Moose

各地を歩いています。ロングトレイルや国立公園など。

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各地を歩いています。ロングトレイルや国立公園など。

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  • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜

    九州自然歩道・五島エリアを歩いた記録です。

  • 国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜

    国東半島峯道ロングトレイルを歩いた記録です。

最近の記事

阿蘇の山を歩く

阿蘇五岳の2峰、高岳と中岳を歩いた。 かつて九州に住む友人をたずねた際に連れられて訪れたとき、阿蘇の地は壮大で個性的な景観をもって僕を迎えてくれた。視界いっぱいに広がる青々とした草原。火口から絶えることなくわき上がる白煙。 その時は車で行ける範囲の、ほんの少しの滞在だった。この山域の核心部をいちどゆっくり歩いてみたい、という小さな憧れを抱いたまま、気がつけばもう7年が過ぎていた。 阿蘇といえば日本人なら誰もがその名を知る山だが、概要を少し述べておく。 熊本県の北部に位

    • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (8/8)

      14日目(頭ヶ島→有川)頭ヶ島 蛤浜のキャンプ場で朝を迎えた。この日はまずバスに乗って頭ヶ島まで行き、そこから海岸沿いを歩いて有川まで戻ってくる予定だ。五島の九州自然歩道の旅はこれで終りとなる。 頭ヶ島は中通島の東端の北に浮かぶ小さな島で、中通島とは橋で繋がっている。長らく病人の療養にしか使われない未開地だった(死者の埋葬地だったという説もある)が、江戸の末期、前田儀太夫という人物が中心となってこれを開拓し、集落を形成したという。この時儀太夫に伴われたのは外海から移住し

      • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (7/8)

        12日目(野崎島)野崎島へ 強い風が夜どおし小さなテントを揺らしていた。夜が明けると早々にテントを撤収し、蛤浜のキャンプ場を発って有川港へ向かう。風は少し落ち着いたものの、空は低い雲が覆っていてすっきりしない。 この日は有川から小値賀島ゆきの船に乗り、そこから野崎島に渡る。 船は有川港を出ると30分あまりで小値賀港に着く。下船すると、船着き場で船を待っていた一団のなかに見知った顔を見つけた。 「おっ、やっぱり来ましたね!」 と彼は嬉しそうに言った。奈良尾で別れたあの

        • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (6/8)

          9日目(龍観山→青方)白魚〜三日浦 あたりが白むころにはもう鳥たちの大合唱である。目を覚ますのにこれ以上の音楽があるだろうか。美しく響き渡るウグイスやオオルリたちの歌声は、空間を切り裂くように鋭く、力強く、優しく、そして全てが完璧に調和している。どんな才能ある人間が奏でる音楽だって、この自然界のアーティストたちのパフォーマンスには敵わないだろう。 テントの外に出るとあたりには朝の霧に包まれていた。 この日は前日に来た道をしばらく戻り、中通島を北上して島の中心部を目指す。

        阿蘇の山を歩く

        • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (8/8)

        • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (7/8)

        • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (6/8)

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        • 五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜
          8本
        • 国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜
          6本

        記事

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (5/8)

          7日目(奈留島港→江上→城岳)奈留島 福江からの便に乗って奈留島に上陸したのは10時過ぎだった。空はよく晴れて、まだ5月の半ばなのに暑いぐらいの陽気だ。 奈留島は久賀島の東隣に浮かぶ、五島市に属する島だ。 この日は島をほぼ周回して、夜は宮の森総合公園のキャンプ場に泊まるつもりだった。が、定休日だということに前日に気がついた。相変わらず計画が雑である。しかたがないので城岳の展望台あたりで野宿しようと決め込んでいた。 船を降りると、静かな漁業集落の中を海岸線に沿って北西へ

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (5/8)

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (4/8)

          6日目(田ノ浦→五輪→田ノ浦)久賀島 福江港から久賀島の田ノ浦までは約20分の航行だ。小さな船で、乗客はまばらだった。この日は久賀島を横断する道を往還し、また田ノ浦から福江へ戻る予定だ。 船着き場では数名の島民が船を待っていた。上陸して周囲を眺めてみる。海岸線の景観が素晴らしい。すっきりと晴れた空に負けないほどに海は青く、海岸に迫る照葉樹林の力強い緑も美しい。道端にはやはりノアザミが紫の花を咲かせている。 久賀島は福江島の北東に位置する、面積約37㎞²の小さな島だ。北に

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (4/8)

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (3/8)

          4日目(柏崎→魚津ヶ崎)椿の防風林 空が白むと早々にテントを撤収して歩き出した。空には少し雲がかかっている。 この日は三井楽の東海岸を南下し、その後魚津ヶ崎を目指して東進する。 柏崎を出るとまずは南へ進む。緩やかな傾斜を上ってゆくと、やがて椿の防風林に入る。 林の中には目をみはる巨木がいくつかあり、「聖母の椿」とか「いつくしみの椿」とか「よりそいの椿」などといった名前がつけられている。 大村藩の外海地区から渡ってきた移民たちは、五島各地の未開地を開墾し集落を形成した

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (3/8)

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (2/8)

          2日目(富江→荒川)高岳 この日もよく晴れていた。前日に南下してきた道をしばらく戻り、田尾という田園集落のあたりで北西に折れて内陸へ入ってゆく。 高岳という小さな山を経由して繁敷という集落へ抜けるのだが、その途中でゆく道を誤った。右方向に鋭角に切り返して山頂方向へと進む小径を見逃して、そのまま直進してしまった。 進むにつれて道は次第に草が生い茂り、倒木が連続し、やがて径の判別がつかなくなった。結局30分ほど行ったところで進めなくなった。 九州自然歩道において、各地がど

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (2/8)

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (1/8)

          福江島へ フェリーが大きく揺れた。同航路のジェット船が時化で運休になったためか、カーペット敷きの二等客室は足の踏み場もないほどに混み合っていた。 5月の連休最終日で、休暇を島外で過ごした人たちの帰島ラッシュのようだった。泣き出した赤ん坊を、母親や親切な他の乗客らがあやしていた。 もう一度船体が大きく揺れた。徐行航行とするために到着が遅れる、といった旨のアナウンスが入った。船はしかし、夜の8時、ほぼ定刻どおりに福江港に着いた。 五島の旅 翌日の福江は、前日の荒天とは一

          五島列島のみち 〜九州自然歩道・五島エリア〜 (1/8)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (6/6)

          6日目(梅園の里〜両子寺) 最後の朝 最終日である。空はよく晴れていた。 梅園の里の本館の裏手から林道へと入ってゆく。杉林の中で一部がクヌギである。クヌギ林には鹿の食害を防ぐためにネットが張られている。トレイルをゆく者はそのネットを開閉して進む。 道標を見失った。伐採後か崩れた後か、地肌がむき出しになっているところに入り込んだ。細い切り株が沢山あるからおそらく皆伐したのだろう。林との境界線の上に、林の断面が見えている。マッチ棒のような杉が、密集して垂直に整列している。

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (6/6)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (5/6)

          5日目(行入ダム公園〜梅園の里) 再びトレイルへ 朝7時、呼んでおいたタクシーが宿の前についた。宿の主人に礼を言い、別れを告げる。昨日夕暮れの中を2時間以上かけて歩き下った道を、タクシーはあっという間に駆け上ってゆく。 運転手によると、峯道トレイルを歩く客はたまに乗せるという。朝にある地点まで送ると、夕方にどこそこまで迎えに来てくれ、という感じらしい。やはりタクシーを使ってセクションハイクするのがこのトレイルの一番自然な利用方法だろう。 「怖くないんですか?」 と、

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (5/6)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (4/6)

          4日目(国見温泉 渓泉〜行入ダム公園) 計画変更 翌朝も雨が降っていた。この日は当初の予定を大幅に変更することにした。K1コースの残り半分とK2コースの全てをスキップして、ここから県道を歩いてK3の成佛寺に接続する。 当初の計画ではこの日は険しい山道を約28㎞歩き、しかも市街へ下るバスに午後5時過ぎに乗らなければならない。足の痛みが無かったとしても、元々無理がある計画だった。 五辻不動、岩戸寺、岩戸耶馬の岩稜、文殊仙寺など、トレイルの核心部分とも言えるエリアをスキップ

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (4/6)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (3/6)

          3日目(真玉温泉 山翆荘〜国見温泉 渓泉) 空はこの日も雲に覆われていた。雨になるかもしれない。昨晩はしっかり休息できた。温泉は足のマメに激痛をもたらしたが、それでも疲れた体には心地よかった。朝食も、宿のスタッフの温かいもてなしも、歩く活力を与えてくれる。 猪群山 トレイルは真玉川に沿って更に西へ進み、やがて右に折れて、北側の山道に入っていく。山の名を猪群山という。麓ちかくでは椿が咲いている。足元の枯れ葉を見るともみじが多く混じっている。紅葉の季節には綺麗であろう。森の中

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (3/6)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (2/6)

          旅の計画 話を2日目に進める前に、この旅の計画とトレイルのルールについて少し触れておきたい。 国東半島峯道ロングトレイルは先に述べたとおり、半島の西側に位置する豊後高田市に属するT1〜4と、東側の国東市に属するK1〜6の全10コースからなる。各コースはそれぞれ12㎞前後で、六郷満山の史跡や自然景観の見どころを巡る。総延長は123㎞である。 今回このトレイルを6日間でスルーハイクする計画を立てた。計画にあたり問題となったのが、どこで夜を過ごすかという点である。トレイルのル

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (2/6)

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (1/6)

          「わたしも昔、峯入り歩いたんよ」 と、熊野磨崖仏の下で出会ったご婦人は言った。国東半島を縦横にめぐる山岳修業の道、約150㎞を歩き切ったのだという。次の機会があったらまたチャレンジするかと尋ねると、もう年だからねぇ、と笑いながらかぶりを振った。 令和5年の春、ぼくは「国東半島峯道ロングトレイル」を歩いた。国東の地に古くから伝わる六郷満山峯入行のルートをベースに整備された、総延長123㎞の長距離トレイルである。トレイルは半島西側の豊後高田市に属するT1〜4と、東側の国東市に

          国東半島のみち 〜国東半島峯道ロングトレイル〜 (1/6)