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ヘルタースケルター(著:岡崎京子)【今夜のマンガ感想は、血に飢えてるんだぞ。(はぁと)】

女の子の業をするどく描く、シャープで、キッチュで、
そしてパンチドランクな物語。

なんていうべきか。
良い!
面白い!
これを読んだらドランカーになる。
グッデングッデンになっちゃうぞ。

主人公のリリコは完璧なファッションモデルなのだが、
しかしてその実態は、超絶に性格が悪く、マネージャーに酷い嫌がらせをしている。
マネージャーはリリコの大ファンなので、それでも嫌がらないのだが、
もうこの時点で読者の印象は最悪である。

しかしJK時代のリリコは、デブ専しか振り返らないような超巨漢ブス!
しかし「骨格が良いのよ」という理由で、社長に見いだされ、
全身肉体改造のあげく、デビュー。
しかしその代償は非常に大きく、常に薬を飲み続け、常に激しい副作用に苦しまされ続けることになる。
性格の悪さは激しい副作用を紛らわすためでもある。

作中では様々な女子が、狂おしいくらいにキレイになることに憧れる。
どんな代償を払ってでも。

女は誰もがリリコになりたがる。

だがしかし、それと正反対の女もいる。
生まれつき美しくかわいく、代償も払わずに美しく、
しかも美にそれほどの価値を見出さない持てるものたち。

当然ながらリリコとは反りが合わない。合うはずがない。

多くの女性は、高みに手を伸ばしても届かないし、
本気で手を伸ばしても手が折れるし、
しかも、リリコのように、雲の上に行けたものであってさえも、
その魂を犠牲に捧げなくてはならないのに、
この世界はあまりにも理不尽に出来すぎている。

刑事が現れ、違法な施術を行っている形成外科を捜査している。
こいつもイケメンだけど、外見の美しさではなく、
「タイガーリリィ」は誰よりもタフだ、とか。本質を評価してくる。

どいつもこいつも、見た目だけで中身が薄汚い奴らばかり。
そう思っていたら、でもそいつらには、まだ我慢できるってもんさ。
自分だって同じなんだからね。

いやむしろ自分の勝ちだと見下すことさえできる。
自分ほど自分の魂に高値を付けた女はいなかった。

ところが、ここまできてだよ!
きれいごとを本気で信じているような奴が出てきやがる!

遅せえんだよ!
もっと人生の初期に出て来いよ!
ざっけんな!バカ!お前らなんかに負けてたまるかよ!

生まれつき持っていて、何の代償も払わない奴らなんかに負けてたまるかよぉ!

そんなことはセリフにもおくびにも出ない。
でも読者の中で自然と内在化される言葉だ。
読んでいるだけで、そういう言葉が勝手に読者の中で生まれてくるのだから、これは説得力がパナいよ。(死語?)

マネージャーは、リリコを追っかけて同じように美容整形する。
妹も、姉に劣らず巨漢ブスだったけど、次に会ったときは、顔立ちはともかく体系は完璧なモデル体型に変化していた。

女子の業なのだ。
男だったら栄光とか勝利とか。
戦うのだ。何者にもなれぬくらいなら美しくなって死ぬのがふさわしい。

リリコは、女性の頂点にいるのではない。
常に激しい劣等感に苛まされ、誰よりも過酷な努力を自分に強いる。
だからこそ彼女は、
美の女神ではなく、美の伝説になるのだ。

いずれにせよ、
テーマリングとストーリーラインが、完璧に一致している。
この筋で、この演出とこの描写は完璧に調和。
ハーモニウム!
これはパンチ力がありすぎる作品なので、映画化もされましたが、観てはいません。

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