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「僕と先生の話」あらすじ

「僕と先生の話」(全43話)

 過酷な工場勤務で疲弊していた主人公(稔)は、先輩社員(善治)の紹介により、とある絵本作家の自宅でハウスキーパーとして働くことになる。
 善治の実姉である その作家(先生)は、見聞が広く、絵本のみならず様々な書籍を精力的に執筆する多忙な日々を送っていた。また、先生は精神疾患に対する理解度が非常に高く、うつ病である稔を極めて良心的な待遇で雇用し、通院との両立にも協力的だった。
 ある日、稔は、アトリエ内に篭っていた先生が、過去に勤務先で受けた非人道的な処遇に対する憤りについて、独りで繰り返し叫んでいるのを耳にする。
 先生の自宅に出入りする編集者(岩下)に詳細を尋ねると「ご病気」との回答があったが、彼は多くを語らなかった。製薬会社での勤務経験がある稔は、先生は過去の辛い記憶と共に苦痛や恐怖が蘇る症状【フラッシュバック】に苦しんでいるのではないかと推測。
 後日、先生はアトリエで突如 激昂し、稔に椅子を投げつける。無事に逃げ帰った稔は、岩下にそれを報告。休職を言い渡される。
 休職明け、先生との穏やかな日々が戻る。先生は、稔に椅子を投げつけたことを全く憶えていなかった。
 復職後の ある日、稔は創作に行き詰まっていた先生と共にある町工場を訪れ、先生がその会社の株主であることを知る。

 稔は、岩下から改めて先生の【フラッシュバック】に伴う激昂と対処法について説明を受けたが、そのようなことは起こらない穏やかな日々が続く。そんな中、善治のかつての同僚(松尾)が、先生の自宅で静養することになる。
 先生は、松尾の通院に全面的に協力していたが、ある朝、稔は、松尾が激昂した先生によって殴られ、家から逃走したことを告げられる。先生は【フラッシュバック】に伴う幻聴の影響で取り乱して松尾を攻撃したことを、ひどく悔やんでいた。
 後日、逃走した松尾の行方と、彼が事故で重傷を負ったことが判明する。先生は、そのことで自分を責める。また、松尾の勤務先に対する怒りが頂点に達する。例の会社に「火を点ける」と騒ぎ、それを阻止したい稔と玄関先で競り合いになるが、その記憶は、すぐに消えてしまう。
 稔は、一連の騒動を岩下に報告。そこで、岩下の壮絶な過去と、先生がデビューに至るまでの経緯を聴かされる。先生の「過去との決別」を第一に考える彼に、稔は賛同する。
 その後、先生の【心的外傷】となっている凄惨な出来事と、そこから立ち直る力をくれた工場長のことを聴いた稔は、ある「物語」を書いた。稔が書いた「物語」を読んだ先生は、深く感銘し、ファンアートを描く。そして、稔の創作活動を応援することを約束する。

 事故を機に退職していた松尾は、先生の紹介により、例の町工場に就職する。また、事故で身体が不自由となった彼が、何かと先生や稔を頼るようになったこともあり、先生は彼に「同居」を提案する。しかし、先生の激昂のことを忘れたわけではない彼は、稔に相談してくる。稔は、迷った挙句、松尾を岩下と引合わせる。そこで、松尾の口から、驚くべき証言と、先生の病態に関する「推測」が語られる。全ての真相を知っているはずの岩下は、頑なに黙秘する。(ただ、松尾の認識について否定は しなかった。)
 稔は「先生がいかなる疾患であろうとも、自分のすべき事と、先生への感謝と敬意は変わらない」という認識を新たにする。

 先生が松尾を【家族】として迎え入れ、新しい生活が始まる。天涯孤独の稔は、彼らと過ごす時間の中に「ささやかな幸せ」を見出す。
 そして、一度は諦めてしまった創作活動を再開し「今後も、物語を書き続ける」と、心に誓う。


〜第一話は こちら〜


〜全話収録のマガジンは こちら〜



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