見出し画像

理想的な保育環境を、保育士さんと協力して作る!今フランスで注目を浴びる、親が運営する保育園 crèche parentale n°1

これまでフランスの保育について、自治体の保育園アシスタント・マターネル(国家資格のあるシッターさん)、などいろいろとnoteを書いてきました。今回は、つーちゃんの今現在通っている、変わり種、crèche parentale です。

パリ市の保育園への不満があったわけではないよ。外国人の私たちに対しても分け隔てなく、むしろもっと気遣ってもらっていたし、おーちゃんも保育士さんが大好きで、できることなら同じ保育園に入れたいと思っていた。でも落ちてしまったので。

たまたま、おーちゃんの通っていた学校のすぐ近くに保育園があり、弟を通わせていた学校のお友だちのママさんに、紹介してもらうことになった。

crèche parentale (親の保育園)ってどんなところ?

運営してるのは誰?

これまでとまた違うカテゴリーの保育園で、crèche parentale(親の保育園)と呼ばれている。日本育ちの私には馴染みがなく、一風変わった奇妙な保育園に映った。自治体でもなく、保育園の持ち主、経営者がいるわけでもなく、管理運営している組織が、子どもを通わせている親たちの集まった非営利団体(アソシエーション)なのだ

アソシエーションは、フランスでは市民活動の一つとして認められ、不法な目的や利益を分配しないかぎり、自由に作ることができる。だから保育園の理念や規約も、その団体の会員(親)の合意があれば自由

ただ、保育園のように、国からの支援を必要とする場合は、届出を出さないといけない。そのため、自治体の保育園のような、厳しい規則(部屋の広さ、保育士さんや園児の人数、衛生面など) に従って、突然来るPMI(保健所みたいなところ) の視察に対応する必要もある。

保育園 としての機能する枠組みから外れなければ、あとの細かいことは親がすべて決めることができる!

近いから送り迎え楽だろうな、なんて軽い気持ちで申し込みをしたけど、いざ入ってみたら、自分の中にある“保育園"のイメージが次々と崩されていき、保育の可能性の広がりを感じて興奮した。

園長先生は存在しない!?

そう、園長先生はいない。もちろん副園長先生や、保育士さん以外の職員さんも。保育園を運営する組織がアソシエーション(親の団体)なので、執行部があり、子どもたちの親のなかから毎年それぞれ選出される。(と言っても、やる気のある人たちばかりなので、ほぼ立候補で決まってしまう)

執行部の役職には、

  • 会長 園の代表者。会議の議長。そして書類のサインもすべて会長の親。

  • 副会長 保育士さんと毎年面談し、研修や昇給の話し合いをしたり、病欠や有給を受け付けたり、さらにはインターンの募集などリクルートも担当する。

  • 秘書 会議の議事録作成、メールのやりとりなどな。

  • 財務担当 予算を立てたり、助成金の申請、保育料の徴収、税理士さんとのやりとりなど。

そのほかに委員会があり、会員全員が何かに所属している。執行部の理事会、そして保育士さんも含めた会員全員の総会が毎月それぞれ1回ずつある。会議では委員会の毎月の報告、個人で解決できない問題を話し合ったり、バカンスの期間を決めたり。3時間以上におよぶことも。

園児募集は親が担当する

申し込みをメールでしたとき返事をくれたのが、子どもをその保育園に通わせているママさんだった。保育園の職員さんだと思い込んでやり取りしていたら、あるとき保育園の前で、お迎えに来ているところにばったり会って、話しかけられた。

園児を募集して、説明会を開き、メールで質問のやりとり、受け入れの最終決定するのも、そのママさんが全部担当。だから紹介だとほぼ決まりで、1番最初に我が家に連絡を入れてくれていたみたい。
これは自治体の保育園と大きく違う。

保育士さん

上に書いたように、執行部が保育士さんを募集し、面接して、雇用する。親が保育の真似事をするわけではなく、もちろんその道のプロ、保育士さんが子どもたちのお世話をし、教育的なことはお願いしている。

調理師さんも同じ。メニューは調理師さんに一任されているけど、例えば使う食材はすべて有機農産物だけにしたり、最近では、テフロン加工の身体への影響を危惧して、調理器具をすべて買い替えたり。そういったことは、親の総会で決められている。

保育や食事など、専門的なことはプロに任せ、それ以外の雑務はすべて親が担当し、保育士さんたちをサポートする立場にいる。ボランティアで成り立つ非営利団体なので、毎週半日の保育当番や委員会への参加が必須で、必然的に保育園にいる時間も長くなる。

保育士さんと親の信頼関係は強く、密に連携し、子どもたちにより良い環境を作り上げていこうと、お互い協力する。それこそが、crèche parentaleの一番の醍醐味だと思う。

フランス全国で5000人の子どもが通っているので、200以上のcrèche parentale が存在していることになる。フランスではすでに保育の選択肢の一つとなっている。

つーちゃんの通う保育園に参加している親の職業は、学校の先生、テレワーク中心の仕事、そしてフリーランスが多く、カフェ経営や建築家、芸術家、中にはミュージシャン、モデルや舞台俳優など、芸能関係も少なくない。

社会貢献や自然環境に関心のある親たちから注目を浴び、フランスの市民活動の活発な国民性から生まれた、新しい保育のかたち。理想的だなと感じる反面、すべての親がこういった時間を取れるわけでもなく、日本で同じようにするにはなかなか難しそうで現実的ではないかもしれない。でも保育園に任せっきりではなく、何か一部でもボランティアで参加したいっていう人たちはいると思う。

長くなってしまったので、次回は、気になる保育料、保育当番や委員会などの親の役割、自治体保育園では体験できなかったことなどを詳しく書いていこうと思います。またぜひ見にきてください。

フランスの保育園や、教育環境について書いたnoteを集めています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?