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各地を歩いています。ロングトレイルや国立公園など。

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  • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜

    九州自然歩道・五島エリアを歩いた記録です。

  • 国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜

    国東半島峯道ロングトレイルを歩いた記録です。

記事一覧

阿蘇の山を歩く

阿蘇五岳の2峰、高岳と中岳を歩いた。 かつて九州に住む友人をたずねた際に連れられて訪れたとき、阿蘇の地は壮大で個性的な景観をもって僕を迎えてくれた。視界いっぱい…

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11か月前
5

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (8/8)

14日目(頭ヶ島→有川)頭ヶ島 蛤浜のキャンプ場で朝を迎えた。この日はまずバスに乗って頭ヶ島まで行き、そこから海岸沿いを歩いて有川まで戻ってくる予定だ。五島の九…

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11か月前
6

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (7/8)

12日目(野崎島)野崎島へ 強い風が夜どおし小さなテントを揺らしていた。夜が明けると早々にテントを撤収し、蛤浜のキャンプ場を発って有川港へ向かう。風は少し落ち着…

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11か月前
4

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (6/8)

9日目(龍観山→青方)白魚〜三日浦 あたりが白むころにはもう鳥たちの大合唱である。目を覚ますのにこれ以上の音楽があるだろうか。美しく響き渡るウグイスやオオルリた…

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11か月前
5

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (5/8)

7日目(奈留島港→江上→城岳)奈留島 福江からの便に乗って奈留島に上陸したのは10時過ぎだった。空はよく晴れて、まだ5月の半ばなのに暑いぐらいの陽気だ。 奈留島…

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1年前
6

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (4/8)

6日目(田ノ浦→五輪→田ノ浦)久賀島 福江港から久賀島の田ノ浦までは約20分の航行だ。小さな船で、乗客はまばらだった。この日は久賀島を横断する道を往還し、また田…

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1年前
7

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (3/8)

4日目(柏崎→魚津ヶ崎)椿の防風林 空が白むと早々にテントを撤収して歩き出した。空には少し雲がかかっている。 この日は三井楽の東海岸を南下し、その後魚津ヶ崎を目…

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1年前
14

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (2/8)

2日目(富江→荒川)高岳 この日もよく晴れていた。前日に南下してきた道をしばらく戻り、田尾という田園集落のあたりで北西に折れて内陸へ入ってゆく。 高岳という小さ…

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1年前
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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (1/8)

福江島へ フェリーが大きく揺れた。同航路のジェット船が時化で運休になったためか、カーペット敷きの二等客室は足の踏み場もないほどに混み合っていた。 5月の連休最終…

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1年前
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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (6/6)

6日目(梅園の里〜両子寺) 最後の朝 最終日である。空はよく晴れていた。 梅園の里の本館の裏手から林道へと入ってゆく。杉林の中で一部がクヌギである。クヌギ林には…

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1年前
7

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (5/6)

5日目(行入ダム公園〜梅園の里) 再びトレイルへ 朝7時、呼んでおいたタクシーが宿の前についた。宿の主人に礼を言い、別れを告げる。昨日夕暮れの中を2時間以上かけ…

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1年前
8

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (4/6)

4日目(国見温泉 渓泉〜行入ダム公園) 計画変更 翌朝も雨が降っていた。この日は当初の予定を大幅に変更することにした。K1コースの残り半分とK2コースの全てをス…

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1年前
6

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (3/6)

3日目(真玉温泉 山翆荘〜国見温泉 渓泉) 空はこの日も雲に覆われていた。雨になるかもしれない。昨晩はしっかり休息できた。温泉は足のマメに激痛をもたらしたが、それ…

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1年前
7

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (2/6)

旅の計画 話を2日目に進める前に、この旅の計画とトレイルのルールについて少し触れておきたい。 国東半島峯道ロングトレイルは先に述べたとおり、半島の西側に位置する…

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1年前
9

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (1/6)

「わたしも昔、峯入り歩いたんよ」 と、熊野磨崖仏の下で出会ったご婦人は言った。国東半島を縦横にめぐる山岳修業の道、約150㎞を歩き切ったのだという。次の機会があ…

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1年前
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阿蘇の山を歩く

阿蘇の山を歩く

阿蘇五岳の2峰、高岳と中岳を歩いた。

かつて九州に住む友人をたずねた際に連れられて訪れたとき、阿蘇の地は壮大で個性的な景観をもって僕を迎えてくれた。視界いっぱいに広がる青々とした草原。火口から絶えることなくわき上がる白煙。

その時は車で行ける範囲の、ほんの少しの滞在だった。この山域の核心部をいちどゆっくり歩いてみたい、という小さな憧れを抱いたまま、気がつけばもう7年が過ぎていた。

阿蘇といえ

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (8/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (8/8)

14日目(頭ヶ島→有川)頭ヶ島

蛤浜のキャンプ場で朝を迎えた。この日はまずバスに乗って頭ヶ島まで行き、そこから海岸沿いを歩いて有川まで戻ってくる予定だ。五島の九州自然歩道の旅はこれで終りとなる。

頭ヶ島は中通島の東端の北に浮かぶ小さな島で、中通島とは橋で繋がっている。長らく病人の療養にしか使われない未開地だった(死者の埋葬地だったという説もある)が、江戸の末期、前田儀太夫という人物が中心とな

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (7/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (7/8)

12日目(野崎島)野崎島へ

強い風が夜どおし小さなテントを揺らしていた。夜が明けると早々にテントを撤収し、蛤浜のキャンプ場を発って有川港へ向かう。風は少し落ち着いたものの、空は低い雲が覆っていてすっきりしない。

この日は有川から小値賀島ゆきの船に乗り、そこから野崎島に渡る。

船は有川港を出ると30分あまりで小値賀港に着く。下船すると、船着き場で船を待っていた一団のなかに見知った顔を見つけた。

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (6/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (6/8)

9日目(龍観山→青方)白魚〜三日浦

あたりが白むころにはもう鳥たちの大合唱である。目を覚ますのにこれ以上の音楽があるだろうか。美しく響き渡るウグイスやオオルリたちの歌声は、空間を切り裂くように鋭く、力強く、優しく、そして全てが完璧に調和している。どんな才能ある人間が奏でる音楽だって、この自然界のアーティストたちのパフォーマンスには敵わないだろう。

テントの外に出るとあたりには朝の霧に包まれてい

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (5/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (5/8)

7日目(奈留島港→江上→城岳)奈留島

福江からの便に乗って奈留島に上陸したのは10時過ぎだった。空はよく晴れて、まだ5月の半ばなのに暑いぐらいの陽気だ。

奈留島は久賀島の東隣に浮かぶ、五島市に属する島だ。

この日は島をほぼ周回して、夜は宮の森総合公園のキャンプ場に泊まるつもりだった。が、定休日だということに前日に気がついた。相変わらず計画が雑である。しかたがないので城岳の展望台あたりで野宿し

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (4/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (4/8)

6日目(田ノ浦→五輪→田ノ浦)久賀島

福江港から久賀島の田ノ浦までは約20分の航行だ。小さな船で、乗客はまばらだった。この日は久賀島を横断する道を往還し、また田ノ浦から福江へ戻る予定だ。

船着き場では数名の島民が船を待っていた。上陸して周囲を眺めてみる。海岸線の景観が素晴らしい。すっきりと晴れた空に負けないほどに海は青く、海岸に迫る照葉樹林の力強い緑も美しい。道端にはやはりノアザミが紫の花を咲

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (3/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (3/8)

4日目(柏崎→魚津ヶ崎)椿の防風林

空が白むと早々にテントを撤収して歩き出した。空には少し雲がかかっている。

この日は三井楽の東海岸を南下し、その後魚津ヶ崎を目指して東進する。

柏崎を出るとまずは南へ進む。緩やかな傾斜を上ってゆくと、やがて椿の防風林に入る。

林の中には目をみはる巨木がいくつかあり、「聖母の椿」とか「いつくしみの椿」とか「よりそいの椿」などといった名前がつけられている。

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (2/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (2/8)

2日目(富江→荒川)高岳

この日もよく晴れていた。前日に南下してきた道をしばらく戻り、田尾という田園集落のあたりで北西に折れて内陸へ入ってゆく。

高岳という小さな山を経由して繁敷という集落へ抜けるのだが、その途中でゆく道を誤った。右方向に鋭角に切り返して山頂方向へと進む小径を見逃して、そのまま直進してしまった。

進むにつれて道は次第に草が生い茂り、倒木が連続し、やがて径の判別がつかなくなった

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五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (1/8)

五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (1/8)

福江島へ

フェリーが大きく揺れた。同航路のジェット船が時化で運休になったためか、カーペット敷きの二等客室は足の踏み場もないほどに混み合っていた。

5月の連休最終日で、休暇を島外で過ごした人たちの帰島ラッシュのようだった。泣き出した赤ん坊を、母親や親切な他の乗客らがあやしていた。

もう一度船体が大きく揺れた。徐行航行とするために到着が遅れる、といった旨のアナウンスが入った。船はしかし、夜の8時

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (6/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (6/6)

6日目(梅園の里〜両子寺)

最後の朝

最終日である。空はよく晴れていた。

梅園の里の本館の裏手から林道へと入ってゆく。杉林の中で一部がクヌギである。クヌギ林には鹿の食害を防ぐためにネットが張られている。トレイルをゆく者はそのネットを開閉して進む。

道標を見失った。伐採後か崩れた後か、地肌がむき出しになっているところに入り込んだ。細い切り株が沢山あるからおそらく皆伐したのだろう。林との境界線

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (5/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (5/6)

5日目(行入ダム公園〜梅園の里)

再びトレイルへ

朝7時、呼んでおいたタクシーが宿の前についた。宿の主人に礼を言い、別れを告げる。昨日夕暮れの中を2時間以上かけて歩き下った道を、タクシーはあっという間に駆け上ってゆく。

運転手によると、峯道トレイルを歩く客はたまに乗せるという。朝にある地点まで送ると、夕方にどこそこまで迎えに来てくれ、という感じらしい。やはりタクシーを使ってセクションハイクす

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (4/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (4/6)

4日目(国見温泉 渓泉〜行入ダム公園)

計画変更

翌朝も雨が降っていた。この日は当初の予定を大幅に変更することにした。K1コースの残り半分とK2コースの全てをスキップして、ここから県道を歩いてK3の成佛寺に接続する。

当初の計画ではこの日は険しい山道を約28㎞歩き、しかも市街へ下るバスに午後5時過ぎに乗らなければならない。足の痛みが無かったとしても、元々無理がある計画だった。

五辻不動、岩

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (3/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (3/6)

3日目(真玉温泉 山翆荘〜国見温泉 渓泉)
空はこの日も雲に覆われていた。雨になるかもしれない。昨晩はしっかり休息できた。温泉は足のマメに激痛をもたらしたが、それでも疲れた体には心地よかった。朝食も、宿のスタッフの温かいもてなしも、歩く活力を与えてくれる。

猪群山

トレイルは真玉川に沿って更に西へ進み、やがて右に折れて、北側の山道に入っていく。山の名を猪群山という。麓ちかくでは椿が咲いている。

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (2/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (2/6)

旅の計画
話を2日目に進める前に、この旅の計画とトレイルのルールについて少し触れておきたい。

国東半島峯道ロングトレイルは先に述べたとおり、半島の西側に位置する豊後高田市に属するT1〜4と、東側の国東市に属するK1〜6の全10コースからなる。各コースはそれぞれ12㎞前後で、六郷満山の史跡や自然景観の見どころを巡る。総延長は123㎞である。

今回このトレイルを6日間でスルーハイクする計画を立て

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国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (1/6)

国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (1/6)

「わたしも昔、峯入り歩いたんよ」

と、熊野磨崖仏の下で出会ったご婦人は言った。国東半島を縦横にめぐる山岳修業の道、約150㎞を歩き切ったのだという。次の機会があったらまたチャレンジするかと尋ねると、もう年だからねぇ、と笑いながらかぶりを振った。

令和5年の春、ぼくは「国東半島峯道ロングトレイル」を歩いた。国東の地に古くから伝わる六郷満山峯入行のルートをベースに整備された、総延長123㎞の長距離

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