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旅芝居・歌は世につれと血とsoul的なものの話

旅芝居の舞踊ショーにおいて、
イケイケなPOPSや色気歌での舞踊はとても興味深い。
ここ最近話題にしていた通りです。
でも、個人的にテンションが上がるのは真逆の歌。
泥臭い演歌、昭和歌謡、民謡や音頭。
でもね、私の好き嫌いとかはどうでもよい。
そんなことを言いたいのではないのです。
 
例えば
だみ声(村田センセイ)、
もしくは、朗々とした声(三橋センセイ、三波センセイ)、
または、
何丸とか何千代とか芸者歌手とかの音頭や俗曲が嬉しくなるのは、
まだ細々となりとも踊られているのは
頭じゃなく血が喜び、血が呼んでいるような気もするのです。
 
にほんじんの血が湧きたつ、もしくは落ち着くメロディーとリズムと声。
 
しかも「ちゃんと「止め・キメ」の流れが出来た「踊れる」」歌になっている。
音頭や節はそもそも踊るための歌だったりするし、
各地の仕事歌(民謡)、
つまり体を動かしながらの歌な訳だから、舞踊にもなりやすい。
踊りやすい。
その流れで出来た演歌たちは、
古くからのルールに乗っ取った「決まった起承転結メロディー」だから踊りの形は作りやすい(はず)

キメ、きっぱり、裾を持って「ぱっ」。

まさに風雪流れ説得力。

って意味不明ですが言いたかっただけ(笑)
 
ちょっと前に読んだ大好きなブレイディみかこさんのエッセイに
「北島三郎はジャパニーズ・シナトラ」っていうのがあって笑いました。
でもまさに、そのようなソウル的な音楽を芝居小屋で聴き・観るということ、これもまた旅芝居・大衆演劇の魅力であり、面白さじゃないかな。

歌って、リズムとメロディーと言葉を、声で、表現する物語であり装置である。
舞踊ショーは芝居小屋で歌を使って舞台で体で表現をすることであり、
役者の体による表現を客席の我々が体で聴いて観て受け取るという楽しい時間です。

今時の流れてゆくメロディーでその場のノリや隠しメッセージや色気を届けるのも旅芝居特有の型というか文化(?)というか興味深きもの。

でも、血やソウル的なものが湧きたつこのような歌たちによる舞台は、
賢そうに言うと「日常における祝祭」的な面もきっと大きく、
旅芝居の舞踊の意味や面白さがあるように感じています。

旅芝居は時代と共に生きる芸能であり、
決して、芸術鑑賞会ではなく「みんなの舞台」、多種多様で、面白い。 

今時の歌やちょっと色っぽい歌にのせての、
ちょっとチャラく、ちょっと色気な歌での舞踊は、
ときめいたり、ちょっとドキドキだったりの面白さで、
今、若いお客さんから若くないお客さんにも求められている
役者側にとっては「俺の魅力」「今、目の前にいる俺の魅力」をアピールする場と時間、まさに「生」。「情」という♥マークが互いに沸き立つ。

私は冷めたり爆笑したり怒ったり真顔になって眺めていたりしてるけど。

花束のかわりにメロディーを届けたり、
愛をこめて花束を大袈裟だけど受け取ってとアピールしたり、
本気で忘れるくらいなら泣けるほど愛したりしないとか
大地を強く踏みしめてそれぞれの花を心に咲かそうとか
この川を今渡るとか、うん、うん、ドラマチックの体現、芝居ですよね。
 
逆に、古い歌は古いねん。
演歌のほとんどは、いい意味でも悪い意味でも「にほんのこころ」「にほんてき」。
だからこそ、正直理解や共感できないことや人も多い。
女性はほとんど悲しくて泣いているし。
夫に添い遂げる妻が素晴らしい(から・のに)らしいし。
こごえそうな鴎見つめ泣きたくないし、着てはもらえぬセーターは編んだって仕方がない。
 
旅芝居のショーで敢えて使われがちな「色気特化演歌」みたいのは、
歌詞だけみると「ぎぇー」みたいなものがほとんどで
なんかもうこってり濃厚すぎるけれど、これはこれで、面白い。
たぶんコテコテ演歌の「男歌」だったり任侠歌謡の路線が
時代と共にムード歌謡を経て、
演歌と歌謡曲の中間みたいな「骨太」から
「やさしい色気」(?)を持つ男像になり、
でも「さびしさ」と「不器用」アピール、
これ、旅芝居に、まあ、ぴったりです。

半田浩二の『無頼に生きて』。
小金沢昇司の『不器用者だと言われても』。
羅勲児の『ムシロ』。
何年前の歌やねん。何みんな「キャー」言うてるねん(笑) 
『酒の川』はいつまで流れているんだと思うけれどいつまでも流れているんだろうこれからも。
舞踊ショーでは永遠永久に『男酔い』し続けられるのだろう。

演歌でもPOPSでもない「ちょい悪オヤジムード歌」みたいなやつとその舞踊はもうまとめてCDとDVDにして売ればいい。

「ちょい悪小悪魔song」とかもCDになっているくらいなんだし。
(これも女形で使いますよねえー)

他に使われがちなものを考えると、
「四季を織り込みました系」や「古典お芝居系歌」?
でも何の罪もないからと言って「どやっ」すぎる顔で踊られると
これも濃厚で、何の風情もない。でもこれも体現。「芝居」そのもの。

でも、だけど、「血」な歌たちも、残ったらいいな、踊られ続けてゆけばいいな。
 
古臭い演歌はきっと、世代交代が進むにつれ、使われることも減ってゆくのでしょう。
歳と共に知らなくもなってゆくし。意味とかもわからなくなるし。
減りはしなくとも、
幾つかの「今の大衆演劇らしい」幾つかだけが残ってゆくことは目に見えているし、もうそうなっている。
この世界でだけ使われるテッパンな曲が固定されて行く。
近年ショーを観ていてかなりの固定化を感じることが増えました。
むしろ意識して「固定」しているショーや日があってびっくりすらする。
今までもそうだったけれど、これからはもっとそうなるんじゃないかなあ。

いろんな歌が消えていっちゃうことは、
血が喜ぶ歌を聴いて観る機会が減っちゃうことは、
なんだかやっぱりさみしい気もしています。
それも、しょうがないのかもしれないけれど。

なんか、各地のお祭りや商店街や銭湯が減っていってる、消えてゆく、のを見ているみたい。

以前、とある若くはない役者が言っているのを聞きました。
日々天童よしみと山川豊を着流し一枚でローテーション。
「俺の出番になると、「ほっとする」って言ってくれるお客さん、結構おるねん」
また若いお客さんが言っているのも聞きました。
「大衆演劇を観て民謡とかに詳しくなりました。『俵積み唄』がめちゃ好きなんです」
若い座長も言っていた。
「ほんまは古い歌とか演歌の方が好き。踊りたい。でもお客さんが嫌って言うねん」
彼は『肥後の駒下駄』(水前寺清子)を「初出し」した時に
芝居終わりの舞踊ショー前の前売り券販売時間に私のところに来て
こっそりと「なあ、この後踊ろうと思ってるねんけど、格好と鬘って……」と訊いてきた(笑)
あ、イケイケ舞踊ばかりしていた若い役者が
「若手大会では『田原坂』やるねん。今稽古してるねん」と嬉しそうに話していたのも忘れられない。

いろいろむつかしいなあ。生きていかなあかんもんなあ。

でも、生きていかなあかんから、生きていくから、いろいろあるのが、ええねんよなあ。



ここのところ、エモい歌舞踊とチャラ舞踊ネタが多かったので、ふと。

過去の仕事でございますが、これのパンフにもエッセイ2つ寄稿しています。ってことを今思い出した(笑)


先日の。
これは四季織り込み系のエモいバラード舞踊。

ふるいものとあたらしいものの話、芝居篇は意外なこの映画を観て考えた。


ってな、他では読めない旅芝居・大衆演劇の「読み物」を書いていたら
ここ数年始めたnoteだけでも100記事を超えていました。
(過去Blogと併せたらどれだけになるんやろ(笑))
このマガジンにまとめていますので、よろしければ色々どうぞ。




以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。

大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。

と、あたらしい連載「Home」。
皆の大事な場所についての話。

2023、復活。先日、新作が出ました🆕

以下は、過去のものから、お気に入りを2つ。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
あ、小道具の文とかも(笑)やってました。

担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中
(貴重映像ばかりです。私は今回のアップにはかかわってないけど)


あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。

皆、無理せず、どうぞどうぞ、元気でね。

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