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喝采と花 「それでも舞台に立つ」から「すべての人の心に花を」

「それでも舞台に立つ」という歌と「すべての人の心に花を」と伝える歌を美しさとアクの強さの両方を感じさせる夫婦がそれぞれに踊った。
 
『泣き虫三姉弟』でお馴染みの劇団だ。
『ザ・ノンフィクション』がそのようなタイトルを付けて長年密着し放送をした。
「大衆演劇の楽屋で生きる子供たちの笑い泣きの舞台の日々」
といういかにもあの番組な「らしい」「泣ける」旅芝居・大衆演劇像が、
何年にもわたり日曜昼のお茶の間に流されたこと自体がいいか悪いか好き嫌いかはさておいて。
 
三姉弟(プラスもう一人)はもう子供じゃなく大人だ。

フレッシュで頼もしい若者たちとして舞台に立っている。
 
元・泣き虫三姉弟、プラス、さわやか王子、と仲間たち。
 
母である総座長、父である座長の下で、長女は若座長となった。
長女の幼馴染(副座長の息子)も、共に、若座長となった。
〝さわやか王子〟などと呼ばれ、長女と共に人気を集めている。
三姉弟のうち次女と弟も、もう子役ではない。

今の旅芝居の観客が求め、喜ぶ、
「いい年頃」の役者たちが揃った「長谷川劇団」は
近年全国でも有名どころの劇場で活動をしている。
 
今月の大阪公演に足を運んだ。
我が「若いイケメンには目がない(かつ、厳しくうるさい)」
友人が初めての「さわやか王子」を楽しみにしてのことだ。
結論から言うと「写真より実物の方がいい!」という絶賛&太鼓判。すごい。
 
わたしは、「三姉弟」の母である総座長と父である座長に目がいった。

唸った。
 
『喝采』

『花 すべての人の心に花を』

すごい。なんだ。この「滲み出る感じ」。
 
いいとか悪いとかじゃなくて。好きとか嫌いとかじゃなくて。
滲んでない? 滲んでるよね?
 
ああ、旅芝居だ、大衆演劇だ、旅役者だ。
 
いつものように幕が開くねん。
 
2023年という年は、すごい年だった。
舞台と社会常識や社会問題、伝統芸能と「変わらなくてはいけないこと」。
振り返ればあちらこちらのそういった問題にライトが当てられた。
常識や倫理感どころの話ではない。人の尊厳、人の生命にかかわる話だ。
今更、でもやっと。
 
そんな時代のこれから、旅芝居は、旅芝居界は、どうなってゆく?
 
「距離の近い」「距離感の近さが」「距離感の近さで」
何よりの魅力であり武器でもあろう世界、食べていく舞台。
「お金」というもの・こと・とは。
プロとは。プロの仕事とは。ファンとは。距離感とは。「仕事」とは。
ファンタジーじゃない。夢の国じゃない。
御伽噺ではないし、漫画でもない、学校のお勉強や授業でもない。
だから苦しいことたち、でも見逃してはならないことたち。
生きて行くこととは。そのために、だから、「変わらなくてはいけない」ことたちや皆で考えてゆかねばならないこととは。
非常に難しく単純で、単純だが非常に難しく、個人やちいさな集団ではどうにもできないことも少なくはない。
皆が、考えるべき人が、客席の皆もが、考えていかねばならないたくさんのこと。

「旅芝居はなくならない」「なくなりはしないと思う。でも……」

これは亡くなった興行主のおっしゃっていた忘れられない言葉だ。
 
シャネルの香水をぷんぷんさせながら客席から登場した座長が、
ラストショー前に踊ったのが、『花』だった。
全然歌詞通りとかじゃないし、ちゃんととかじゃない舞踊だった。
けれど、だから、滲みや匂いからいろんなことが次々に頭に浮かんでは消えた。

旅芝居が旅芝居として続くために、残る残すために、ためには?

笑えることも笑えないことも、
いろんないろんなことが、浮かんでは消え、また浮かんだり、忙しかった。
 
泣きながら笑ってしまった。


 (長谷川劇団・愛京花総座長&長谷川武弥座長 2023・12.15 昼の部・庄内天満座)



これは昨年夏の。いい芝居です。思うところは多々多々多々、ですが。
こういう風に形が残ったりするのですね。
という話を、も、「原作者」やそれに憧れ続ける人ともしたりもしてきたりしていったり。そんなこともあって印象深い劇団です。

熱の入った『お吉物語』も観たし、
他にもいろんな芝居を観てきた。
けど、わたし、この劇団では、『平公の恋』が、嫌いじゃない。
正式には、ってか、最初のタイトルは、『磯の鮑の片思い』か。
とても古くから継がれてきている古典な九州のなんてことない芝居やし、
大元ってか原本的には好きではない好きにはなれないというか
「ん?」が多い芝居ではあるのですが、けれど、でも印象深い1本です。

この芝居の、あのシーンで、あのBGMを使うの選んでるのって、
たぶん、きっと、この劇団だけだと思うのです。「あ」「あ、ふふふ」
その曲の中でああいう声とセリフ回しで語るのが、「お」「ふふふ」「いいな」なんです。


すぐ喝采をネタにする。のは、思い出も理由もたくさんあるんだけどね。
noteに(に、やで)書いたのはこの2つかな。

◆◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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12月Vol.34からは不定期コラムコーナー「DAYS」も書かせていただいています。

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担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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