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大河ドラマから見る貨幣史

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大河ドラマからみる日本貨幣史外伝『比叡山の身分構造と覚恕様の立場』

延暦寺の記事は本当に閲覧数が伸びる……。

京都側からものぼる事が出来ますのでコロナが落ち着いたら皆さん是非もっと延暦寺へ行ってみてください。1000年以上も続いてきた聖地のあの雰囲気は、登る事でしか感じる事ができないですよ。

今回も延暦寺関係のネタです。まあ、日本の中世貨幣史・金融史を語る上では絶対に外せない存在なので仕方がないです。決して閲覧数のためではありません。

『麒麟がくる』の劇中で

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大河ドラマから見る日本貨幣史21『比叡山は三度も欲をかいて焼き討ちされている』

大河ドラマから見る日本貨幣史21『比叡山は三度も欲をかいて焼き討ちされている』

出版系のお仕事あるあるですが、年末進行が気が狂っている。とはいえ、一回目の佳境はとりあえず超えたのであとは、今週末から来る2回目の地獄に備えます。

さて、比叡山を焼き討ちしたことにより、ドラマ内では信長や明智家が不倶戴天の仏敵という扱いにされてしまいました。さらに言うなら、光秀も相当心を病んでいるご様子。ですが、延暦寺を焼いたのは信長が初めてではありません。実はそれ以前、延暦寺は武士との対立で二

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大河ドラマから見る日本貨幣史20『矢銭2万貫で大もうけした今井宗久と大損した信長』

大河ドラマから見る日本貨幣史20『矢銭2万貫で大もうけした今井宗久と大損した信長』

姉川の合戦を一週間で済ませ、いよいよ次回は延暦寺の焼き討ちへと入っていくわけですね……!しかし、三十二話『反撃の二百挺』で、今井宗久が開催した茶会の客人の大物っぷりが凄かったですね。千宗易(利休)・油屋常琢・津田宗及……堺の会合衆のトップがずらずらと並んでおりました。

駒ちゃんの浮きっぷりですよっw

堺の会合衆とは、堺の独立自治を主導する豪商からなる議会であることは、教科書などにも紹介されえて

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大河ドラマから見る日本貨幣史19『摂津晴門が大きな顔をしている理由は?』

大河ドラマから見る日本貨幣史19『摂津晴門が大きな顔をしている理由は?』

ついにドラマでは、明智光秀が足利・織田両属の家臣であった時代から、徐々に織田家臣へと移行していく転機となった『金ヶ崎の退き口』が描かれました。現状、信長を上手におだてることに成功している光秀を見ると、今後、本能寺の変のきっかけとなりそうな場面は宗教関係しかなさそうなのが気になりますね……。(史実では信長よりも光秀の方が圧倒的に仏教権威を弾圧しています)。

さて、光秀の幕府再興の夢をじわりじわりと

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大河ドラマから見る日本貨幣史18『戦国時代の金・銀貨』

大河ドラマから見る日本貨幣史18『戦国時代の金・銀貨』

謎の多い人物明智光秀。ですが、「麒麟がくる」第二十七回で描かれた時代から、実際の史料上に彼の名前は登場してきます。ちなみに越前時代の光秀は、医者であったという説が近年は強いようですね。(当時の光秀が医術に詳しかったといいう話を伝える手紙が発見されています。)

さてさて、第二十七回の冒頭、織田信長は足利義昭上洛に際して、金銀貨幣を1000貫文用意したと述べていました。

NHKの公式サイト htt

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大河ドラマから見る日本貨幣史17『欠銭と明』

大河ドラマから見る日本貨幣史17『欠銭と明』

しばらく、投稿をさぼっておりました。コロナ禍にあって、仕事が増えるのはいいことなのでしょうが、個人的にはここで自由に文章を書く時間が唯一の癒しなので本当に……。

さて、今回は欠銭のお話です。

劇中で三好一党が朝廷への献上金として用意した銭は質が悪いと近衛前久が愚痴るシーンがありました。あの時、前久が手にしていた銭は欠けてしまっていました。そう、ちょうどこんな風に。

このような銭を欠銭(かけぜ

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大河ドラマから見る日本貨幣史16『銭緡の使い方と誕生の経緯』

大河ドラマから見る日本貨幣史16『銭緡の使い方と誕生の経緯』

今週の放送で、いよいよ、光秀が織田家に仕えるようになるまでの物語が動き出しました。先週で武家の棟梁足り得ないと見捨てた義昭ですが、落ち着いて語らうことでその意見を改めたようですね。ただ、信長と光秀の、世を平らかにする手法の差もちらりと見えて今後の波乱も感じさせました。

さて、これまで大河ドラマ劇中の場面から、戦国時代のお金についてずっとnoteでは語ってきました。それは金や銀、あるいは銭の話が中

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大河ドラマから見る日本貨幣史15『戦国時代のお公家様』

大河ドラマから見る日本貨幣史15『戦国時代のお公家様』

第24話『将軍の器』は、今後の展開の要となる話でしたね。光秀は、平和な世を望むだけで「死にたくない」とのたまう覚慶を「次期将軍の器ではない」と見做したわけです。「戦えないが、平和を望む」「死にたくはない」ということ自体は、為政者として悪くないように思いますが、やはり光秀の中には古式ゆかしい武家の棟梁たる、理想の『将軍像』があることが垣間見える場面でした。

ドラマでこの後、信長のもとで義昭を奉じて

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大河ドラマから見る日本貨幣史14『室町幕府の困窮』

大河ドラマから見る日本貨幣史14『室町幕府の困窮』

麒麟がくる第23話「義輝、夏の終わりに」。現在は剣豪将軍として、異様な人気を誇る義輝の、侘しさ、無念さを描いた回でした。義輝という将軍にここまでスポットを当てたドラマは、よくよく考えると珍しいのではないでしょうか? アニメや漫画、パチンコなんかではありましたけれどね。

実際の義輝は、この時代もう少し若いのですが、まあ、それは置いておいて。何故、室町幕府はこれほどまでに弱体化したのかという話を。

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大河ドラマから見る日本貨幣史13『旅と関所』

大河ドラマから見る日本貨幣史13『旅と関所』

先週放送が再開されていることを忘れたので、今の再放送でみました。麒麟がくる第22話「京よりの使者」。

丁度、放送休止中と桶狭間語の十兵衛の浪人生活が、重なったようなつくりがして、ちょっと感慨深いものがありました。第2部開始のお話としてもよいスタートでしたね。足利義昭という今後のキーマンも登場し、しかも予想外のめっちゃいい人設定で今後が気になります。

我らが十兵衛は、越前(現在の福井県)から京へ

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大河ドラマから見る日本貨幣史12『甲陽軍鑑と甲斐』

大河ドラマから見る日本貨幣史12『甲陽軍鑑と甲斐』

『麒麟がくる』第21話、最新学説に則った行軍時間や天候の変遷、信長の戦略まで完璧に描写し、令和2年でもっとも新しい説を採用した桶狭間だったのではないでしょうか!!見ていてものすごく興奮しました!

ドラマ内では松平元康(徳川家康)が、桶狭間の合戦後に岡崎城に入ったとしか語られませんでしたが、あの後元康は、1年近く今川軍として信長と戦を繰り広げております。ですが、今川氏真が東の北条と北の武田防衛ばか

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大河ドラマから見る日本貨幣史11『米がなければ麦を食べる!』

第20回『家康への文』は、桶狭間前夜の織田・今川両勢力の思惑をうまく描いていて面白かったですね。気が付けば、信長の心を鷲掴みにしている十兵衛の描写もとてもよかったです。

ちなみに劇中で信長が「丸根砦に元康が仕掛けてきたら、火を放って撤退しろ」と命令していたのはうまい演出だなと思います。元康が裏切ると見越してそれがばれないようにするという信長なりの気遣いなのでしょう。

史実では元康は丸根砦を全力

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大河ドラマから見る日本貨幣史10『献上される鷹の値段とは?』

大河ドラマから見る日本貨幣史10『献上される鷹の値段とは?』

いやあ、第19回『信長を暗殺せよ』面白かった!

織田信長が三好長慶に摂津と尾張の交換を求めたという天野忠幸先生の説を大河ドラマで描いたのは初だったのではないでしょうか。16世紀後半、内戦が長引きすぎことにより権力者が誰ひとり機能しなくなっていた室町幕府や、有能な三好政権の姿も具に描いており、最新学説をなるべく取り込もうという姿勢が見えておりますね。これまで梟雄としてしか描かれて来なかった松永久秀

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大河ドラマから見る日本貨幣史9 『領地替え(転封)はなぜ難しいのか』

貨幣史とはまた異なりますが

第16回『大きな国』にて光秀は、斎藤義龍からさらに石高を増やす領地替えを提案されます。石高を増やす、すなわち年収のアップですが、十兵衛は先祖伝来の土地を手放すという事実と、義龍への不信からこの提案を断りました。

ドラマ的にはこの後の光秀の決意につながっていく重要なシーンでしたが、あなた自身の立場を光秀として考えた時「ん?」と思いませんか?上司から「転勤して。年収アッ

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