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贋作・桜の森の満開の下(夢の遊眠社)92年

80年代から90年代にかけて、第三舞台と並んで小劇場界を牽引した劇団、夢の遊眠社。
第三舞台にあんだけハマっておきながら、実は遊眠社の芝居は実はこの一本しか観たことがない。というか、観たくても遊眠社は映像がほとんど手に入らない…。
そんなわけで、私が唯一観たことのある遊眠社が、野田秀樹氏の代表作ともいわれる「贋作・桜の森の満開の下」。初演は89年で、私が持ってるのは92年版の再演版DVD。
ちなみに遊眠社が昔発売したのDVDプレミアボックスはヤフオクで20万近い値段がついていて、とてもじゃないが庶民には手が出せないシロモノです…。
それ考えると、第三舞台が劇団のかなり初期の頃から舞台の映像化に取り組んでくれてたのはファンとしてもありがたい限りですね。。。

久しぶりに観た感想はとりあえず、野田さんてほんとに坂口安吾好きなのね…。
タイトルの通り、坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」がモチーフになっている。といっても物語のベースは夜長姫で、「桜の…」の世界観に「夜長姫…」のストーリーを載せた感じ。
「桜の森の…」に限らず坂口安吾の小説自体がすごく演劇的というか、これを芝居にしたいと思った野田さんの気持ちはすごく分かるような気がする。

役者ではとりあえず毬谷友子さんの色気が凄い。初見ではもうそれしか印象に残らなかったレベルで凄い。この方はもう、当時から色気と狂気を演じたら無敵ですね。
そして羽場裕一さんが躍動している。この方も舞台の人なのだなあと改めて思いました。

大劇場でやってても、芝居自体は小劇場感あふれる、かなりエンタメ寄りの芝居。登場人物多いし賑やかだし、みんな無駄に身体能力高い(褒めてる)。
個人的には前半の鬼達のシーンが好き。
終盤に向けて狂っていく役者達の狂気も凄まじい。わけがわからないなりに納得させられてしまう。

そもそもなんで突然遊眠社の話が出てきたかというと、桜が満開だなあ……とかいうわけではなく。
昨日テレビのNG大賞的な番組で田山涼成さんが出てて、一緒に見てた家人に何気なく「田山涼成さんて、昔は夢の遊眠社っていう、凄まじい人気劇団の役者だったんだよ」と言ったら「まじで?おっさんなのに?」という謎コメントが。いや田山涼成さんだって40年前はもっと若かっただろうよ…とかなんとか言いながら、ちょろっとこのDVDを引っ張り出してきて映像を見たのだけど、ちょっとで終わるはずもなく、そのまま夜中の2時くらいまで観てしまったのでした。

一本の芝居だけで劇団を語ることは到底できないと思うけれど、第三舞台が役者を見せる芝居なのに対し、遊眠社は世界観を見せる芝居というイメージかなあ。
舞台芸術としてはどちらも凄いのだけど、単純に好みの問題で、私はやはり第三舞台のほうが好きだなあと、久しぶりに観てあらためて思った(15年くらい前に初見で観た時にも同じことを思ったので、人間の好みはそう簡単には変わらないらしい)。
あと、個人的に野田秀樹の声ってあまり好きじゃないので(ごめんなさい)、聞こえないとそこに気を取られずに観れるなあとか、戯曲片手にかなり失礼なことを思いながら観てました。

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