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#159 スカスカでもいいんです『ハーフ・ノートのリー・コニッツ』

このアルバムが好きなのです。

客観的にみて、あまり優れたところがなさそうな演奏だけれども。

このアルバムは「発掘もの」の一つで、自慢じゃないけれど、僕はこれを新譜の時に買った。

#リー・コニッツ はすでに好きでしたし、 #ウォーン・マーシュ も好きだった。さらには #ビル・エヴァンス まで参加していると来たもんだ。正直、世紀の大発見だと思った(後年、この組み合わせはほかにアルバムがあることを知る。情報が乏しいというのも、ある意味幸せなことだなぁ)。

聞いてみてびっくり。一言で言うと、印象は「スカスカ」。

この「スカスカ」はどこから来るのか。リー・コニッツとウォーン・マーシュの禁欲的な演奏態度がまず一つ。まさに「沈黙か音か」といった二者択一。さらに音色的には「ふにゃふにゃ」と頼りなさげ。ウォーン・マーシュも同様。

でも、それよりもなによりも、ビル・エヴァンスが全く弾かないのだ。 #ジェリー・マリガン#セロニアス・モンク のアルバムの5倍は弾かない。これは「参加」と言ってしまうには詐欺に近いレベル。弾いてるときもあるがすごく自信なさげだ。

ライナーでは、コニッツが「ビルは僕たちの音楽に恐れをなして弾けなかったんだ」とか言っているけれど、本当かなぁ。

さらには、演奏空間もなんか寒々しい。ライブのはずなのに、客の歓声は全く聞こえない(演奏後にパラパラと拍手は入る)。客も困惑しているのか、客の入りが悪かったのか。これは、公開録音みたいなセッションだったような気がするけれど。

でも、繰り返すようにこの演奏が僕は大好きだ。

リー・コニッツもウォーン・マーシュも、酔拳の達人のように、予期せぬタイミングで、ふにゃふにゃとアドリブを繰り出してくる、それが心地いい。ライブだからか、かなりリラックスしているようにも見える。

リー・コニッツはスタジオ録音だとかなり「すごんで」いるのもあるが、こういった肩の力が抜けた彼が聴けるのは貴重だ。聞き手も眉間にしわなど寄せず、気軽に参加してみると良い。

いるんだか、いないんだかのビル・エヴァンスのおかげで、さらに空間的隙間が演出される。その中をストトンボンボンとベース( #ジミー・ギャリソン )とドラム( #ポール・モチアン )が律義に埋める。その、なんとも言えない空虚感も好きだ。

一般的に見て、完成度が低いからこそ、お蔵入りされていたのだろう。

けれど、最近は、完成度が低いいものや未完成なものの方に、惹かれる自分がいる。それは、詩人の試作や草稿に惹かれるのと同じ理由だ。ここには、加工される前の「生の声」がある。とても愛おしい。


1500円くらいなら「買い」です。

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