまた懐かしのDVD。 G2さんの「12人シリーズ」3作目の再演版。 制御不能になり時速800キロで暴走する新型新幹線「雷神号」に取り残された、12人の止まれない人たちの物語。 とりあえず役者全員キャラが濃い。 初演はほぼ大阪の役者さんだけだったらしいけど、再演では植本潤さんとか小須田康人さんとか猫ホテの池鉄さんなど東京の役者さんも参加。それでもキャストの半数くらいは大阪の役者さん。 仕事でちょうど異動がかかったタイミングで、年末に東京、年明けには福岡で2回観

        • 贋作・桜の森の満開の下(夢の遊眠社)92年

          80年代から90年代にかけて、第三舞台と並んで小劇場界を牽引した劇団、夢の遊眠社。 第三舞台にあんだけハマっておきながら、実は遊眠社の芝居は実はこの一本しか観たことがない。というか、観たくても遊眠社は映像がほとんど手に入らない…。 そんなわけで、私が唯一観たことのある遊眠社が、野田秀樹氏の代表作ともいわれる「贋作・桜の森の満開の下」。初演は89年で、私が持ってるのは92年版の再演版DVD。 ちなみに遊眠社が昔発売したのDVDプレミアボックスはヤフオクで20万近い値段がついてい

        少年社中25周年記念公演ファイナル「テンペスト」

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        • 舞台の話。
          17本
        • 本の話。
          5本

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          [日本劇作家協会]戯曲アーカイブ

          Twitterで話題になったのですでにご覧の人も多いと思うが、突然すごいサイトができてた。 [日本劇作家協会]戯曲アーカイブ https://playtextdigitalarchive.com 日本劇作家協会所属の劇作家たちが戯曲を無償公開してるサイト。上演には許可申請や使用料が必要だけど、読むのは無料。 新しいものから古いものまで結構幅広く収載されてて、戯曲マニアな私としては、テンション上がりすぎて昨日夜中の3時過ぎまであれこれ見てしまった。 ただ、つい最近お金出して

          [日本劇作家協会]戯曲アーカイブ

          モマの火星探検記(原作:毛利衛/少年社中)

          火星探査車が火星に着陸!のニュースで思い出した。 暮れに久しぶりに観た「モマの火星探検記」。 原作は宇宙飛行士・毛利衛さんの同名小説。 少年社中が3回にわたり舞台化。 原作は、近い将来、人類で初めて火星へ降り立った宇宙飛行士のモマが、子どもの頃の自分に向けて、自らの火星探検記を語って聞かせるという構成。この原作がまず面白い。 火星への往復だけで約1年、そして100日間の火星滞在。地球から遠く離れ、地球に残してきた家族に何かあっても帰ることもできない宇宙空間で共に暮らす仲間

          モマの火星探検記(原作:毛利衛/少年社中)

          LOST SEVEN(中島かずき/劇団☆新感線)

          新感線いちウェルメイド(だと私が勝手に思ってる)な作品。 99年、白雪姫をモチーフにした青山円形劇場のファミリー公演「リトルセブンの冒険」と対になる形で上演された新感線の本公演。 DVDは昔買った新感線20th century boxに入ってたのを久しぶりに観た。 戯曲はこないだ買ったのだけど、LOST SEVEN とリトルセブンが二本立てで収載されててお得感あり。 いやーもう、何がいいってタイトルがカッコいいよね。LOST SEVEN。しかし物語中に出てくる七人の名前は

          LOST SEVEN(中島かずき/劇団☆新感線)

          うちやまつり(深津篤史/桃園会)

          桃園会の深津篤史さんの代表作で、岸田戯曲賞受賞作。 いつだったか忘れたけど、精華小劇場で再演だか再々演だかを観劇した。戯曲は岸田戯曲賞受賞時に刊行された初演版。 不思議な戯曲としかいいようがない。一度読んだだけでは正直よく分からない。 明確なストーリーがあるわけではない。大きな事件も起こらない。ただ、散在するよく分からない会話を行き来するうちに、いつのまにか劇世界が構築されている不思議。 立て続けに二回読んだけど、二回ともぬるっとした読後感が残った。 きっとこれは上演されて

          うちやまつり(深津篤史/桃園会)

          朧の森に棲む鬼/劇団☆新感線(中島かずき)

          上演は2007年。市川染五郎×劇団新感線のコラボ作、いわゆる「いのうえ歌舞伎」の進化形。 これチケット取れなくてゲキ×シネで観たんだよなあ〜。 確かDVD持ってたはずなのに、探しても見つからなかった。 ゲキ×シネの販売DVDは大抵英語字幕付いてるのがありがたい(ほんとは日本語が欲しいけど…) 主人公のライはいっそ気持ちいいくらいの本物の悪党。舌は回るわ平気で他人を陥れるわ、幼なじみの弟分まで平気で盾にして斬り捨てるわ、改心とか情とか一切無く、最後の最後まで救いようのない悪

          朧の森に棲む鬼/劇団☆新感線(中島かずき)

          ミレナへの手紙(フランツ・カフカ)

          再入手したカフカ全集から、まずはミレナへの手紙・再読了。 カフカの二人目の恋人・ミレナに宛てた手紙集。フェリーツェへの手紙の1/4ほどだけど、それでも半端ない量ある。 とりあえず思ったこと。 ・「僕はやきもちは焼かない」の当てにならなさ半端ない  ・「手紙書いて欲しいわ〜、あ、これ独り言だから気にしないで」 ・筋金入りの仕事嫌いで、自分がいかに仕事やる気がないかを熱弁するカフカさん ・そのくせズル休みはできない律儀なカフカさん ・翻訳家のくせに手紙が迷子になるレベルで悪筆

          ミレナへの手紙(フランツ・カフカ)

          フランツ・カフカの話。

          暮れに不幸があり、20年ぶりに年越しを実家(ただし誰もいない)で過ごした。 昔は自分の部屋なんかなくかったので、納屋を勝手に自分の部屋がわりにしていたのだが、久しぶりに入ったら薄暗いし埃っぽいし、よくこんなところで本読んでたなあと思う。 そんなわけで、納屋から発掘したお宝。 カフカ全集。 久しぶりに読みたくて持って帰ってきた。 夫が「なに読んでるの」と聞くので「カフカ」と答えたら「あー村上春樹ね」と言われ、もう少しではっ倒すところだった。 カフカほど好き嫌いが分かれる作家

          フランツ・カフカの話。

          「その鉄塔に男達はいるという」土田英生(MONO)

          MONOの土田英生さんの戯曲。初演は1998年。OMS戯曲賞受賞作。2001年のOMSプロデュース公演での再演を経て、今年の春にMONOとして改訂再演。 戯曲は今年再演した際の上演台本。緊急事態宣言発令のタイミングギリギリでなんとか上演できたそうです。 2010年にEXILEのメンバーが上演したりして話題になりましたが、私が観たのは2008年の青山円形劇場のpnish版のみ。残念ながらMONOバージョンのオリジナルは観たことがありません。 pnish版は扉座の茅野イサムさん

          「その鉄塔に男達はいるという」土田英生(MONO)

          モダン・ホラー(84年・第三舞台)

          はやぶさ2の話をNHKクロ現で見ていたら、モダンホラーの世界を思い出してしまいました。 1984年上演。核戦争の果てに人が住めなくなってしまった地球から脱出し、M16という星を目指す宇宙船。しかし密航者ホタルの出現で、地球脱出計画は大きく狂い始める。 彼らの子孫が暮らす惑星は、「終わってしまった」人々がたどり着く場所。そこで人々は「神の雫」を求めてホタルを追い始める。 第三舞台の看板俳優・岩谷真哉さんを事故で失った後、最初の舞台。劇研総出といってもいいキャストで、とにかく

          モダン・ホラー(84年・第三舞台)

          デジャ・ヴュ/デジャ・ヴュ86(第三舞台)

          初演は83年のテント公演。86年の再演のDVDは第三舞台で一番古い完全な公演映像。戯曲は初演・再演ともに出版されている。 この初演で一気に劇評が載り、第三舞台がメジャーになった作品とも言われている。 しかしこの芝居、第三舞台の作品にしては珍しく、DVD観ても戯曲読んでも、ストーリーの構造や意味がなかなか理解できなかった。 特に分からなかったのが伊集院という人物。構成的には、主人公の秋田を中心に、北林と並んで物語の対軸となる位置にいるはずなのに、いったいどういう意図で描かれた

          デジャ・ヴュ/デジャ・ヴュ86(第三舞台)

          「天使」の向こう側

          こないだ「天使は瞳を閉じて」について暑苦しく語ったばかりなのだけど。 昨日、電車の中でぼーっと窓の外を見ていて突如、今までものすごく根本的な勘違いをしてたことに気がついた。 芝居の冒頭、街を見つけた二人の天使の 「受け持ちの天使がいるだろう」 「それがいないのよ!」 という会話。 このいなくなった「受け持ちの天使」はマスターなんだということにまず気がついた。 この街はもともと、天使時代のマスターの受け持ち区域だったのだ。そのマスターが人間になったため、この街にはせっかく人間

          「天使」の向こう側

          スティル・ライフ(池澤夏樹)

          1987年の芥川賞受賞作。これまたえらく古い小説引っ張り出してきたものだが、多分こないだ「東京原子核クラブ」を読んだせい。 原子核→核分裂→チェレンコフ放射→そーいやチェレンコフ光が見たくて水の入ったグラスをひたすら見つめてる、えらく気の長い人がいたな…という、多分本人にしかトレースできない謎連想で、ふと昔読んだこの小説を思い出した。 久しぶりに読んで、まず思ったのは内容云々より、理系の人が小説を書いたらこういう文章というか描写になるのかーという、ストーリーとはなんの関係も

          スティル・ライフ(池澤夏樹)